第144話 秘境、いや桃源郷かもな。
俺がツネノリと向かった瞬間移動先はマキアの牢獄の更に先、東とはVR実装後にランク20を超えたプレイヤーをランダムに選出して通知を出して招待する事にしている秘境、エテと言う村。
ここはVRが実装した後にくればVRプレイヤーなら嬉しくなるようなこの世の楽園を目指して作ってある。
村の中に春夏秋冬を詰め込んでいて、山の幸から海の幸から絶景からなんでも手に入る。
そして何より温泉だ。
勿論、タツキアの温泉も素晴らしいのだが、メリシアの事もあるし他のプレイヤー、特に初心者枠のVRプレイヤーが居ても疲れるので今日はエテにした。
「父さん?ここは?」
「秘境、いや桃源郷かもな、エテと言う隠し村だ。
今のところ一般プレイヤーで知っている奴は居ない」
「ここに何の用事があって来たの?」
「俺がとにかく疲れたんだ。
だから久し振りにツネノリと2人で温泉に入りたくなった!」
先にスタッフカウンターに立ち寄り「疲れたからここで一晩休ませてくれ」と言うとスタッフの女の子がカラカラと笑いながら「ごゆっくりしてくださいね。勇者様」と労をねぎらってくれた。
エテ唯一の宿屋はどの部屋もメリシアの実家で言う最上級並の部屋にしてあるし、価格帯もランク20以上のプレイヤーがたまのお忍びで来る場所なので結構するが構わない。
今日はツネノリと豪遊すると決めた。
宿自体が出来たのはVRの実装が決定してからなので、つい最近…ひと月前だがスタッフ達にはいつ来客が来てもいいように仕込みから清掃から手を抜かないように言ってある。
俺は知らないが恐らく、東、北海、千明は試泊していると思う。
スタッフカウンターから連絡があったのだろう。
豪華な門を潜ると玄関には女将や中居達がキチンと身だしなみを整えて待っていた。
「ようこそおいでくださいました勇者様」
「長旅お疲れ様です」
「従業員一同お待ちしておりました」
「泊まるのは俺と俺の息子だ。一泊頼む。俺は夜中から明け方の時間に経つが気にしないでくれ」
「ありがとうございます。御子息様でございましたか、仰るとおり勇者様の面影がございます。
夜中の御出立の件承りました」
そう言った女将がツネノリに深々と頭を下げて挨拶をする。
「よ…よろしくお願いします」
俺達は春をイメージした部屋に通された。
恐らく季節が冬なので春を味わって欲しいと言う心遣いかも知れないが俺の気分は冬だ。
まあ、掃除は行き渡って居るので不問にする事にする。
「と…父さん?いいの?」
ツネノリが恐る恐る聞いてくる。
「何がだ?」
「ここ高いんじゃないの?」
「セカンドで使わなければならない金があるからある種の仕事だ。
気にせず寛げ」
そう言って装備品を外してから2人で茶をすする。
「あ、風呂に入る前に着替えを貰うか?」
そう言って俺は端末を取り出してルルにメールを打つ。
文面は「次元球で通信をしてくれ」だ。
送って数秒で「なんだいきな…ぬぁっ!?なんだそこは?」と次元球からルルの声がする。
「おう、ルル。今日はツネノリとここで飯にする事にした。夜中に帰るから千歳の事をよろしく頼む。
それで早速風呂に入るからツネノリの下着と俺の下着をくれよ」
「私は何だと聞いておる!そんな見るからに高そうな店!ツネノリの教育に悪かろう!?」
ルルはツネノリの金銭感覚が狂うと俺に文句を言っている。
「母さん、父さん疲れちゃったんだって。今日は父さんのワガママを汲んであげようよ」
ツネノリがルルを説得してくれる。
「だがなぁ…、むぅ…」
「いいじゃんルルお母さん。今日は男チームと女チームで分かれて仲良くする日にしようよ!」
向こうでは千歳がルルを説得してくれている。
俺はそんな千歳に話しかける。
「千歳、どうだ?楽しいか?」
「うん!すごく楽しいよ」
千歳の本当に楽しそうな声が聞こえてくる。
「ツネノリ!」
「どうした千歳?」
「今日もバッチリ戦えた?」
「ああ、千歳の抜けた穴も何とかなったぞ」
「良かった!ルルお母さんってばなにかと言うとすぐに「ツネノリはどうしてるかな?」って心配していたんだよ」
「こらっ千歳!言うな!!」
次元球の向こうから慌てたルルの声と笑う千歳の声が聞こえてくる。
「母さん、ありがとう。俺は大丈夫だよ」
ツネノリの声でルルが嬉しそうな息遣いをする。
多分ニコニコとしているだろう。
「さて、ツネツギ。下着の件だが取りに来い。今ここにはキヨロスが居ないから通信だけでも疲れる。緊急以外ではこれ以上やりたくない」
あー…確かに。神殿じゃないから無理か。
「キヨロスなら「究極の腕輪」の効果範囲を世界中に出来そうだけどなぁ…」
「馬鹿者!これ以上奴を成長させてどうする?暴れた時に手がつけられんぞ?」
それは確かにそうだな…仕方ない。
ルルにはわかったと言って通信を止めて、ツネノリには少し待っていてくれと言って俺はルルの元に飛ぶ。
コピーハウスではルルと千歳が料理をしていてその姿は親子にしか見えなかった。
「おお、来たなツネツギ。下着も用意するが少し待て」
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