第219話 普段から俺をバカバカ言うくせに肝心な所は抜けている。
「私が撃ちます。ツネノリ様も併せてください!【アーティファクト】…【アーティファクト】」
メリシアが走りながらアーティファクト砲の構えに入る。
そして作り出したアーティファクト砲の大きさに俺は驚く。
「その威力…」
そうか、ギガントダイルを焼き尽くしたのはこの力なのか。
「肩の擬似アーティファクトに貯め込んだ雷も上乗せしています!
ツネノリ様も!!」
「わかった!【アーティファクト】!」
2人で構えて同時にクロウに向けて発射をする。
メリシアと合わせたアーティファクト砲はクロウに当たると表皮を焦がしていくがその瞬間に再生されてしまう。
「くそっ、今のでプレイヤー何人分だ?」
「もしかしたらアーティファクト・キャンセラーが先に力を出しているかも知れませんよ」
倒せるのか?
俺たちに気付いたクロウが殴りつけてくる。
こちらの利点は小さい事だけで捕まればその瞬間に終わる。
「メリシア!今の攻撃は後何回射てる?」
「後4回です」
「頼む、俺はアーティファクトの剣で攻撃をする!【アーティファクト】!」
8本の剣を出して全身をくまなく切り裂いていく。
だがどこもかしこも斬った先から再生される。
細かく動いているのでこのままではコチラが先に参ってしまう。
どうするか…。
千歳は何か状況をひっくり返す方法を模索しているのだろう。
情けない話だが、千歳に頼るしかない部分もある。
その後も暫く切り刻んでみたがやはり回復速度が圧倒的で効果があるのかわからない。
前回千歳が行ったみたいに刺したままで回復を阻害するのも試してみたがあまり効果は無く、それどころか取り込まれた剣が取り出せなくなっていちいち解除をしたり煩わしい事になった。
「ツネノリ様!」
「くそっ、回復速度より先に攻撃をぶつける方法を考えないとダメだな」
「風と炎はどうでしょうか?」
「なに?」
「風で炎を広げてクロウを包み込むんです。
足止めは私がやります」
「試すか!」
「はい!」
メリシアが足に巨大なアーティファクト砲をぶつけてよろめいた所に俺が風を十個、火を十個出して巨大な火炎竜巻を作り出す。
効果自体は悪くないが足止めにはならずにクロウは炎の壁を容易に突破してくる。
突破してきたクロウの表皮は焼け焦げていたがあっという間に回復してしまう。
「これもあんまりか…」
悩んでいるとクロウを光の檻が包み込む。
千歳か!?
千歳がどうなるかわからないから戻れと言っている。
まさか爆発をさせるつもりか?
「メリシア!」
「はい!」
盾を張りながら千歳の元に戻る。
その途中でクロウの憎々しい声が聞こえてくる。
「女ぁぁ!またお前か!!閃光!!」
クロウは千歳に向かって閃光を放つ。
だがそれは光の檻に阻まれる。
このまま防げるか?
しばらく一進一退の状況が続く。
「残念だったなぁ女ぁぁ!」
クロウがニヤリと笑ってそう言った。
「マズい!メリシアは先に逃げろ。
俺は千歳を回収してから逃げる!」
盾を張って高速移動で千歳の元に駆け寄る。
「間に合わない!来ないで!」
千歳は両手を前に出して今もクロウの攻撃を光の檻で防いでいる。
「そうは行くか!お前は俺の妹だ!俺が守ってみせる」
「ダメ!この檻はもう保たない!自分でも限界なのがわかるから。
ツネノリありがとう!
ごめんね」
少し困った顔で笑う千歳。
!!?
死なせるか。
死なせない。
なんとかするしかない。
千歳の真似をする。
アーティファクトの剣を全てアーティファクトの盾に作り替える。
見た目も効果も千歳に比べれば弱々しいのがよくわかる。
情けない。
だが今出したこの盾と身体で千歳を守る。
俺は立ち止まる事なく千歳の前に立つ。
「バカ!何でくるのよ!もう光の檻は限界なんだって!」
「俺が死んでもお前が生きればそれでいい」
「メリシアさんが居るのになにを言うの!」
「バカだな千歳は。普段から俺をバカバカ言うくせに肝心な所は抜けている」
「え?」
「ツネノリ様!!私も!!」
後ろからメリシアが来て俺の横で光の盾を張る。
「メリシアならきっと来ると思っていた。
済まないな」
メリシアは一瞬間をおいて嬉しそうな息遣いをする。多分微笑んだのだ。
「もう、わかっていたの?
それなら十分です。
その代わり最後まで抱きしめて。
離れ離れは嫌です」
「ああ、ずっと一緒に居よう」
そう言って俺は左腕でメリシアの腰を抱く。
「ダメだよ!2人は逃げてよ!!」
「もしかしたら防げるかも知れない」
「そうですよ千歳様」
「嫌だよ!逃げてよ!
何とかしなきゃ。
もっと強い何かをイメージしなきゃ…」
「千歳!無理をするな!髪が赤い!」
千歳は必死になって俺達を守る事を考えている。
だが有効打が見つからないのだろう。
「ここが私の限界なの?」
千歳は悔しげにそう漏らした。
だが次元球から声がする。
「人の身で限界なら、その先に行きなよ。
チトセは神の領域に足を踏み入れているんだからやれるだろ?
人の身を超えて人のままでやり切ってみせなよ。
それも無理なの?
無理なら今すぐ「無理です。出来ません」って言いなよ。
僕が何とかしてやるよ」
キヨロスさんが見兼ねたのか声を出してくる。
だがそれは応援というより煽っているように思う。
「……何ですって?」
「千歳?」
千歳の髪は今までに見た事ないくらいに赤く光り輝く。
「今日の王様は、さっきから事あるごとに言いたい放題!
イライラさせる!
見てなさいよバカ王様!!
やってやるわよ!
人間のままで限界の一つくらい飛び越えてやる!
ギャフンと言わせるんだから、これが出来たら参りましたって負けを認めなさいよ!!
神如き力!!!
1秒だけ時間を止める!!!
その間に光の檻の厚さを均一から前面を厚くに変更!
思い知れ山田!
【アーティファクト】!!!」
千歳が叫んだ途端、弱々しかった光の檻が力強く光った。
本当に前面だけ強化できた感じだ。
「どうだ!」
嬉しそうにそう言う千歳。
本当に何とかしてしまった。
凄い妹だ。
「ふーん、まあまあだね。
それで?向こうは疲れ知らずで光を放っているけどその先どうするの?
まさかこれだけで僕に威張ろうなんて思っていないよね?」
千歳の努力を労うでもなくキヨロスさんは更に千歳を煽る。
「ぐぎぎぎぎ……、こんなムカつく奴がこの世にいて良いの?
光の檻を鏡面化!乱反射させてやる!反射と同時に厚みは均一に戻す!
【アーティファクト】」
余程悔しいのだろう千歳は涙目になって力を使う。
するとさっきまで受け止めるだけだった光の檻の中を光が駆け巡ってクロウに当たる。
「ぐぁぁぁっ!!?」
自分の攻撃は相当効くのだらう。
クロウは早々に閃光を止める。
千歳はそのタイミングも見逃さない。
「爆発!【アーティファクト】」
光の檻は大爆発を起こした。
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