第174話 その時は心ゆくまでガーデンを楽しんでくれ。
頭が冷えたのだろう千歳が戻ってきて、今度はオレンジジュースを頼んだ時に「よぅ!久し振り!」と声をかけられた。
俺達が見るとガタイの良い男が手をあげて笑っていた。
俺には覚えがない。
新手のナンパか?
千歳が「爆発少女」でもアリな貴重な男か?
「誰だっけ?ツネノリ知ってる?」
「いや」
おっと、子供達も知らないと言う。
「酷えなぁ」と言った男の腕には2人と同じ「光の腕輪」が付いていた。
「「その腕輪」…、初心者枠か!」
「そうそう!兄ちゃんと姉ちゃんは一緒にホルタウロスを倒しただろ?」
「あ!千歳が血を見たくなくて代わりに右腕を切りつけてくれた!」
「そう!思い出してくれたか!」
「ん?なんでここに居るんだ?今日はイベントだろ?」
俺は疑問に思って聞く。
「いやぁ、俺は出来たらファーストガーデンに行きたかったんだよ。
でもファーストガーデンにはVRが無いだろ?
だからセカンドのモニターに応募したんだ。
運営さんにこんな事を言うのは悪いんだが、やはりポイントアップまではまだ良かったんだがなぁ。それから先は辛くてな。
ついサボっちまったよ」
「いや、ありがたい。貴重な意見だ。
ありがとう。俺は社に戻ったらきちんと声にする。
君も出来たらアンケートに書いてくれ。
そしてここだけの話、このVRがうまくいけばファーストにも実装する予定だ。
その時は心ゆくまでガーデンを楽しんでくれ」
「本当かい?嬉しいなぁ。
それとは別でセカンドも楽しいな。
景色は綺麗だしご飯も美味しいし、スタッフの女の子も可愛くてつい一緒にご飯を食べてくれないかと頼んでしまったよ」
「それも楽しみ方のひとつさ。ただ性的な接触は禁止事項でしたくても出来なくなっているから恨まないでくれよな」
「ありがとう。約款に書いてあったから知っているよ。
かえってそれも良いのかもな。
お陰で健全な付き合いができる。
手は繋げるんだろ?
ダメならアンケートに書くから手ぐらいは許してくれよな?」
「難しい所だなぁ、でもそう言う声も大切だから伝えておくよ」
「ありがとう。なあ、あんたらは噂だとサードガーデンの為に無茶な戦いとかやらされているんだろ?」
「ああ。サードはセカンドのシステムを使って作るらしいから、セカンドに少しの変更を加えればいいって事でな」
「俺にはよくわからないな。このビルから見える景色の綺麗さに楽しませようと尽力してくれるスタッフ、そして食事…
それだけで十分じゃないのかね?」
「本当だ」
「おっと、邪魔して悪かったな。
じゃあな」
そう言って男は去っていく。
「良かったー」
「千歳?」
「プレイヤーのみんなが戦闘狂じゃなくてさ」
「それは俺も思った。父さんと東さんの目指した世界は間違いじゃないって事だよね」
「お前たち…」
「さあ!着替えたら夜ご飯にしようよ!」
「何?もうそんな時間か?」
時計を見るとまだ4時だ。
「お父さん、私は2人より髪の毛も長いし準備があるんですー」
「おっと、そう言うことか、じゃあ、併設されている風呂に入ったら5時半に入り口に集まるか」
「りょうかーい、所で水着はどうするの?」
「んー、全部ゼロガーデンに持って帰るかな」
そして俺達は風呂に入る。
「1時間半もあるから千歳でも時間余るかもね」とツネノリが言っていたがそれでも足りなかったらしく10分遅れでやってきた千歳は「2時間くれないから!」とプリプリしていた。
普段は千明がペース管理してくれているのだろうな…。
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