第137話 みんなお似合いカップルばかりでいいなー。
私が違和感に気づけた金色のお父さんの話。
なんと無くだが神如き力によってわかっている。
「千歳、髪が真っ赤に光り輝いているぞ…」
「うん…お父さんの事を知りたい気持ちが強いから力が出ているのかも。
お父さんがゼロガーデンを出られない理由は別にあるよね?
お父さんは知っているんだよね?」
「ああ、知っている。東から聞いているからな」
「何?何故言わない?私達は夫婦だろう?」
ルルお母さんがお父さんに詰め寄る。
「ルルとツネツギの話ではなく、ツネジロウとしての俺の問題だからな」
「何?」
ルルお母さんが不満気に反応をする。
「ルルお母さん、金色のお父さん.ツネジロウはお父さんと言うよりツネジロウなんだよ」
「千歳、それはどう言う事だ?」
「ルルお母さんがもしアーティファクトの力で2人になったとして、それはどちらもルルお母さんだけどルルお母さんはもう1人のルルお母さんの気持ちとか細かい部分まではわからないよね?」
「そうだ、千歳の言う通りだ。
俺はツネツギだがツネツギではない。
ツネツギがくれば情報や感情は全て更新される。
それはお互いにだ。
ルルやツネノリと過ごした時間はツネツギに、ツネツギが外で千明と過ごした時間、千歳から邪険にされた1年間は俺に反映された。
そうだな…千明と付き合う前、東の差し金でツネツギが土日に来られなくなった頃にツネツギはルルとツネノリの時間を奪われたと俺にまでヤキモチを妬いていた。
俺はこの1年千歳に会って関係の改善をしたいとずっと思っていた。
この状況と言えば通じるだろうか?」
「うむ…、それならわかる。
だからと言って何故言わない?」
「それは…」
「それはルルお母さんとツネノリを見ていたら言えなくなるよ。お父さんが帰ってきたり行ったりする時に無意識で悲しい顔をするからでしょ!」
「千歳…」
「前にツネノリが言っていたよ。
お父さんはそこら辺を気にして金色のお父さんが気にしないようにして欲しいって東さんに頼んだって」
「神様?」
「ああ、ツネツギからは頼まれたよ。
そして僕はツネジロウからも頼まれた。
2人の願いは
ツネツギからはツネジロウがルルやツネノリの微妙な表情の変化に傷付かないように
ツネジロウからはツネツギやルルとツネノリがツネジロウに対して無駄に気を遣わないように
とね。
そしてルルとツネノリには僕からは知らせないで欲しいとね」
「ツネツギはそんな事を頼んでいたのか…」
「ああ、俺はそんな事を頼んでいたんだな」
「そして金色のお父さんには秘密があるよね?お父さんもルルお母さんも勿論ツネノリも知らない秘密が…」
「ああ、俺と東しか…いや、ジョマは知っているのか?」
「ええ、私も神だもの。見ればわかるわ」
「そして私も神如き力でそれを感じたの」
「なんだその秘密とは?言ってくれツネジロウ!私はお前とも夫婦だと思っておるぞ?」
「ありがとうルル。お前が俺の中にツネツギを探していたのはこの20年ずっと気付いていた。
優しい眼差しも優しい言葉も愛も全てツネツギに向けられたものだ。
それでも俺は嬉しかったしお前達と暮らせて良かったと思っている。
ありがとう」
金色のお父さんはルルお母さんに二度ありがとうと言った。
それは本当に嬉しかったからだろう。
「ツネジロウ?」
「東…、いや、俺から言う」
金色のお父さんはルルお母さんをしっかり見て口を開く。
「俺は次元移動が出来ないんだ。
仮にしたとすれば良くて瀕死の重体。
悪くて死ぬ」
「死ぬ?」
「ルル、僕はツネジロウを作った時に、ツネジロウはあくまでツネツギのガーデンでの身体としての役割しか与えなかった」
「俺がツネツギ以上の自我を持って行動をしない為だ」
「だからこの身体はツネツギ無しでは次元移動に耐えられない。
ルル?
次元球の使用は疲れると言っていただろう?
それと同じと思って貰えればいい」
「金色のお父さんの身体は身体に対して魂が少ないよね?それかな?」
私はさっき見た時に感じた事を言う。
「ああ、ツネツギの入る分を残してあるからね。
看破でそこまで見れたんだね」
「何故そんな大事な事を言わない!
ギガンスッポンの時にお前は次元移動をしようとしたではないか?」
「俺が死んでも子供達は守りたかった。
ツネツギに代わりは居なくても俺に換えは効くからな。
東なら治したフリをして俺をまた作ってくれると思っていたんだ」
「馬鹿者!!」
部屋に響くパンと言う音。
ルルお母さんが泣きながら金色お父さんを殴った。
「私は確かにお前の向こうにツネツギを探してしまっていたのかも知れない!だがお前はお前だ!!キチンと代わり等と思わずに共に生きていた!!
何が替わりが効くだ!!
ふざけるな!!」
「ルル…」
「ならば問う!?私がノレルやルノレ、ノレノレになって戻れなくなったとしたらお前は3人を私の代わりと思えるのか!?」
「いや、あの3人は最早別個体…」
言い切る前に金色お父さんはまた殴られる。
本当、一言も二言も余計なのは金色お父さんでもお父さんでも変わらない。
「変わらぬ!バカにするな!!
