ツネノリの章⑨次元越しの再開。

第127話 何だこれは?最悪の連続だぞ!

俺の寝ている間に事態は動いていた。

千歳が地球の神と謁見をして完全解決の可能性を見つけてきたと言う。


そして魔女…ジョマの本質に触れてきた千歳からは魔女と呼ぶ事を強く禁止された。

呼び方すら完全解決の妨げになると言うので全ては千歳の言う通りにしようと思う。


俺は千歳に完全解決やジョマの事を聞いてみたのだが「いいの、ツネノリは全力で敵を倒してみんなを守る!それが完全解決に必要な事なの。細かい事は解決した時に説明するよ!」と言われてしまった。



「今日から新しいイベントだからどうなるんだろうね?」

「ああ…」


そう言っているとジョマの姿が空に現れて話し始める。

「今日から魔物化したプレイヤーの方による街中バトルが始まります!

今日はイベント初日、お試しも兼ねて今日はサイバの街で行います!

参加される方は後ほど足元に出る光に向かって参加の意思表示を行ってください!!」


「サイバだって」

「東さん、サイバの広さや人口は?」

「広さはタツキアの倍。人口も倍の4000人くらいだよ」


「そこに何人の魔物化プレイヤーが投入されるかわからないが守るのは至難だな」

「うん…、後は私が12本の剣について閃かなきゃ」


「ああ、ジョマからのエールと言っていたな。

よろしく頼む」

「了解だよ」

千歳はすっきりした顔で前を見てそう言う。

その眼差しからは力強さと意志を感じる。


「ツネノリどうしようか?」

「何がだ?」


「召喚の光を待つ?東さんに送ってもらう?」

「街の下見はしたいな…。

東さん、お願いできますか?」


「ああ、いいよ」

次の瞬間には俺達はサイバのスタッフカウンター前に居た。


「よし、今は11時前だ少なくともイベント開始の12時まで1時間は街を回れる」

「うん」

千歳の返事はどこか心ここにあらずも言った感じで気になる。


「千歳?」

「ううん、ツネノリが前歩いて。私は今考えなきゃいけないから」


「ここで待つか?今のままだと歩いても地形は頭に入らないだろう?」

「ううん、私も行く」


千歳は後ろをついて来ていたがやはり危ない感じなので俺が手を引くことにする。

千歳は言われるがままについてくる。


街は本当にタツキアの倍という感じで大きなホテルや小さなホテル。

後は商店に飲食店なんかがある。


街のメインストリートの裏には民家もあって守りに入るとやはり難しいイメージだった。


スタッフカウンターに居たスタッフの人に話を聞くと先程のジョマのアナウンスを受けて外にいる必要の無いスタッフ。子供や老人なんかは自宅待機になっていると言う。


正直最悪の展開に感じる。

「まだ開始まで15分ある。あのホテルの中に大きな部屋はないか?そこに籠城をしてほしいのだが…」

「半分は間に合いますが半分は15分じゃホテルまで来られません!」


くそっ…

「だがそれでもいい、頼む。

老人や子供は俺も手伝う!」

俺はそう言ってスタッフの指示に従って避難誘導を始める。


「あなたは?」

「私はスタッフカウンターを守る仕事ですから。

最後までここは離れられません」


「わかりました。気をつけてください。俺もここを意識しておきます」

「ありがとうございます」


そして12時になる。

閑散としたサイバの街に召喚の光と共に多数のプレイヤーが入ってきた。


…この中の何人が魔物化するんだ?


「皆さーん!こんにちは!!

運営のジョマです!!

流石に外の世界は朝4時なのでログインしているプレイヤーの方は少な目ですね。

今このサイバには約千人のプレイヤーが来ています!!

そして、皆さんが気になる魔物化するプレイヤーについて説明します!

魔物化するプレイヤーには事前にログインボーナスでコレ」

そう言ってジョマが真っ赤な宝石を手に取る。


「コレは悪魔のタマゴって言う企画部で作ったアイテムで、これを配布しています。

この悪魔のタマゴを胸に押し付けると魔物化が始まります!

今横にいる自分以外のプレイヤーが悪魔かもしれません。

怖いですねぇ!

ちなみに、このアイテムで魔物化しても食用ではないから美味しくありませんし、倒せば1日の強制ログアウトのペナルティで済みますし、魔物化自体は2時間で効果が切れてしまうので暴れるなら2時間の間になります!」


魔物化…、いや悪魔化だろう多分昔父さん達が倒したと言う奴だろう。

その力は強大で大木を簡単に殴り折ったり、カムカさん達が戦った悪魔は閃光と爆裂で全方向に攻撃をして来たと言っていた。


救いなのは千人のプレイヤーがいる事と死亡時のペナルティがない事。


後は何人のプレイヤーが魔物化するかだ。


「そして最後に気になる魔物化をするプレイヤーさんの数ですが!本日サイバにいるプレイヤーは21人!そのうち1人はデモンストレーションとして今から5分後に強制発動します!残りの20人は任意の変身になります!

それではイベントをお楽しみください!!」



5分後…

その間に何が出来る?


そんな事を考えたが「お前は魔物化するのか?」と聞く訳にもいかないし、聞いても答えなんか期待できない。

都度対処しかないのだ。



「千歳?聞いていたか?」

「うん、そこは大丈夫。

広いサイバ…

1000人のプレイヤー…

21人の魔物化…

12本の剣…」


千歳はずっと考えている。

あまり活躍を期待するのは難しいと思う。


そして5分後、スタッフカウンターの側にいたプレイヤーの1人が「ぐぅあぁぁっ!」と苦しんだ後で魔物化をした。

やはり昔から本で読んで父さんから聞いていた悪魔化した人間だった。


赤い体毛にツノと牙。

身体は大きくホルタウロスくらいの大きさがある。


悪魔化したプレイヤーは横にいたプレイヤーをいきなり殴りつける。

殴られたプレイヤーはきりもみして壁に当たり肉塊になる。

「やべぇ!楽しい!!」

悪魔はそう言ってその横のプレイヤーも殴る。


だが殴られたプレイヤーは吹き飛ばなかった。

そのプレイヤーも悪魔だったのだ…。

あっという間に悪魔が2匹になる。



くそっ!

何だこれは?最悪の連続だぞ!

「千歳!」

「見てたよ、とりあえず強さが見たいから一体と戦おう。

残りは他のプレイヤーに任せよう」


「ああ…」

落ち着き払った千歳の雰囲気に俺は違和感を覚えた。

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