第4話戦う術
視界が一瞬歪みそれが元通りになるとき、春香の目の前の光景が違ったものになっていた。
獅子雄のもつクレイモアの横に数字が書かれていた。
「なんだこれ」
呟くように春香は言う。
「あれは武器のレベルだよ」
ディスマは答える。
「RPGでよくあるだろう。あのレベルだよ。武器は経験をつめば成長させることができるよ。おっともうすぐ血界がきれる。君たちに付与した武器ならこここを簡単に突破できるよ。詳しい説明はベルゼブブの息子たちを駆逐してからだ。あとは勇気だけだよ、頑張ってね」
ディスマがそう言うとぴょんと春香の肩に飛び乗った。
「春香、どうした」
獅子雄がきく。
「どうやらもうすぐ血界がきれるみたいなんだ。ディスマが言うにはその武器で戦えって」
春香が答える。
「戦えって、おれのは中華包丁だぜ。こんなのでどうしろってんだ」
作業服の男が言う。
「おっと、俺の名は住吉竜馬。で、あんたらは?」
「僕は天王寺春香といいます」
「貝塚獅子雄、こいつの親友だ」
春香の細い肩に腕をまわし、獅子雄は名乗った。
「私は難波零子。見ての通りただのオタクだよ」
じろじろと自分が持つ白い銃を眺めながら言った。
「僕は岬海斗、こいつは妹の
顔を真っ赤にし、海斗の腕にしがみついていた空美はぺこりと頭をさげた。海斗の手には短い杖が握られていた。歩行用ではない。指揮棒より少しながいものだ。空美の胸元には大きなサファイアのペンダントがふらがっていた。
「あんたらカップルじゃなかったんだな」
竜馬が言った。
「ええ、僕たちは兄妹です。仲がよすぎてよく間違えられますが」
と海斗。
「私、弓なんてつかえないよ」
泣きながら女子高生が言った。
「ちょっとあんた、さっきからずっと泣きっぱなしじゃない」
友人の方の女子高生がたしなめる。
黒いボブカットが魅力的なかわいらしい学生だった。彼女の手には日本刀があった。
「しっかりしな、亜矢。私だって刀なんて使ったことないよ。あっ私は岸和田美穂、こっちの泣き虫は鶴橋亜矢っていいます」
黒い鞘の日本刀を抱きしめながら、美穂は言った。
「さあ、血界がきれるよ。みんながんばってね‼️」
叫ぶようにディスマが言うと赤い血界はうっすらとじわじわ消えていく。
完全に消えてなくなったとき、虫たちの襲撃が再開された。
津波のように数えきれない虫たちがその旺盛な食欲を満たすために襲いかかる。
「やってやるぜ‼️」
瞳を血走らせ、零子は引き金をひいた。
ダンダンダン。爆音が鳴り響く。
虫たちは簡単に吹き飛び、バラバラの死骸へと変化していく。
「あははっ。こいつは気持ちいいや」
狂声を零子はあげる。
クレイモアを力いっぱい左右に振ると虫たちは壁にぶち当たり動かなくなってしまった。
「こいつならいけるかもしれない」
じっとクレイモアの銀色の刃を見た。
親友が戦っている様子を見て、春香は疑問に思った。
「どうして、僕だげ武器をもってないんだ」
空の両手をまじまじと眺めながら春香は一人言う。
「それはね、君が王様になるからだよ、新しい世界のね。戦うのは戦士の役目。王様は彼らの上に立つものさ。だから、君だけに見えるものがあるんだよ」
ぺろりとディスマは春香の頬なめ、そう言うのだった。
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