第203話 下がれ!お前を殺したくない!!

理想はある程度後ろに注意しながら前に進み続けてアーティファクト・キャンセラーを獲得する事だ。


少し歩いたが誰も襲いかかってこない。

多分、俺の戦力を計りかねているのだろう。

アーティファクトを使わない俺はどの程度の実力なのか…

それは俺にもわからない。


だが歩みを止める理由にはならない。


「オラァーッ。特別枠!!」

そう言いながら痺れを切らした大男が斬りつけてきた。


アーティファクトなら受け止めるがそれはしない。

盾の表面を滑らせて前に進む。


「遊びはなしだ」

そのまま心臓に剣を突き立てる。

光の剣より抵抗はあるが刃が通せる。


あっという間に男は絶命した。


やはり千歳は連れてこないで正解だ。

こんな物をあの優しい千歳が耐えられる筈がない。



…死体が消えない…?

15分で生き返るのか?


ジョマめ…、何を考えている?


大男の死を皮切りに一斉に50人くらいのプレイヤーが襲いかかってくる。


なるべく一撃で倒す。

ジョマが考えて外したのか、銃火器を装備したプレイヤーが居ないのがありがたい。


「たった1人だぞ!数で押し切れ!」

そんな声が聞こえてきた。


お前達はその1人にやられるんだよ!


俺は前進を諦めない。

50人くらいのプレイヤーを倒した前に動きのぎこちないプレイヤーが斬りかかってくる。


この動き、初心者枠か…

「お前達が居るからこんな嫌な事をやらされる!」

初心者枠のプレイヤーはそんな事を言いながら斬りつけてくる。


一定の動き。

端末機なのだろう。


「すまない」

そう言って倒す。


くそ、後味の悪い。


「最初の40人がやられたぞ!次行け!」


50人ではなく40か…

くそ、思ったより少ないのはショックだな。


「皆気を付けて!

多分そろそろ辛くなって殺す動きはやめてくる!動きが変わるから!」

見当違いの指示を出しているプレイヤーが居る。


俺はつい声の方を見る。

「佐藤!?」


そこに居たのは千歳の友達だ。


「皆、僕が斬りかかるから!」

そう言って佐藤が切りつけてくる。


「剣で防いで」

聞こえないような小さな声でそう言われた。


「貴方は!僕が倒します!」

そう言う佐藤だが鍔迫り合いから先は何もしてこない。


「少し休んで」

まただ小さな声でそう言う。


「佐藤!」

「負けません!」


後ろでジョマが仲良くしていたプレイヤーに狙われる気持ちはどうかと言っている。


「僕が指名されたのは伊加利さんの勝利による優遇だとジョマが言っていました。

怪しまれない所で蹴って、何も知らない人も居ますが僕の隊は極力殺さないで」


千歳の優遇?

これがか…


確かにジョマ好みの奴だ。

俺は数分休む。

息が整った所で俺は演技をする。


「下がれ!お前を殺したくない!!」

そう言いながら佐藤を蹴り飛ばす。


そのまま佐藤が連れていた40人との戦闘。

何も知らずに斬りつけてくるのも居るが、際どい奴だけを斬り殺して後は盾で殴る。

しばらくした頃に背後から「うわぁぁっ!!」と、わざと大声で斬りつけてくる奴がいる。

それはトビーだった。


「久しぶり、休みなよ」

「助かる」


暫く致命打にならないように斬り合ってまた息が整ってから蹴り飛ばす。


今度はイクも来た。

だがコレではアーティファクト・キャンセラーには辿り着けない。


佐藤も察したのだろう。

「もう少ししたら僕は一度下がります。また疲れた頃にきます」

そう言いながら斬りつける。


俺はそれをかわして盾で殴り飛ばす。


「すみません!僕の隊は一度息を整えて回復を行います!次の隊、よろしくお願いします」


ジョマが実況を折り込みながら次の隊を促す。

次の隊の40人は本気で殺しに来ていたので何とか皆殺しにする。


くそッ、キツい。

段々と剣を握る事が嫌になってくる。


その次の40人も仕込みのない連中なのでやっとの思いで殺す。


部隊長代わりのプレイヤーは先日プールで会った男だった。


「よぅ、剣を握るのが辛いならかわし続けろ」

また小声でそう言ってくれる。

俺はわかったと返す。


「特別枠!俺の剣をかわせるか!?かわしてみやがれ!!」

そう言いながら男が自在に剣を振ってくる。

しばらくすると「怪しまれる。鍔迫り合いだ。力は殆どいらない」と言って大振りをしてくる。


俺はそれを剣で受け止める。

最初こそ重かったが、力を入れて居なくても鍔迫り合いに見えるように男が上手いこと立ち回る。


「本当、無茶苦茶で嫌になる話だ。

俺の他にもトセトで助けてもらった奴やセンドウで助けてもらった奴が所々で休ませにくる。耐えろよ」


「助かる」


「そろそろ倒せ。殺すな。俺は佐藤のところに合流する」


その声に合わせて剣を振る。

この剣はフェイクだ。

振り抜き様に蹴りを放つ。


「ぐぅ…」

佐藤はそれを待って居たのだろう。


「僕の隊に入って!今回復します!」と男を誘う。



だがこのタイミングを狙って居た奴が居た。

俺は大振りされたこん棒に気付いて盾を張ったが吹き飛ばされた。

ジョマ流に言えば1回めのダウンと言う奴だ。

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