第235話 えへへ、何かの時のためにね。

「千歳よ、では先に次に進もう」

「はい」


「千歳様?」

「ジョマの力を剥奪しろって言ってきた連中との交渉だよ。

ジョマと東さんも来てよ」


そう言って私達は地球の神様の家を出る。

「あ、その前に一瞬だけ東さんの家に寄らせて!」

「え?ウチに?なんでだい?」


「トキタマ君に挨拶させて欲しいの」

「ああ、それならここに呼ぶよ。トキタマ、来なさい」


すると一羽の小鳥が飛んでくる。

「はーい、なんですかー?」


この子が王様の記録で見たアーティファクト「時のタマゴ」、今は解脱を果たしてトキタマと言う鳥になっている。


「トキタマに会いたいと言う娘が居てね」

「はじめまして。私千歳って言います」


「はい、はじめまして!

でも不思議な女の子ですね。

ガーデンの命じゃないのにアーティファクトを持ってますねー。

それに神様の気配もするしなんでここに居るんですか?」


「すごい、私の事とかちゃんとわかるんだ!」

「はい!」


私は神如き力でトキタマ君に話しかけてみる。

「聞こえますか?」

「はい!よく聞こえますよー!」


「千歳?」

「何をするつもりなの?」


「えへへ、何かの時のためにね。

ありがとうトキタマくん!またね!!」

「どういたしまして!」


そう言ってトキタマ君は飛んで行った。


そして少し歩くと広場のような所に出た。

そこには3人の男神が居た。


「地球の神様、ようやくこの女神から創造の力を剥奪してくださる気になったのですか?ありがとうございます!」


そう喋った小太りの神は酒臭い。

それに無駄に声がデカい。


変な言い方だが電車に乗られていたら一日中気分悪いし、学校とかで「昨日電車に変なオヤジがいてマジ最悪」と話題になるような神だった。



「おや、呼んだのは戦神と酒神のはずだが、何故か1人多いいね」

「ハイ!オレは人脈神デス!!マジでフレンドのピンチって聞いたんでヘルプしに来ました!」



「何アイツ?」

「人脈の神よ千歳様。友愛や友情の神は居ますが彼はそう言う存在ではなくただ知り合いの多さが自慢の神様です。

今回もどちらかの神に友達ヅラして付いてきたのよ」


「うわ、邪魔」

そう言って見ていると人脈神は馴れ馴れしく地球の神様に同席をお願いしている。


「うん、まあいい。ではこの7人で話をしよう」

地球の神様は話をしはじめた。

長テーブルに東さん、私、ジョマで座ってお誕生日席に地球の神様。

そして私達の向かいに酒臭い神、邪魔な人脈神、戦神が座る。


「君たちが創造神だと思っているパラダイスの神…いや、今はジョマと呼ばれている彼女の力を私は剥奪しない」

座っていきなり地球の神様がそう宣言をしてくれる。


「何故ですか!?」

「この女神が滅ぼした世界は100もあるんですよ!」


酒神と戦神が地球の神に詰め寄る。


「ふぅ、そもそも私は力の剥奪には否定的だ。神々の小規模な衝突も昔から不問にしてきたではないか?」

「ですがそれでは壊された私の世界はどうなりますか!?」


…勝手な言い草だ。

確かに世界が壊された事は可哀想だがそれでは遊び半分で壊された東さんの世界はどうなる?

東さんの世界が壊された時にこの神々は止めたのか?助けたのか?

私は聞いていてイライラしてくる。


「千歳様、髪の色」

ジョマが注意をしてくれる。


「ありがとう。人に戻れそうもなくなった時だけ何とかしてくれないかな?あ、でもブレーカーはやめてね」

「はい。了解しました」

そう言って微笑むジョマの顔は道子そのものだ。


「ねぇジョマ?あの2人には何をしたの?」

「あの2人にはですね」


話していた事が面白くなかったのだろう。


「貴様の話をしているのだぞ!」

「そもそもその小娘はなんだ!人の気配と神の気配が入り混じった半神半人が!」

戦神が私達を指さして怒鳴ってくる。


「彼女は千歳。

私の世界の子供で、このガーデンの神と縁の深い少女だ。

彼女はお前たちが見抜けなかったジョマの本質に触れ彼女が何の神かを見抜けた。

そして彼女と対決をして見事に討ち果たした」


「何!?こんな小娘がこの女神を討ち負かしただと?」

「まさか、それともこの女神がだらしなくなったからか?」


小娘?

だらしない?



あ、キレたい。

「千歳!髪色、真っ赤で放電しているよ!」

「東さん、大丈夫。王様の煽りに比べたら屁でもないから。

でもジョマを侮辱するのは許せないの」


この時の私は気付かなかったがニコニコと笑いながらキレていたらしい。



「続けるぞ。

そもそも剥奪に否定的な私は千歳と話し合い、千歳の希望に沿う事を約束した」


そして地球の神様はジョマを東さん預りにして後見人に地球の神様が就く事で事態を収束させる事。

ジョマが正しく成長するまでガーデン以外の世界に手出しをさせない事を伝えてくれた。


「今後、この男神と女神、この2人の作った世界、そしてこの千歳への発言や行動は全て私にしているモノと思うように」

地球の神様はピシャリと宣言をしてくれた。

これには酒神も戦神も一瞬狼狽えた。


基本的にはこの発言で手出しはできないだろう。

後で東さんに聞いたら地球の神様は古参の神様でみんなのまとめ役でもあるので敵対は望ましくないと普通の神は思うらしい。


「納得できませぬ!!」

だがこの2人の神は違かった。

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