伊加利 常継の章⑥集団戦闘。
第76話 こんなことで生き残れるのか?
朝一番、テーブルに着席をすると俺のスマートフォンに東から帰宅後のセカンドで起きた約2日間の出来事が届いた。
ツネノリの方はタツキアの宿屋夫妻の娘と良い仲になった事が書いてあって、千歳はタツキアの宿屋夫妻も引っかき回して更に東と北海を呼んで3人でお茶をしたなんて書いてある。
「頭痛え…」
思わず呟くと千明が心配そうに朝食のシチューを持ってくる。
「大丈夫ですか?風邪ですか?それともガーデン?」
「ガーデンだ。
ツネノリが初恋、千歳は恋を応援とか言いながら相手さんの両親にツネノリを売り込んで、東と北海を呼んでお茶してる…」
「まぁ…」
千明はニコニコとしながら驚いている。
「アイツら、こんなことで生き残れるのか?」
俺は思ったままを口にする。
「大丈夫ですよ。
私達の子供達は出来る子ですもの」
「千明…、そうだな」
俺は千明のなんの心配もないと言う顔に救われた気になった。
「さて、食べたら早速顔を見てくるよ」
「はい、そうしてあげてください。
きっとツネノリくんは千歳に振り回されて疲れていると思うわ」
俺は身支度を整えながら食器を洗う千明に話しかける。
「慌ただしくてすまんな。もっとゆっくりと過ごしたいのだが…」
「それはこれが終わったら出来ますよ。千歳が反抗期だった1年分も含めて取り戻しましょう」
俺は「そうだな」と言って笑う。
「行ってくる」
「はい、気をつけて」
出社して1発目に入り口に北海が俺を待っていた。
「おはようございます副部長」
「ああ、おはよう」
「部長からご不在中の事は聞きましたか?」
「ああ、娘とお茶をしてくれたそうだね。ありがとう」
「いえ、それよりも一言言わせてください。
千歳様は女性です。もう少し下着とかに気をつけてあげてください。
可哀想ですよ」
「…あ…」
「千歳様にも言っておきましたけど、部長も副部長も無頓着ですから、私から常則様の分も差し入れておきましたから…」
しまった。
俺の服はゼロガーデンでルルがやってくれるから油断していた。
「北海さん、本当にありがとう」
「ふふ、いいえ。千歳様が私なんかと仲良くしてくれるからちょっとやりたくなっただけです。
後、常則様は私に敵意を持ってますから、やりませんけど日本とゼロガーデンは夏。
セカンドガーデンは冬ですからね」
夏…
冬……
ツネノリ?
あ!!
「済まない」
「風邪引かれたら盛り上がらないだけです」
そう言って北海は可愛らしく笑うと「企画部に帰ります。副部長、部長の説得よろしくお願いしますね」と言って去って行った。
…北海が悪人に見えなかった。
「やあ、おはよう。北海にしてやられたね」
「お互いにな」
開発室に着いた俺と東はそんな話をした。
「ツネノリの服はどうする?」
「ゼロから持ち込むか、そっちで用意してもらうかだな」
「常継のセカンドでのお金は腐る程あるんだから新しく買えば良い。
終わったら服ごとゼロに転送してあげるよ」
「そうすっか…」
「お金と言えば、あの宿で最高級の部屋に泊まっているから2泊で少しかかっているよ」
「なに!?」
むぅ…、金は余っているから構わないのだが…
子供が最高級の部屋に2泊?
なんか釈然としないな。
「なんだ常継、不満なら今度はルルや千明と泊まれば良いじゃないか?」
「千明はまぁ…喜んでくれるかもな。
ん?ルル?
東、何を言っている。
俺以外はガーデン間の転移は出来ないだろう?
ルルはセカンドに行けないぞ」
そう言う俺を見て鼻で笑う東。
その顔が何とも嫌な予感を助長させる。
「あのルルが大人しくしていると思うかい?」
「なに?まさか…」
「ああ…ここの所、研究漬けだったろう?
ルルならやるよ」
…嗚呼…、ルルの張り切る顔が目に浮かぶ。
「東…、一応聞かせてくれ」
「なんだい?」
「ルルが転移して世界に影響は?」
「ないな。そこはツネノリを転移させる為に北海が調整をしていたよ」
…マジか。
「まあわかった。
その時はその時だ。
東、とりあえずオレは11時くらいまでゼロにいる。それまでに動きがあれば教えてくれ。
あ、後はツネノリに服を頼む」
そして俺はVR装置を装着してゼロガーデンに行く。
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