勝手に決めつけるな!!」
ルルお母さんは真剣に怒っている。
その姿を見てなんて素敵なのだろうと不謹慎ながら思ってしまった。
しばらく続く無音の世界。
私は落とし所を用意したくなって口を開く。
「お父さん、お父さんは金色でも違くても余計な事を言うのは変わらないんだから言い訳しないで素直に謝った方がいいよ。
多分この話を聞いたらお母さんにも怒られるからね?」
「ほれ見ろ!千歳は私の味方だ!」
金色お父さんは「ぐっ…」と言った後に「ルル…済まなかった」と謝った。
「最初から謝ればよいのだ」
ルルお母さんはふふんと行った顔で晴れ晴れとしている。
「ルルお母さん」
「なんだ?」
「ルルお母さんって凄く素敵だね。
私、大好きになっちゃった。
これからもお父さんの事をよろしくね」
そう言って嬉しさのあまり笑ってしまう。
「お前は…なんと言う笑顔で私を見るのだ…」
そう言ってルルお母さんはまた泣く。
「ツネジロウ、私達の娘を見たか?」
「ああ…、最高だろ?」
「お父さん、死んでもいいとか次言ったらまた無視するからね」
「ぐっ…」
言葉に詰まるお父さんを見て私はまた笑う。
「千歳、ようやく落ち着いたみたいだね。
髪の色が黒に戻ったよ」
「あ、本当だ。東さん…ありがとう」
「ふふふ、ようやく私の好きな千歳様に戻ってくれたわね」
「ジョマも本当ありがとう」
「ねぇ、東さん、ジョマ…」
「なんだい?」
「はい?」
「2人もやっぱり凄くお似合い!
2人ともありがとう!!」
「え?」
「またそれ?」
「うん。
でもお父さんとお母さん。金色お父さんとルルお母さん。ツネノリとメリシアさん。東さんとジョマ。
みんなお似合いカップルばかりでいいなー。
私も誰かいい人居ないかな?」
その瞬間、お父さん達の目が怖くなる。
「千歳にはまだ早い!!」
「千歳!全ての物事は準備と経験が物を言うのだ!場当たり的な恋愛など言語道断!」
「千歳様は今のままが素敵です!恋愛なんてダメです!」
「ははは。だってさ千歳」
「うー…」
その後私達は一頻り笑い合ってお茶にした。
ガーデンのお茶は緑茶みたいで飲みやすかった。
私を神の世界に連れて行ったからと言う事で東さんがポケットマネーでおはぎとぼた餅をセカンドから買ってきてくれて5人でお茶を楽しんだ。
ルルお母さんは本物の甘党で「はしたないのだが許せ!」と言って容器のあんこをスプーンで取って食べていた。
一口食べるごとに「ほぅ」っと息を吐いて嬉しそうな顔をする。
ツネノリのお米馬鹿の原点を見た気がした。
いい加減落ち着いた私は4人に「ありがとう。もう行くね」と言って立ち上がる。
「大丈夫か千歳?」
「ありがとうルルお母さん」
「しっかりな」
「うん、お父さん」
「千歳様…本当にあのホテルに戻るの?」
「ジョマ、これも私のやり方なんだよ。
普段のジョマなら逆に行きなさいって言うよね?」
「千歳、辛い時はどうする?」
「んー、今晩もツネノリの腕枕で寝…あ!東さん、お願いしてもいい?」
「なんだい?」
「この家、もう少しこのままにして!金色お父さん、ルルお母さん!今晩ここに来てよ!今日は3人で川の字になって寝よう!!」
「何!?」
「それも良いのぉ。では何か食事を用意するかの?」
「だが千歳、時間の流れが…」
「あら、ツネジロウ。私がそれくらいやってあげるわよ。千歳様が思いついたんだもの応援するわ。それに私がやらないと千歳様が神如き力で時間操作しそうだからね」
「だってさ、ツネジロウ。僕から神殿の皆には伝えておくよ」
「…次はツネツギが来る日だぞ、ここでツネツギが来たら驚くだろう?」
「ああ、それは移動の手間が省けていいね」
「東…」
「あ、明日千歳様はやりすぎのペナルティで一日お休みしてね」
「ジョマ?」
「明日戦いに戻って神如き力が成長するとガーデンを滅ぼしかねないから諦めてね。
いいじゃない。勇者様が来たら一緒にタツキアに行って旅館の主人に娘さんの声を聴かせて、後は離れた場所でお兄様と勇者様の活躍を見守るの」
「でも…私が居ないと勝てないバランスでしょ?」
「…それはこれから東が外で勇者様と相談すればいいのよ。少し考えればわかる方法は残してあるんだから」
そう言ってジョマが微笑む。
「それでも暇ならイベントの時間だけ私とセカンドでデートをするのもいいかもしれないわね」
「それはならん!!」
「あら、お母様の目が怖いわ。じゃあ汚れ物でも持って帰ってきてお母様に洗濯を頼んだりしちゃいなさい。受け渡しは勇者様がやってくれるわよ」
「うーん…わかった。じゃあまたあとでね」
そう言って私はホテルに戻る。
…うわ…、想像以上にグロい。
「千歳、大丈夫かい?」
東さんの声が聞こえる。
「駄目だけど…仕方ないよ」
「じゃあ通常時間に戻すよ。戻すと同時に悪魔は消すからね」
私はうんと言ってから悪魔に手を合わせる。
むごいことをしてごめんなさい。
私は悪魔が消えたことを確認してからツネノリに連絡を取る。
「ツネノリ?」
「どうした!大丈夫か!?」
「うん、平気。もう急がないでいいよ」
「何?」
「4匹の悪魔は!?」
「私1人で倒しちゃった」
「嘘だろ?」
「本当だよ…、ただ…部屋がね…、グロくなっちゃった」
…きっとツネノリには想像を上回るグロさで引かれるんだろうなぁ…。
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