第117話 じゃあさ、コイツの光の剣に耐えてみせてよ。
その後は訓練に戻る。
0と1の間に居るので時間の経過は無いが、一日経つ頃にはメリシアは私と本気の鬼ごっこもやれるようになって皆を驚かせた。そしてちょっとの間通常の時間に戻してまた0と1の間に入って訓練に戻る。
二日目はお爺ちゃん達に先に腕から作って貰ったので光の剣で訓練を始める。
赤い刀身が赤い鎧に良く似合う。
「色は赤なんですね」
「そうだね、ツネツギとツネジロウは青だけどね。あれはオリジナルの「勇者の腕輪」だから仕方ないよ」
「いえ、ツネノリ様の剣は黄色でしたので」
またツネノリかい…
「ツネノリの「勇者の腕輪」は彼女が作ったレプリカだからね」
「ツネジロウ!ちょっと来てよ!」
「なんだー?」
「剣出してよ。
私達の光の剣と比べたいの」
「んー、別にいいけど」
そう言ってツネジロウは光の剣を出す。
「あれ?前よりまた成長したの?」
「ああ、千歳に教わってな」
「へぇ、チトセって凄いんだね」
「まあな」
「どのくらい強いのか見てみたい!」
「はぁ!?ちょ…お前…」
「おーい、ちょっと来てよー!」
そう言って私はアイツを呼ぶ。
「何?どうしたのマリオン」
私はメリシアに光の盾と光の剣の説明をしたいけど切り試せる物がないから呼んだと言った。
「え?何を出すの?ビッグベア?」
「違うよ。アンタで切り試すの」
私はさも当然と言う言い方をする。
「どうするつもり?」
そしてアイツも平然と聞き返してくる。
さすが魔王と呼ばれる南の王様。
「え?その「万能の鎧」の自動防御で防いでよ。
今のアンタなら硬さの指定もできるでしょ?」
「多分出来るけどどうするの?」
「簡単だよ、一枚目はその鎧を授かった時の硬さ、2枚目はお姉ちゃんが「創生の剣」に負けた時くらいの硬さ、3枚目はアンタの本気の硬さ。
今のアンタなら本気出したら「紫水晶の盾」の最高硬度と同じくらいの防御ができるでしょ?」
「どうかな?やってみるけど…【アーティファクト】」
そう言いながらアイツは「万能の鎧」の負荷能力を3種類の防御にする。
「よし、ツネジロウ!行っちゃって!」
「えー…、やだなぁ。キヨロス、悪いが行くぞ!【アーティファクト】!」
そう言ってツネジロウはアイツに斬りかかる。
1枚目の自動防御は簡単に破って2枚目の自動防御も破るが3枚目はガッと言う音が出ただけで何もならなかった。
「凄いね、まさか2枚目が斬られるなんて思わなかったよ」
「まあ俺も俺の「勇者の腕輪」もまだまだ成長しているって事だな」
アイツが驚いていてツネジロウも満更ではない顔をしている。
「次!私ね!!【アーティファクト】!」
私は光の剣を出して一気に斬りかかる。
本気の本気では無いが本気の一太刀。
剣は1枚目の自動防御は容易に切り裂くが2枚目は後一歩と言ったところで止まる。
「擬似アーティファクトだとこんなもんかぁ…」
「いや…十分じゃない?完全に鎧を着込んでいれば威力も跳ね上がるし、仮にこの威力でも普段のマリオンならここでアーティファクト砲を撃ち込むよね?昔のフィルさんならやられてたよ」
「そっかな?じゃあ次はメリシアね。
剣の振り方はわかるよね、後は単純にメリシアの身体と剣の問題だからね」
「はい!よろしくお願いします!【アーティファクト】!」
そう言ってメリシアは光の剣を出すと一気に斬りかかる。
その剣は1枚目の自動防御は簡単に突破をしたが2枚目には遠く及ばず、防御壁に傷をつけただけで終わる。
「すみません…、せっかく教えてもらったのに…」
「いやいや、始めたてでそれなら十分だよ」
「ならよぅ」と言ってドフお爺ちゃんが来る。
「へへ、マリオンの鎧には無い新機能だ、剣を振る際に左肩の擬似アーティファクトに意識を集中してアーティファクトと唱えてみな」
「は…はい!」
そう言ってメリシアが立ち上がる。
「小僧、もう一回頼むわ」
「うん、わかった」
「行きます!【アーティファクト】!」
そう言ったメリシアは跳躍をしてアイツに斬りかかる。
「今だ!セカンドの嬢ちゃん!!」
「【アーティファクト】!」
そうするとメリシアの光の剣に雷がまとわりつく。
そのままアイツに斬り込むと、自動防御は2枚目があと少しで壊れる所まで追い詰める事が出来た。
「何あれ…」
