第113話 私も皆と協力して戦いたいよ。

以下の説明をした。

・ギガントダイルには各1800人で臨んでもらう。

・ギガンスッポンが見えた時に1800人の中から1200人はギガントダイルに残してそれ以外の600人がギガンスッポンに合流する。

・ツネノリはギガンスッポンが近づくまでは守りの薄い箇所に参加して穴埋めに徹する。

・私はギガンスッポンを倒す為に準備に入る。

・200人のギガンスッポンに回るプレイヤーは足止めメインなので遠距離武器の使い手だけにする。


「みんな、進行方向と残り時間はモニター配置して貰っているからそこに行って!

ギガントダイルに爆弾を使うなら近付いて口を開けた時に放り込むのが理想的だよ!」


「了解だ!

それにしてもギガンスッポンはまた特別枠さんか、運営の贔屓にも困ったもんだな」

大男風のおじさんが話しかけてくる。


「本当だよね、こうやってデモンストレーションしてサードガーデンを売り込みたいからって酷いよね。私も皆と協力して戦いたいよ」

私は率直な感想を述べる。


「ははっ、気持ちのいい姉ちゃんだな。トドメは任せる!俺達はあのワニ退治だ!」


そう言って各々がポイントまで移動する。

「伊加利さん!今回は守り切ろうね!」

「うん、佐藤、田中、鈴木も気をつけて!」


「千歳、今回はお前が一番大変だ…、気を付けろよ」

「大変さならツネノリだって大変だよ。下手したら3時間以上センターシティの周りを走り続けてギガントダイルの相手するんだからさ」


「俺なら大丈夫だ。

別行動になるが後で会おう」

そう言ってツネノリもギガントダイルの出るポイントに向かう。


「準備は良さそうだな?」

「うん。ルルお母さん、詳しく説明をお願い」


「うむ、…それにしてもお母様も悪くないがお母さんも中々…」

「ルルお母さん?」


「いや、こちらの話だ。今私と千歳が話せているのは私が作った次元球があるからなのは理解したな?」

「うん」


「これには別の機能が付いていて、それは道具の受け渡しになる。

私がこれからある道具を渡す。厳密には渡すと言うより通すからそれを千歳に持ってもらいたい」

「わかった。持つのね」


「だがどうなるかわからない。千歳の身に危険が及ぶ可能性もある。

だから千歳はそのイメージの力で大砲を作れ。

その中に次元球を入れるのだ。

私はその中からある物を出して奴に一撃をくれてやる。

必殺の一撃だ。

当たれば必ず勝てる!」

「必ず…勝てる」


「なんだ、千歳は母が信用出来ぬのか?」

「ううん、違うよ!感動しただけ」


「千歳、お前は素直でいいな!早く会いたいぞ」

「うん、私も会いたい!」


「正午になりました!

続々と三方向からギガントダイルがやってきています!

プレイヤーの皆さんはギガントダイルの猛攻を防いでセンターシティを守れるのか!

ギガンスッポンの到着までは後3時間です!!」

ジョマの実況が聞こえて来る。


「ルルお母さん、始まったみたい」

「ああ。こちらは神の力で三箇所とも見えている」


「じゃあツネノリは?」

「問題ない。絶好調でギガントダイルを切り刻んでおる。キリの良い所で二箇所目に走るようだ。

流石は私の息子だな」


良かった、この作戦はギガンスッポンが来るまでツネノリが高速移動でセンターシティを何周もして守りの薄くなった場所が立て直せるまで時間を稼ぐものだ。

ツネノリが倒れると計画は瓦解してしまう。


「よし、では始めよう」

「え?もう?」


「ああ、準備に時間がかかる。そちらで30分だな。

それに出来たらさっさと片付けてしまいたい。

千歳よ盾の材質で砲塔を作れ。話はそれからだ」

「うん、やってみる」


「まだ時間はある。焦らずにイメージしろ。

私は昨日の千歳の戦い方を見ていた。

あの自由さ、想像力、独創性の素晴らしさ。

それらを見て感動をした。

お前ならやれる。自信を持て」

「ルルお母さん…、ありがとう!」

私は素直に褒められた事が嬉しくてやる気になる。


「イメージ…大砲の筒、砲塔…真っ直ぐ飛ばす…。【アーティファクト】!」

私の前には昔遊園地で見た海賊船の砲塔があった。


「うむ、問題無いと思う。やってみよう。

それでは今から私は別の私になる。

ツネノリからは何か聞いておるか?」

「別のルルお母さん?」


「なんだ、聞いていないのか…、私の中には別に3人の私がいる。この攻撃はそのうち1人が担当だ、私とは似ても似つかない奴だが気にするなよ」

多重人格?

何にせよ凄いお母さんなのは良くわかる。


「うん、了解」

「では行くぞ!

千歳ー!ノレノレ母ちゃんだよー」


ノレノレ母ちゃんと名乗った明るい声が私を呼ぶ。


「ノレノレ…お母さん?」

「うん、ルルじゃないけどお母さんって呼ばれるのもいいね!

