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イタリアに来てから、秀徹の生活はより豪勢になった。相変わらず、亜美との関係は良好で同棲状態が続いている。
今年の秀徹の収入は2000万€ (約26億円)の年俸と、スポンサー料としてなんと2500万€ (約32億5000万円)を受け取っている。これで一躍スポーツ選手の長者番付でも上位に躍り出て、日本では頂点に立つことになった。
家は郊外にあるが、広い家を借りて住んでいる。イタリアの富豪の別荘地をそのまま借家として使ってるのだ。秀徹の要望であるサッカーが出来る家というのを叶えるとなると、自ずと郊外に住まざるを得なくなるのだが…。
彼のスポンサー料が増えたのには様々な理由がある。以前は、日本やアジアにおける影響力を利用したい企業、つまり日本やアジアの企業が彼のスポンサーに次ぐことが多かった。
しかし、昨季の活躍で彼の人気や知名度はワールドクラスとなった。それによってヨーロッパやアメリカなどの企業からも続々とオファーが届いたのだ。
今季の活躍次第では、契約打ち切りもありえるため、より活躍せねばならない。
だが、ユーヴェはあの後も中々サッキズムを体現させることが出来ずに苦しんだ。要因は様々ある。
一つはやはり中盤の不安定さ。今のユーヴェにはDMFとしてパスの受け渡しを担うピャナックと同じぐらい、スタミナが豊富で守備力の高いマトウディが欠かせない。ピャナックの守備力が低いからだ。
ただ、ユーヴェはサイドバック以外にサイドに選手を置いていないため、左右のCMFの選手がサイド攻撃の援護をせねばならない。
だが、そうなると中央が一気に脆弱になる。最近は、そんな風にサイドから中央へ折り返す攻撃をすれば崩せると分析されてしまい、苦戦している。チームは現在13試合で9勝2分2敗。クラブミラノに次ぐ2位にはつけている。
それにストライカーの得点力不足もかなり目立つ。セリエA13節終了時点で、
ローガン 11試合4ゴール1アシスト
秀徹 11試合6ゴール3アシスト
ディブラ 10試合4ゴール3アシスト
イグアレン 7試合2ゴール
とディブラ以外は期待に添えて応えられていない。秀徹は復調しつつあるのだが、ローガンに関しては彼を最も信頼している秀徹ですら、少し心配になるほどだ。パフォーマンスの質が低下しているとは全く思わないが、点が決めれなければストライカーは評価されない。
ネットや新聞では猛バッシングを受け、ローガンは年俸の無駄だとか彼の時代は終わりとまで酷評された。事あるごとに比較されるメーシュは怪我の影響もあって復帰に時間がかかったが、それでもすでに6試合4ゴール3アシストの結果を残している。
当のローガンは試合の後は悔しがりながらも、焦っている様子はない。そこだけが秀徹としては安心できる点ではあるが、今から評価を覆すのは難しそうだ。
今年のセリエAは、ローマ・ラツィオとアタランタが非常に強い。
ラツィオは大黒柱のCFインモーズレをカウンターターゲットとしたカウンターを得意としており、今季はすでに12ゴールを彼だけで挙げている。とんでもない得点力である。
アタランタは守備があまり強くないので、勝ち点の取り残しは多いものの、得点力がずば抜けており、クラブとしての総得点がクラブミラノが25点、ユーヴェが22点、ラツィオが28点なのに対して、アタランタは34点。驚異的な数値である。
こう見るとやはりユーヴェの得点力の低さがわかるのだが、ここからローガンの逆襲が始まるのだった。
代表ウィークが明けたリーグ第14節、ローガンの力が大爆発した。相手は勢いに乗るアタランタ。
守備は堅固だが、明らかな脆弱性があるユーヴェは彼らを当然のように警戒した。まずは立ち上がりの前半7分。
アタランタの攻撃を凌いだユーヴェは、ボネッチから一気に前線へと長いパスを供給する。それをアタッキングサードのやや左の位置で拾ったローガンが、攻撃を仕掛ける。
カウンターだったので相手の守備陣も手薄で、3人しかついてこれていない。さらに秀徹が並走しているため、それへのマークが必要なため、実質2人しかローガンへと対応できない。
ローガンがペナルティエリアに踏み入れると、内側からカットインさせまいと寄せて来たDFがローガンへとプレッシャーをかけてくる。彼をペナルティエリアで好き勝手やらせるべきではないからだ。
