第14話エルフの兄妹

木の先端を削っただけの粗末な槍を持った緑の小人ゴブリンが空美に襲いかかる。

単純な武器であったがそれでも殺傷力はかなりのものがある。

命中すれば致命傷は間違いないだろう。だが、そうはならない。

美穂が前にたち、弓を構える。

弦を目一杯ひきしぼり、矢を放つ。

矢は風を切り裂き、緑の小人の喉笛に突き刺さり、後方に吹き飛んだ。

すぐさま、弦を引き絞ると、どこからともなく次の矢が出現する。矢をつがえる度に若干の疲労が蓄積する。それは仕組みがわからないが、彼らの持つ武器が能力を発揮するために所有者の生命力を消費しているからだ。


固有特技ユニークスキル連射を使用し、美穂は次から次へと緑の小人に矢を命中させる。その度に緑の小人は絶命していく。


「くそったれ、きりがないぞ」

鬼包丁を縦横無尽に振るい、緑の小人を葬りながら文句をいう。

「ほんとに‼️」

同意しながらも零子は魔銃フェンリルの引き金を引く。乾いた銃声が森の中に鳴り響く。

零子もまた固有特技百発百中を使用し、的確に緑の小人を殺傷していく。


優雅に海斗は烏の杖をふる。

その姿は一流のアスリートのように一切の無駄がない。


その光景を見た竜馬はいったいこいつは何者なんだという疑問が頭をよぎった。

こんな正気をたもつのがやっとの世界でこいつは真っ先に対応している。

理由はわからないが、今はかなり頼りになる存在であるのはまちがいない。


空間がぐるぐると歪み、そこになにものかが出現した。

筋肉隆々たる男が出現した。

その男は真っ赤な皮膚をしており、全身に炎を身に纏っていた。

固有特技ユニークスキル召還を使用し、よびだしたのは炎の魔神イフリートであった。

こまかい炎を撒き散らしながら、イフリートは大きく息を吸い込んだ。肺いっぱいに吸い込んだ息を一気に緑の小人にむかって吐き出す。

轟音と爆炎をまきちらしながら、緑の小人を焼き尽くしていく。黒焦げの死体を大量生産したあと、イフリートは異世界に帰還した。

これでかなりの数が減らせたものの、敵はまだまだ戦意を失っていないようだ。


菊一文字の束に手をかけ、深く腰を落とす。

美穂は固有特技剣技流星を発動させる。

きらりと刃が煌めいたと思うと、すでに緑の小人の首をはね飛ばしていた。

すぐ横では獅子雄が豹の剣で緑の小人の胴体を真っ二つにしていた。

次の標的に狙いを定めていたところ、零子は敵の額に矢が深々と突き刺さるのを見た。

美穂がやったのかと零子は思ったがそうではなかった。

美穂は別の敵に抜刀術を発動させ、またもや首をはねていた。

続け様に矢が飛来し、緑の小人を絶命させいく。

それに春香も気づき、矢が来た方向をみる。

それは頭上高くからであった。

背の高い木の枝に何者かがいる。


革の鎧を身に付け、弓を手に持っている。

金色の髪に秀麗な容貌の者たちであった。

二人とも神々しいまでの美しさであった。

そして彼らの両耳は笹の葉のような形をしており、先端がとがっていた。


「す、すごい。あれってもしかしてエルフなの」

零子は嬉しそうに感嘆の声をもらす。


「助勢します。救世主の戦士たち」

エルフと思われるひとりがいった。

もうひとりが枝から飛びおりる。

枝に残った人物と顔立ちが良く似ているが、こちらの人物のほうが少しだけふっくらとしていて、優しげな風貌だ。

「私は森の一族の末裔アベルと申します。もうひとりは兄のカインと申します。ご助力いたします」

美しいその人物はそう名乗った。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る