第57話 父さんとなら頑張れるよ!!

「ツネノリ、途中まで盾張って私を守って」

「了解した」

俺は千歳の前に出て盾を張る。


「どうするんだ?大多数を橋に引き入れるのか?」

「ううん、それはしない。今はタイミングを伺っているの」

そう言った千歳は集中を始める。



「イメージ…イメージ…長い、細い、硬い…そして鋭い。

カタパルト…光の力で押し出す。

貫通力は並…」


今回は何を作るつもりだ?


「出来た!【アーティファクト】!」

そう言った千歳を見ると右の手の先から肩を越えた所までの先端の尖った長い光の棒が出来上がっていた。


「発射!!【アーティファクト】!」

その声に合わせて、光の棒は物凄い速さでプレイヤーを数人串刺しにした。


「はっ、確かに怖い攻撃だが、貫通力もさしてない。しかも連発できないなら問題は無いな」

そう言ってプレイヤーが刺された他のプレイヤーを見捨てて歩を進めてくる。

千歳?失敗したのか?


「今!爆発!!!【アーティファクト】!」

次の瞬間、光の棒が大爆発を起こして、辺りに居たプレイヤーを20人くらい巻き込んだ。

勿論、突き刺さっていたプレイヤーは跡形もない。


「マジかよ!?」

「爆発!?」

「何だよあの力…やべーよ」


プレイヤー共は千歳を見て驚いている。


「うっわー、想像よりグロい」

だが千歳は自分で使った技で誰よりも引いている。

確かに残酷な技だ。


「ツネノリ、もう1個行くから待ってて」

「また今のか?」


「ううん、同じのは見破られる可能性もあるから別の…

イメージ…イメージ、丸い、転がる…重い…

左手に作って右手で投げる…」


丸い?転がる?重い?

何を作るんだ?


「出来た!【アーティファクト】!!」

今度は手のひら大の大きさをした光の玉が5個ほど千歳の左腕にあった。


「おりゃー!」と言った千歳が投げてみるが非力な女の子の力ではプレイヤーの所まで届かずに橋の真ん中で失速して石造りの橋にめり込んでしまう。


「へっ、あの武器、重いだけの威力で殺す奴か?」

「じゃあ当たらなきゃ平気だな」


プレイヤーたちはそう言うと続々と橋に入って進んでくる。


「やっぱ上投げじゃあんなもんかー。今度は下投げ!」

と言うと千歳はコロコロと残り4個の光の玉を転がす。


「あんな遅い球に当たるかよ」

「バカじゃねぇのあの女」

プレイヤーが口々に千歳を馬鹿にする。


「ツネノリ、下がるよ」

そう言った千歳が後退をする。

俺も合わせて下がる。


「へっ、逃げ出したぜ?」

「余裕じゃない!」

プレイヤー達が嬉々として迫ってくる。


千歳は何をするつもりなんだ?

俺達が橋から小島に移動して、敵の先頭が橋の真ん中に差し掛かった頃。


「爆発!!!【アーティファクト】!」

そう言った途端、5個の光の玉が大爆発を起こした。

光の玉の付近に居たプレイヤーはこれまた跡形もなく吹き飛ぶ。

しかしそれよりも凄かったのが、石造りの橋が今の爆発で壊れてしまい、多くのプレイヤーが水没したのだ。


「ツネノリ!雷!!」

「あ…ああ!!【アーティファクト】!!」

俺は言われるがままにまた水に向かってアーティファクト砲を放ってプレイヤーを感電させる。


「ざっとこんな感じだよ」

千歳は「どう?凄い?」と俺に聞いてくる。

俺は凄い発想力だと褒める。


「へへっ、ずっとさっきから別の使い方が出来ないかと思っていたんだよね。

役に立てて良かった」


「千歳」

「ん?」


「後は盾を張ってここで休むんだ、橋が壊れたからこっちからプレイヤーはほとんど来ないと思うが来た時はよろしく頼む。

俺は父さんを援護しに行ってくる」


「うん。わかった」

そう言って見送る千歳を後にして俺は父さんの元に急ぐ。


父さんは流石に100対1だと多勢に無勢で苦戦していた。


俺は父さんの奥で待ち構えている連中に向けてアーティファクト砲を放つ。

アーティファクト砲は見事に当たって付近の敵を殲滅する。


「ツネノリ?」

「父さん、お待たせ!!」


「バカ、向こうはどうした!?」

「千歳が「勇者の腕輪」で爆発する光のアーティファクトを作って敵ごと橋を壊しちゃったよ」


「マジかよ」

「うん、本当だよ。だから俺は父さんの手伝いに来たよ!」


そう言うと父さんは嬉しそうに笑う。

「心強い!俺の子供たちはやっぱり最高だ!!」

そう言って父さんが右の敵に斬りこむ、左が隙だらけなのは俺に任せてくれているからだ。

俺も左側の敵に斬りこむ。


「ツネノリ、ざっと40体。さっさと蹴散らすぞ!」

「うん、父さんとなら頑張れるよ!!」

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