そこで、ローガンはそのままのスピードを活かしたエッジターンで、左から右へとボールを動かし、相手に隙が出来たのを見て左から対角へと縦回転のシュートを打った。
いわゆるドロップシュートと呼ばれるそのシュートは、GKにとって予測がしづらい。今回も、ローガンのシュートをGKが抑えることはできず、ゴールへと吸い込まれていった。
後半10分にも、コーナーからヘディングでゴールを奪ってローガンはこの日2点を獲得。秀徹も1ゴールを記録し、3-0の圧勝に貢献した。
そこからローガンの逆襲が幕開けし、シーズン折返しの19節が終了するまでに5試合で7得点をあげており、破竹の勢いを保っていた。しかも、彼の凄さはその継続性にもある。この5試合では連続でゴールを決めており、1試合で荒稼ぎしているということはないのだ。
とはいえ、ローガンはまだ16試合11ゴール2アシストと期待に完全に応える記録は出せていない。さらなる活躍に期待が集まる。
ちなみに秀徹は、最終的に17試合10ゴール6アシストと及第点ぎりぎりといった感じのプレーをしている。
実は、彼は今季、再びドリブラーへと戻った。
プロ初年度は261回のドリブルを仕掛け、195回を成功させるという類まれなるドリブラーとしての記録を叩き出した。
ミランでは、仕掛ける回数は165回、成功数は128回と成功率を微増させつつも総回数自体は減り、フィニッシャーとしての役割を担うようになっていた。
レッズでは最初のシーズンは211回の仕掛けと165回の成功数を誇ったが、2年目は完全にフィニッシャーへと変貌。125回の仕掛けと97回の成功にとどまっていた。ちなみに、成功率は誰よりも高い。
ただ、今季はシュトゥットガルト並とまではいかないが、それに近いペースでドリブルを仕掛けている。すでに半分のシーズンで101回の仕掛けをしており、76回の成功を収めている。
ポゼッションサッカーをするには、ボールをキープして味方が動いたり、相手が位置取りのミスをするのを待たねばならない。なので自ずとドリブル回数も多くなるのだ。
ただ、シーズン後半ではよりゴールにつながる動きを多くしたり、どういういまだ定まらない秀徹の役割を明確にする必要がある。課題は山積みだ。
〜〜〜〜〜
12月。今年も世界最優秀選手賞の授与式が開催された。今年の受賞者の目星はだいたいついている。
ラ・リーガの優勝者で昨季50試合51ゴール22アシストを記録したメーシュか、レッズの最強CBデークか、あるいはレッズをプレミア・リーグとチャンピオンズリーグの二冠に導いて48試合59ゴール12アシストを記録した高橋秀徹か。
この三人のうちの誰かが獲る可能性が極めて高かった。
今年のノミネートメンバーにはレッズのアリオン、デーク、マニャ、サリーなどが含まれており、久々の再開を果たした。
レッズは今年、得点力は秀徹の退団で低下したものの、守備力が向上。リーグでは無敗という圧倒的な実力を誇っている。
退団式を盛大に開いたぐらいなので、レッズとはかなり友好的な別れ方ができた。レッズのメンバーも彼に対しては悪い感情を持っておらず、今でもアレキサンダーやマニャとは連絡を取り合うほど仲が良い。
さて、ついに授与式が開催され、会場に緊張が走る。ちなみにローガンは受賞の見込みがなかったので、今回は欠席したようだ。
3位までの発表が終わって順位は、4位ローガン、5位マニャ、6位サリー、7位ナバッペという並びとなった。
ここからが勝負である。
「3位、597ptでフィルジル・ファン・デーク!!」
3位として呼ばれたのはデークだった。このptの入れられ方からわかるように、今年は票がメーシュ、秀徹、デークに集中したのだ。そして、2位は、
「741ptでレオ・メーシュ!」
となった。ということは…、
「映えある第1位は、978ptでシュウト・タカハシ!」
ということになる。秀徹は思わずガッツポーズをし、同時に涙を流す。
思い返せば昨季の彼は神がかっていた。ただ、これが人生の最高潮になってはいけないし、そうしないための努力が必要だろう。
日本人として初、そしてアジア人としても初の世界最優秀選手賞の2019年度受賞者についに秀徹はなった。
高橋秀徹
所属 ユヴェ・トリノ
市場価値:2億7000万€
今シーズンの成績:16試合、10ゴール、6アシスト
総合成績:170試合、150ゴール、61アシスト
代表成績:24試合、18ゴール、8アシスト
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