第178話 今日はこれからの事を考えよう。
俺は火と氷の剣を作って上空に飛ばす。
まだ会敵距離ではないのに突然剣が飛んできて切り刻み始めたのでプレイヤー達は混乱をした。
俺の身体には風のアーティファクトで暴風状態にして銃火器と矢の直撃を防いでおく。
万一があるかもしれないからだ。
剣から見える景色は壮絶で残り時間が少なかろうがこの人数で畳み掛ければなんとかされてしまう可能性があったしプレイヤーの目は血走っていてとても怖かった。
まだ救いなのはプレイヤー達が連携を取れていない事だ。
俺は手早く火の剣で切り刻み氷の剣で固まらせて動けなくする。
普通の戦いなら殺して数を減らせば良いのだが、この場合は15分で生き返るので殺すより凍らす方が有効だと思う。
それでも10分もすれば肉眼で俺が見える距離までプレイヤーの群れが迫っていた。
「あの爆弾女が居ねえ!」
「何処かで爆弾を仕込んでいるんじゃねぇか?」
そんな事を話しているプレイヤーが居た。
トセトで父さんが手早く倒していた意味を今更ながら痛感する。
下手に生き残って考える時間が生まれる事が問題なのだ。
「千歳!キリの良い所で残り時間を教えてくれ!特に残り15分になったらコイツらを皆殺しにする!」
つい先日まで一緒に悪魔を倒し、巨大ボスと戦ったプレイヤー達と戦うと言うのは嫌な感じだ。
それにこの目。
この目はポイントアップで見た狂気を感じる。
外の奴らからしたらこの戦いは遊びのはずなのだ。
なのになぜこんなにムキになって目の色を変えて向かって来れるのだろう?
「ツネノリ、残り30分だよ。残り15分で私も行くよ」
「ああ、だが千歳は自分の周りを気にしておくんだ、急に後ろから敵が出てくる事も考えられる」
俺は火の剣をしまって雷の剣に切り替える。
感電で痺れさせて凍らせて時間を稼ぐ。
「わぁ!出た!出たよツネノリ!ごめんこっちは私が受け持つから、そっちは頑張って!」
「千歳!!」
やはり伏兵が居たか。
そうなると今みたいに千歳と分断されるのは面白くない。
俺は高速移動を使って千歳の元に戻る。
「ツネノリ、なんで戻ってきたの?」
千歳は涙目で光の剣を飛ばしていた。
「千歳こそどうした?」
「コイツら目が怖いし気持ち悪いんだよ。
時間を見たらまだ25分あるしさ」
こうなったら作戦を変えるしかない。
このまま粘っても千歳が参ってしまう。
「予定変更だ。殺したら15分の間に距離を取るぞ!」
「ダメだよ!」
「千歳?」
「ジョマとの真剣勝負で逃げてばかりじゃダメだよ!」
くそ…、その板挟みで千歳が参っているのか。
「明日だ!」
「え?」
「明日挽回すれば良い。今日は逃げるんだ!」
「そんな!」
「大丈夫だ!ジョマなら盛り上げられる。変な話だがジョマを信じるんだ!」
俺はそう言ってアーティファクトの剣を4本出すと近くに居たプレイヤー達を皆殺しにして千歳を抱き抱えて高速移動で逃げ出す。
暫く走った。
6時を過ぎたのだろう。
ジョマのアナウンスが聞こえてきた。
「やりました!特別枠のプレイヤーが逃亡で午後6時を迎えました!!
例え強大な力を持っていたとしてもやはりこの人数には勝てないのか!?
明日はもっと厳しい戦いになるぞ!
明日はもう少し頑張ってくれ!!」
くそっ。
好き勝手言ってくれる。
せめて死のペナルティが一日の強制ログアウトなら何とかなるのに…
「…悔しい…」
「千歳…」
「私がもっとやれたら…」
千歳は悔しさで泣く。
「いや、それは違う。
よく考えろ千歳。
多分ジョマの思い通りになったんだ。
明日から本気を出せればいいんだ。
今日はこれからの事を考えよう」
「うん…」
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