私は思わず口にしてしまう。
「へへっ、驚いたか?あの擬似アーティファクトはよぅ、簡単な…わかりやすい火とか氷とか雷の攻撃を吸い込んで貯めておけるんだよ。
それを攻撃の時に出せば剣に纏わせる事が出来て攻撃力倍増だぜ」
「まあ、そもそもはドフの「混沌の槌」に溜まった雷の力をどうにかしたくて付けたんだけどね」
お爺ちゃんとドフお爺ちゃんは嬉しそうに話す。
「凄いねガミガミ爺さん」
「だろ?」
そう言って嬉しそうなドフお爺ちゃんはメリシアの肩に新たに溜まっていた雷の力を入れる。
「鎧を作っていると雷の力が溜まるからよ、今も嬢ちゃんに渡そうと思って来たわけよ。
嬢ちゃん、これも擬似アーティファクトだから疲れるだろ?どうだ?」
「はい、少し疲れました」
「だから使い所には気を付けろよな。
力は結構貯められるからいざって時は剣に乗せないでも普通に放電も出来るし上手く使ってくれ!」
「マリオン、もう終わりでいい?」
「んー、メリシアも疲れているから今のはいいかな?でも私は見てみたいんだよねぇ」
「え?何を?」
アイツが興味深そうに私を見る。
「ツネジロウ?盾も硬くなったんだよね?」
「あ?まあな」
ツネジロウが驚いて私を見る。
「じゃあさ、コイツの光の剣に耐えてみせてよ」
私は興味深かった事を提案してみる。
「なに!?無理だろ?」
「60秒耐えたらツネジロウの勝ち。
これならどう?」
「むぅ…まだ可能性はあるか…」
「アンタもハンデで最初は1本だけね。
その後10秒毎に1本ずつ増やしていいからさ!」
「う…最大で6本か…、だんだん自信なくなって来たぞ」
「そう言わないで頑張ってみなよ」
そんなやり取りを遠くで見ていたジチも見学に来る。
「へぇ、面白いね。まあお姉さんは私の旦那様が勝つと思うけどね」
「ルル!ルルはどっちだと思う!?」
私は遠くにいたルルにも声をかける。
ルルは「何事だ?」と寄ってきたので説明をする。
「ほぅ、まあ今のままならキヨロスの勝ちだろうがハンデ…と言うか対等の戦いならツネジロウが勝つかもな」
「対等?なにそれ?」
「キヨロス、お前の「革命の剣」が出す光の剣は「究極の腕輪」の恩恵無くしてはその威力を発揮できまい?
だからツネジロウも「究極の腕輪」の効果範囲に入れてもらって本気の盾を60秒張り続けるのだ。
そうしたら60秒だけならいい勝負になるも思うがな。
まあ、65秒くらいでツネジロウはバラバラだろうがな」
「酷くね?」
「事実だ」
ルルは笑いながらツネジロウを見る。
「いいよ、それでやろう。【アーティファクト】。これでツネジロウも全力で光の盾を張り続けられるよ」
アイツの顔が楽しい時の顔になる、
ちなみに私の言う「楽しい時」だが普段の温和なイメージを脱ぎ捨てて私に言わせると凶暴な本性が垣間見えた時のことを言う。
「ひぇっ、ルル!お前!キヨロス怖いぞ!」
「知らぬ!耐えよ!60秒耐え凌げばお前の勝ちだ!」
ツネジロウがアイツの変化に驚いてルルは関わりたくないと言った感じで言い放つ。
「メリシア?見ておきなね。
こんな凄いことはそう見れないからね」
「はい」
「じゃあ行くよ【アーティファクト】」
アイツの頭の上に光の剣が1本出る。
「くそー、ルルにマリオンめ…【アーティファクト】!」
そう言って光の盾を出すツネジロウの盾も今までにない力強さだった。
「行くよー、よーい…スタートー!」
私自身この勝負に興味があったのでウキウキと合図を出す。
「行け!光の剣!!」
アイツの掛け声でもの凄い速さの光の剣がツネジロウを休まずに襲う。
「くそっ!怖ぇぞ!!」
ツネジロウは口では怖がるが新しい盾はびくともしない。
「ちっ、硬いな…」
そう言うアイツは自分の頭上に2本目を用意している。
「3…2…1…10秒!」
「行けっ!【アーティファクト】!」
2本に増えた光の剣が目にもとまらぬ速さでツネジロウに襲い掛かる。
「クソぉぉぉ、怖いぃぃ」
言っている事は情けないが今の所盾は破られる感じもなく耐えている。
そしてそのまま40秒目までツネジロウは耐えた。今は5本の剣が絶え間なくツネジロウを襲う。
「ちっ、僕の全てを使え!「革命の剣」!!【アーティファクト】!」
「バカ!!物凄く光り輝いてんぞソレ!!やめろよ!冗談じゃ済まないだろ!?