よろしくねー。母ちゃん早くアンタに会いたいよー」


とても明るい声で話してくれる声が私を安心させてくれる。


「うん、私も会いたいよ。ノレノレお母さん!」

「うぉぉぉっ!泣ける!嬉しい!!

ムッハー!母ちゃん頑張るよ!!

んじゃあ今から半分「創世の光」をそっちに出すね!」

そう言うと次元球から黒い筒が現れる。

球の大きさと筒の大きさが揃っていないが何とかなっていて不思議だ。


「これ、母ちゃんが発動させるともの凄い圧がくるから気をつけて、直ぐに大砲に入れて大砲を支えるんだよ!」

「はい!」


「いい返事だね!本当ツネツギの子はいい子ばかりだ!

ツネジロウ!創世の光使うから支えて!!」

「了解だノレノレ」

え?お父さんの声?ツネジロウ?

あ!ツネノリが言っていた金色のお父さんだ!


「待った!!待って!」

「えぇ?問題?大丈夫?」

ノレノレお母さんが心配そうに話しかけてくれる。


「違うの!お父さん!!金色のお父さんがそこに居るの?」

「うん、ツネジロウ?居るよー。話したい?」


「うん、話したい!!」

「ツネジロウー、千歳が話したいってー」


「千歳か?済まないな、俺が行ければ良いんだが金色の時は次元移動…セカンドやファーストに行く事が出来ないんだ。

全く、東も融通がきかなくて困る」


本当に話した声はお父さんだし話し方もお父さんだ。

でもツネノリの言う何か違うって言うのは良くわかる。

不思議だ…


「お父さん!私ノレノレお母さんと頑張るね」

「ああ、よろしく頼む」


「お父さん?」

「なんだ?」


「今度金色のお父さんとも少し話してみたいからよろしくね」

「あー、東に言っておく」


「ありがとうノレノレお母さん!お待たせ!!」

「あいよー、んじゃあ母ちゃん頑張るからね!行くよー!【アーティファクト】!!」


私は慌てて次元球を筒に押し込む。

しばらくするともの凄い圧が私を襲う。


「なに…これ…?」

「千歳…無事ー?」

圧が凄くても声はするのが不思議だ。


「うん!でも重い…これを30分?」

私は正直な気持ちを言う。


「ごめんよー、母ちゃん頑張るからね。そしたら3分くらい早まるかも…」

私はその声に期待をして待つ。


「そう…いえばツネノリ呼んでない」

「大丈夫だよー…、このまま母ちゃんとツネジロウと千歳でやっちゃおう!」




途中、ジョマの声がする。

「あら、千歳様…と言うかルル様ね。凄い事考えるわね。

セカンドガーデンに「創世の光」を持ち出すなんて。

確かにそれが使えればギガンスッポンもイチコロね。

千歳様、応援しているわ。頑張ってね。千歳様次第の作戦よ」

「うん…?ありがとう…ジョマ…」


「辛そうね、耐えられる?」

「やる…しか…無いって…。ねぇジョマ?」


「何?…話しながら耐えるのは血かしらね?

お父様もルル様と耐えた時ずっと話をしていたわよ」

「そう…なんだ…、ありがとう…、この作戦…は…、嫌だった?」


「いいえ、良い作戦だと思うわ。これで東が関わっていたら怒るけど人間達が力を合わせたのなら私は賛成よ」

「あり…がとう…、ジョマ…。

気を…紛らわして…くれるために…きたでしょ?」


「もう、敵わないわ。

それ、臨界まであと少しだから後は向こうのお母様と話して頑張りなさい。

ギガンスッポンは見えるでしょ?」

そう言ってジョマは消える。

確かに遠くに巨大なシルエットが見える。


距離があるせいかまだ小さい…

当てられるかな?


「千歳ー、今…話してたの…あの女?」

「うん…、ジョマだよ」


「あの…女…本当に違うんだね。昔の…使いに…あった…嫌さが…無いよ」

「そうなんだ」


「千歳!ノレノレ!大丈夫か?」

「ツネジロウ、後少しだから踏ん張ってよね!」

「お父さん、ありがとう」


「俺は家族の為にならやれる男だよ!」

お父さんだけどお父さんではない。

なのにお父さんなのだ。

凄く不思議だけど頼もしい。


「千歳!臨界突破したよ!」

「まだ的が小さいけど当てられるかな?」


「平気だよ、コレは真っ直ぐに伸びる光だからズレたら角度を変えれば当たるから!」

「了解!ノレノレお母さんお願い!」


「行くよー!【アーティファクト】!」


その瞬間、もの凄い勢いで光が大砲から放たれた。

光はギガンスッポンの向かって左側、右肩の上にあった。


「当たった!?」

「まだ!角度変えるね!!」


「やっちゃえ!!」

「うん!!」


私は大砲を操作してギガンスッポンを狙う。

圧のせいで狙いが合わせにくい、難しい!!


「くぅぅぅっ!」

ようやく、光がギガンスッポンの甲羅に当たる。

甲羅は簡単に消滅していく。


「後少し…」


ビシッ


え?…今の音…

大砲から聞こえた…次の瞬間、大砲は砕けて光が漏れ出した。

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