ツネノリの章④激闘・覚醒。
第55話 そんなに似ていないか?
目の前から50人のプレイヤーが迫ってくる。
皆思い思いの武器を装備して「ポイント…」「ポイントがいっぱいだ」「あれ全部倒せば俺達のランクどうなっちゃうんだ?」とニヤニヤしながら迫ってくる。
今気を付けるのは銃火器、弓、大砲使いだ。逆に接近してしまえば今度は近距離武器が危険になってくる。
千歳が拳を作って待ち構えている以上、俺が最初は盾を張ろう。
盾を張っていると、やはり銃使いが居たのか銃撃が飛んでくる。
流れ弾が200人の保護対象に当たらないかを心配する。
「千歳、そろそろ行くぞ。やれるか?」
「うん、いつでも」
そう言う千歳は震えている。
まだ怖いのだろう。
だが、それが外の世界での普通の感覚なのだ。
それなのに俺は傷心の妹を戦わせているダメな兄だ。
妹は、千歳は気丈にも戦うと言ってくれた。
昨晩のようにうなされたら優しくしてくれと言っていた。
頭くらい、いくらでも撫でよう。
肩くらい、いくらでも叩こう。
眠れるまでずっと抱きかかえていよう。
だからと言って戦わせていい道理はない。
やはり俺は最低な兄なのだろう。
それなのに千歳は俺を素敵な兄と言ってくれた。
ならば俺は、その声に応えてみせる!!
「【アーティファクト】!」
俺は盾をしまって剣を出す。
最も優先して殺すべき狙いは銃火器、弓矢、大砲使いだ。
俺は一人二人と斬り伏せながら目標を探す。
「わぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
後ろから千歳の声が聞こえる。
「千歳!?」
俺は一瞬振り向く。
千歳は駆けだして俺の前に居た男の腹部を思い切り殴っていた。
男はしばらく悶絶した後で動かなくなり、マキアの牢獄に送られていた。
「出来た!!やれるよツネノリ!!」
そう言った顔はキラキラとしていた。
「よし、圧倒しよう!!」
「うん」
そして俺達は200人から離れすぎずに敵を倒していく。
「ツネノリ、一旦下がろう」
「何?」
「全員を橋に入れて一気にツネノリの左腕で!」
「ああ、そういう事なら!!」
そして俺達はやや後退をする。
気をよくしたプレイヤーたちは嬉々として俺達に迫ってくる。
「【アーティファクト】!!」
俺のアーティファクト砲が前側半分を倒す。
残りの連中も「痺れた」「雷?」とか言っているのであっという間に千歳と倒してしまう。
「ツネノリ、それって雷なの?」
「ああ、雷の力を風の力で飛ばしている」
「へぇ」
そう言った千歳は復調したのか笑っていた。
息を整えながら父さんの方を見ると父さんはとっくに50人を倒していて次の50人と戦いを始めている。
息一つ切らせていない姿を俺は格好いいと思ってしまった。
「ツネノリ、試したいことが何個かあるの、付き合ってね」
突然千歳がそんな事を言い出す。
「試す?この状況でか?東さんの言葉を聞いていなかったのか?バトルスタイルをあまり変えるとだな?」
「大丈夫、私はまだスタイル何て確立していないんだから、自由なのが私のスタイルだよ」
そう言うと、橋の向こうが光り始めて次の50人がやってくる。
「まず1個目!!」
そう言って拳を解除した千歳が右手を前にする。
「イメージ、イメージ…ツネノリは雷を風の力で飛ばす。…私は光で光を…イメージ」
千歳?まさか…
「【アーティファクト】!」
千歳の声に合わせて右手から人の頭と同じかそれ以上の大きさの光の玉が物凄い勢いで発射されていく。
恐ろしいのは光の玉は当たっても減速しないでプレイヤーを軒並み吹き飛ばしていた事だった。
「あ…アーティファクト砲?」
「うん、ツネノリの戦い方を見ていたら出来そうな気がして…。でもこれ疲れる」
「いや、今も球が飛んでいるんじゃないか?戻さないと疲れるとか…」
「それか!ツネノリ頭いい!!」
そうして千歳は光の玉を収めると一息ついていた。
「休んでいろ、残りは俺が倒す」
俺が残りの15人くらいを倒す。
「今回はなかなかのペースだったんじゃない?」
「ああ、千歳のお陰だな」
「本当!やった!!」
千歳は嬉しそうに喜んでいる。
だが、いつ顔が曇るかわからないので俺は気が抜けない。
「あ、今お父さんを見ていたんだけど、お父さんの戦い方って凄くスマートなんだけど、ツネノリとも違う感じ。ツネノリってお父さんに教わったんじゃないの?」
「…俺は父さんの戦い方を見て学んだつもりになっているけど、そんなに似ていないか?」
「うん、何か動き方が違うの。何かねぇ…得意武器が違うような…んー、ごめん。うまく言えないや」
そう言って千歳が謝ってくる。
父さんは100人目もあっさりと倒していた。
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