千歳が教えてくれた硬さ、イメージ!!【アーティファクト】」
最早本気の戦いだ。
本気で光の盾を破ろうと猛攻撃を続ける光の剣。
そして何とか防ごうとする光の盾。
「あはははは!2人とも凄い!凄い!!」
「笑い事かよマリオンよぉ…」
ドフお爺ちゃんが感動を通り過ぎて呆れ始めている。
「キヨロスくん!勝ってよね!」
「ツネジロウ!ここまで来たんだ負けてもいいなどと思うで無いぞ!!」
「あらら、奥さん達がムキになってるよ」
「50秒!後10秒耐えたらツネジロウの勝ちだよ!!」
「ちっ!絶対に斬り刻んでやる!行け6本目!死ねぇぇぇっ!!【アーティファクト】!」
「死ねってなんだよ死ねって!酷くないか!?怖い、怖い、怖い、怖い!!【アーティファクト】!!」
流石に6本もの剣は厳しいのだろう。ツネジロウの光の盾もヒビが入ってボロボロになっている。
「6…5…4…」
「あと一息!」
「もう少し…ひぇっ…」
「3…2…1…そこまで!!」
私の合図と同時にツネジロウの光の盾は粉々に砕け散っていて、綺麗な光の破片が辺りに舞う。そしてそこで終わらせないアイツはツネジロウの全周囲に12本の光の剣を出して威嚇していた。
「「勝った…」」
「「え?」」
「僕が間に合ったよね?」
「俺が耐え抜いただろ?」
「僕だ!」
「いいや、俺だ!」
「マリオン!どっち?」
「俺だよな?」
「引き分けじゃない?」
「「え!?」」
「私はメリシアに見せたかっただけだから勝ち負け関係無いし」
「酷くない?」
「おい、東!俺だよな?」
「引き分けで良くないかな?
どの道キヨロスはあのまま戦えば勝てたんだし」
「いや、お前…そういうことじゃないだろ?」
「勇者様もキヨロスさんもありがとうございました。
お2人のおかげで盾の張り方のイメージが良くできました!ありがとうございます!!」
メリシアが綺麗に話を纏めてしまう。
この子、本当に見かけ以上に出来る子なのかもしれない。
メリシアにそう言われた2人は「いや…」「まあ、役に立てたならいいけど…」としか言えていなかった。
「あの…、キヨロスさんに一つお伺いしたいのですが…」
「何?」
「キヨロスさんの光の剣ならさっきの3枚の盾も破れるんですか?」
ああ、確かにメリシアの質問は気になる。
「うーん…どうだろう?剣を使うのは僕だよね?それで3枚とも「紫水晶の盾」の最高硬度にして破れるかって話だよね…。12本全部出せば僕ならできるんじゃないかな?」
…コイツは…、言ってのけた。
「凄いです!!じゃあ盾を張るのがキヨロスさんでも剣の方が勝つんですか?」
…ん?
何かその質問って?あれ??
「え?「革命の剣」が出す12本の光の剣を僕が3枚とも「紫水晶の盾」の最高硬にして防げるかって事だよね?」
「はい」
「僕なら防げると思うよ」
「え?」
「だから、剣を出すのが僕ならどんな盾でも破るよ。そして盾を張るのが僕ならどんな剣にも破られないよ」
…それって変じゃない?
「おい、それって矛盾って言わないか?」
ツネジロウが眉間にしわを寄せながら皆の気持ちを代弁する。
「何で?僕が僕の盾を僕の剣で破壊する事はあり得ないから、僕が勝つって事だよ」
…言ってのけた。
非常識男だ…
「じゃあ、訓練に戻ろうメリシア。
私が軽く斬り込むからメリシアは盾張ってみなよ」
皆が釈然としない中私はメリシアと訓練に戻る形でその場を逃げる。
そうやって二日目の訓練は終わる。
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