第207話 ダメだ、こんな所に千歳は呼べない!
俺達はどのくらい抱き合っただろうか?
暫くするとジョマが実況で「戦場でまさかの告白か!?このまま逃げ帰るなら見逃してやってもいいぞ!」と言っていた。
逃げ帰るか…
それが出来たら楽かも知れない。
だがそれは出来ないし、ジョマも本気では無いだろう。
「メリシア」
「はい。行きましょう!」
そう言って2人で走り出す。
ジョマはその動きに合わせてプレイヤー達を焚きつける。
プレイヤーの集団が俺達を分断して確固に撃破しようとしているのがわかる。
これは良くない流れだ。
少しでも前に進みつつ、メリシアとはバラバラにならないように心がける。
少しした頃にジョマの実況で被害が300人に届いて残り520人になったと言っていた。
その時に動きがあった。
方向としては俺たちの後ろからプレイヤーの群れがやってきた。
「おっと!あれは選考会にも来なかったプレイヤー達の中でマップの北側を探索していたプレイヤー達だ!
まさか乱入して特別枠と乱入者を倒そうと言うのか!!
その数は……200人だ!」
…マズい、これは振り出しに戻されるのか!?
これはジョマの仕込みなのかなんなのかわからなかったが精鋭達がどよめく。
多分ここに居る精鋭達はなにも知らされていないんだ。
もしかすると本当に乱入なのかも知れない。
ジョマが「精鋭達は特別枠を倒されたく無かったらあの200人も倒してくださいね!」と言っている。
だが誰も動かない。
それどころか我先にと精鋭達は俺とメリシアを狙い始めた。
くそ、完璧に振り出しか!
疲労がある以上、振り出しよりタチが悪い。
そう思った時「やーめた!!」と声が聞こえてきた。
俺が振り向くと、プールに居た男だった。
「寄ってたかって1人、2人を追い込んで格好悪い!俺はこっち側、保守派に付くぜ!」
そう言って、俺の前に来て「あんまり強くないから死ぬかも知れないが少し手伝わせろ」と言ってくれた。
「じゃあ僕も!」その佐藤の声に合わせて、トビーにイク、後はセンドウやトセトで助けたプレイヤーが集まってくれて20人になる。
「まさかの精鋭からの裏切りか!?」
ジョマが嬉しそうに実況をする。
…ここまで含めての優遇か…
「とりあえずアンタら2人は運営アイテムを目指す。
俺達は周りの奴らの足止めだ」
「ありがとう。助かる。
だが、なるべく一緒に進もう。
最後まで諦めないでくれ!」
そう言って俺達は走り出す。
突然の事で残りの精鋭達は一瞬動きが遅れる。
途中でメリシアが「ツネノリ様、最後尾が戦っていますよ」と言った。
「見えるのか?」
「はい。マリオンさんに鍛えてもらいましたから。
200人と精鋭が混ざり合って戦闘状況になっています」
「よし、今のうちだな!」
そうして俺達はアーティファクト・キャンセラーの前で守っている連中、多分200人と戦闘になる。
戦闘は激化して、俺とメリシア以外は苦戦をしている。
「なぁ、あの元気な嬢ちゃんはどうしたよ?」
「抜きで戦うのが俺とジョマの戦いだ」
「マジかよ」
「でもそれは一度目のダウンまでですよね?」
メリシアが入ってくる。
「じゃあ4度もダウンしたのになんで来ないんだよ?」
「俺がジョマに俺が死ぬまで呼ぶなと言ってある」
「なんでまた?」
「アイツは、千歳は人殺しなんて出来ない子だ。ここに来てもいい事はない」
「くぁ〜、そんなもんはお前さんが決める事じゃないだろ?」
「何?」
「さっきの告白にしても勝手に決めすぎていて彼女に引かれていただろ?」
「そうですよ!」
プール男とメリシアが息のあった会話で俺に色々言う。
「案外、出番待ちしてイライラしているかも知れないな」
「…」
あり得る。
さっきも神如き力で見ていたんだろう。
そうしている間に佐藤とプール男、トビーにイク以外はやられてしまっていた。
「千歳呼ぼうぜ!」
トビーが言い出す。
「いや、ジョマとの約束で」
「じゃあお兄さん抜きで呼びましょう!」
佐藤がとんでもない事を言い出す。
そのまま天を仰いで佐藤が叫ぶ。
「伊加利さん!ピンチです!来てください!!」
メリシアも一緒になって言う。
「千歳様!ツネノリ様とジョマ様の勝負は放って置いて来てください!」
プール男にトビーとイクも言う。
「おう、嬢ちゃん、来てくれや!」
「千歳!来てくれよ!」
「早く来てくれ!」
皆がめいめいに千歳の名を呼びながら戦う。
ダメだ、こんな所に千歳は呼べない!
「ダメだ!アイツには人殺しなんてさせない!!」
俺は両手にロングソードを持って前進する。
「バカヤロウ、突っ込むな!」
「ツネノリ様!1人ではダメです!」
「もう、アーティファクト・キャンセラーは見えているんだ!この距離くらい俺1人で突破してやる!千歳は呼ばない!!」
俺は力を振り絞って前進をする。ジョマはアーティファクト・キャンセラーの辺りに重騎士ばかりを配置していて時間がかかってしまう。
そこを突かれて5度目のダウンを許してしまう。
「ガッ…」
「ツネノリ様!」
離れた所でメリシアの声が聞こえる。
「兄ちゃん!」
「伊加利さん!5度目ですよ!!」
その声に合わせるようにアーティファクト・キャンセラーの前が光る。
「バカツネノリ!!」
そこには千歳が居た。
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