上々ではない滑り出し

2019-20シーズンの夏の移籍市場での大きな動きは、秀徹、リヒトの移籍以外にも色々ある。

まずはコウケーニョのミュンヘンへのレンタル移籍だろう。コウケーニョの1年半でのバルサシティでの記録はおよそ、70試合20ゴール15アシストで悪くないが、1億5000万€を注ぎ込んだ選手の成績としては落第点だろう。ミュンヘンで再び調子を上げてほしいものだ。

ちなみに、バルサシティはコウケーニョの穴を埋めるためにアスレチックマドリードのエース、グレーズマンを獲得した。


また、クラブマドリードはローガン移籍後に低迷しまくったチームを立て直すため、1億€でハザードを獲得。ローガンの穴埋めがハザードに出来るとは傍目から見ても全く思えないが、推進力は負けず劣らず高いが得点力は全く敵わないだろう。

とはいえ、マドリードは新たなクオリティを手に入れたわけだから、前進したことには間違いない。

日本人だと、秀徹とも仲の良い久木選手が、バルサシティとクラブマドリード間で行われた争奪戦を制したクラブマドリードに移籍。今季はFCマジョルカにレンタル移籍しており、活躍が期待されている。



〜〜〜〜〜



やっと始まった2019-20シーズン。ユーヴェのファンたちは、期待を込めた歓声を送るが、ユーヴェの選手たちの顔は暗い。

本当にサッキズムは機能するのかが非常に不安要素として残っている。それに、サッキはヘビースモーカー過ぎて肺炎になってしまい、一週間ほど前から練習に参加できず、最終調整が間に合っていない。不安である。


ユーヴェは近年は両サイドバックの攻撃参加と、クロスからの得点を武器に戦ってきた。ただ、今日の4-3-3のポジションでは、LWGに入るローガンしか空中戦に向いていない。RWGのディブラとCFの秀徹はお世辞にも身長が高いとは言えないからだ。

サッキズムの定着が不十分な今、最悪は美しくも何ともないが、追い込まれたらクロスゲーに持ち込もうとしていたユーヴェの選手たちの希望は見事に打ち砕かれた。



他のリーグよりも遅めに開幕するセリエAの開幕戦もいよいよキックオフ。ユーヴェのホームであるユヴェ・スタジアムも盛り上がっている。

DMFにはピャナック、CMFにはマトウディ、ケデルがそれぞれ無難に配置されており、RSBがダネーロになったことと秀徹がCFとして入っていること以外、去年と変わらない布陣だ。


最初にチャンスシーンを作ったのはユーヴェだった。前半12分に秀徹が相手のDFをドリブルで引きつけている内に、ローガンは左サイドから中央へと寄せて裏抜けを狙う。

それに気付いた秀徹は、相手を秀徹に釘付けにすると右から助けに来たディブラにパス。ディブラは、ワンタッチで左へとスルーパスを出してローガンは飛び出していく。



ともに練習したからこそ確信を持って言えるが、ローガンはやはりすごい。足元の技術が圧倒的でシュートの技術が秀徹が見てきた中で最も高い。さらに、34歳という年齢が嘘なのではないかと思うほどスピードやスタミナを含めたフィジカル面も衰えを感じない。

秀徹、コストの次に足は速いし、スタミナもマトウディ、秀徹、ベントンクールの次に豊富だ。


故に、今回のように飛び出す際にも非常に速いスプリントでボールに合流する。相手DFがすぐに二人でプレスをかけてきたので、シュートを打つ選択をした。シュートは惜しくもポストの横をかすめることになったが、彼のスピードには脱帽するばかりだ。


そんなチャンスを序盤に作ったユーヴェだが、そこからは押し込まれる展開が連続した。マトウディこそ対人守備力に優れるものの、レッズで言うところのフェベーニョやミレナーのようなパスコースをカットする役割を上手く果たせる選手がこのフォーメーションの中盤にはいない。

ベントンクールや冷遇されているキャンという選手ならばその能力を持っているのだが…。


そして、攻撃面でも苦戦を強いられている。ケデルとマトウディは攻撃ができるとは言え、ボックスに侵入して攻撃の補助ができるというだけであって、FWとボランチの間に立ってチャンスメークする技術や視野は持ってない。


結局、ユーヴェは前半にこれ以上のチャンスを作ることなく、ハーフタイムを迎えた。



さて、正式な監督不在のまま行われたこの試合。アシスタントの助監督が指揮しているものの、サッキの戦術を完璧に理解しているわけではないから、この試合における最適解は自分たちで見つけないといけない。

ローガンやディブラと秀徹はどうすべきかを話し合っていた。


「俺はこの状況はFWとCMFとのつなぎが必要だから、OMFに俺がなるのが良いと思う。」


ディブラはそう提案する。つまりは擬似的に4-3-1-2の形を作り出そうということだ。ディブラはメーシュ二世と言われるだけあって、ドリブル、パスの技術が優れており、チャンスメーカーとしてはセリエAで間違いなくNo.1だ。

彼に任せておけば、FWとCMFの隙間は上手く埋めてくれるだろう。


「わかった。じゃあ俺が左に、シュウトは右のCFに入ることにしようか。」


ローガンがそういった結論を出し、後半を戦うことになった。



後半は劇的に試合展開が変わった。今まではピャナックが中央からサイドへとパスを散らすことで攻撃を組み立てていたが、勝手に4-3-1-2のフォーメーションにしたことで中央から中央の縦関係が構築された。

なので、より素早くパスが通るようになったし、ディブラが味方を活かすチャンスメークをしてくれるので、ペナルティエリアに侵入する回数も増えた。


何よりも、前線へ繋げた時の攻撃力は異次元だ。世界で三指に入るアタッカーが二人揃ってCFに配置され、中央をえぐるのだ。

後半7分、カウンターの場面でディブラのパスを受けた秀徹が右サイドへと開いてドリブルし、サイドを突破。そして敵を引きつけたところで中央へと折り返し、相手がマークに付ききれないほどのスプリントで寄せたローガンがシュート。先制点を叩き込んだ。


また、後半40分にもチャンスを作った。ユーヴェの前線が上がりきった状態でピャナックがロングフィードをローガンへと通し、ペナルティエリア近くでローガンがヘディングでそれを秀徹に落とした。

拾った秀徹がダイレクトで強烈なミドルシュートを放ち、最終的に2-0で危ういながらも試合を制した。



セリエAが難しいのもあるが、マンチェスター・ユニオンやクラブマドリードよりもローガンが苦戦しているのは、ユーヴェのサッカーのシステムが独特なのもあるのだと秀徹は改めて確認した。

今回の試合は、持ち堪えた守備陣とディブラ、秀徹、ローガンの前線での奮戦のおかげで辛勝したと言える。ここに不在のサッキの戦術は機能したとは言えなかった。


サッキは数日後に復帰する予定ではあるが、じゃあサッキが復帰すれば改善するようなものなのかと言われれば疑問符がつく。

ローガンと秀徹は毎日二人きりで残って練習しているため、連携力は高まっているのは朗報だが、それだけで勝てるほどサッカーは簡単ではない。どうにかして攻撃戦術を完成させなければいけないだろう。

セリエAの初戦の3日後、サッキは職場に復帰。再起が図られることになるが、ユーヴェがここから歩むのは茨の道であった。



高橋秀徹


所属 ユヴェ・トリノ

市場価値:2億7000万€

今シーズンの成績:1試合、1ゴール、1アシスト

総合成績:155試合、140ゴール、56アシスト

代表成績:22試合、17ゴール、8アシスト

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