ユヴェ・トリノへ
今年のユヴェ・トリノは恐らく、世界で一番熱心な補強をしたチームになるだろう。大幅に戦力が増強された。
まず、監督にはここまでユーヴェをリーグで5連覇させた名将・アッリグレを解任し、ロンドン・ブルーズで監督を務めていたサッキを招聘した。
ユーヴェはフリーで選手を獲得するのが非常にうまいチームだ。これまでも、ポルバやアルデスなどの名手をフリーで獲得してきた。
今年も、パリシティからCMFのラベオ、アーセナムからCMFのラルジーをそれぞれ獲得した。それぞれ、世界最高峰とまではいかないまでも、強豪チームでレギュラーになれる実力の持ち主。中盤の良い補強になりそうだ。また、レンタルに出していたイグアレンもレンタルバックしてきており、これも補強と言えるだろう。
そして、なんと言っても補強の目玉となったのは、世界で最も注目されている二人の大物若手の獲得である。アムステルダムから19歳のCBデ・リヒトを8000万€で獲得。さらに、去年48試合で59ゴールを決める圧倒的な成績を残した高橋秀徹を1億8000万€で獲得した。
リヒトは以前からユーヴェと相思相愛という報道もされており世間は驚くというよりも納得したといった様子だったが、秀徹の移籍は流石に驚くべきものだった。
そんなユーヴェの戦力はどんな雑誌や新聞でも軒並み高評価されており、ローガンと秀徹とディブラという三人のワールドクラスのアタッカーを揃えるユーヴェにファンは期待していた。
以下、主要メンバー表。数値は背番号と昨年までの評価能力値。 (あくまで評価値)
1 GK 能力値86
シュチェス:ポーランドの長身GK。アーセナムやローマなどでも活躍。ブットンの後継者として昨季はゴールを守った。今季も頼れる守護神。
77 GK 能力値84
ブットン:ユーヴェの伝説的GK。21世紀最高のGKとして名前が第一に挙がる選手であり、40歳を超えて年齢的な衰えが見られるものの、昨季はパリシティで守護神として活躍した。今年はユーヴェに再び戻ってきており、チームのシンボルとしてユーヴェのチャンピオンズリーグ優勝を目指す。
3 CB 能力値89
キエルーニ:ユーヴェのディフェンスを支え続けるバンディエラ。危機管理能力と、圧倒的なボール奪取能力でユーヴェの守備を牽引する。もう35歳ということで、スピードなどは衰えている。
19 CB 能力値86
ボネッチ:素晴らしいロングフィードを持つ左利きのCB。昨季はユーヴェと喧嘩してミランに移籍していたが、なぜか今年戻ってきた。ミランでは低調なパフォーマンスに終始していたが、その前年のユーヴェで見せた世界一とも称えられるパフォーマンスを見せれればデークをも超えるかもしれない。キエルーニと顔も髪型も似ている。
4 CB 能力値87
デ・リヒト:秀徹と対を成すとまで言われるアムステルダムのDF。キャプテンも務めており、19歳という若さを感じさせない冷静さも魅力の一つ。引いて守るなら彼以上に上手いCBはあまりいない。
23 CB 能力値80
デメルル:今季加入した21歳の新人CB。ディフェンスセンスが高く、潜在能力の高さを窺わせるプレーが多い。キエルーニ、ボネッチとともに坊主である。
13 RSB 能力値81
ダネーロ:今年ブルーズから移籍したRSB。クラブマドリード時代は期待されていたが、あまり成長せず色々なクラブを転々としている。潜在能力が高いのは間違いないが、今季はこれを開花できるかが焦点となる。27歳にしては老け顔。
12 LSB 能力値86
サンドラ:ブラジル人。巧みなドリブルと正確なクロスでユーヴェのLSBといえばこの人、とばかりに定置している。ディフェンス能力は高くないものの、マルセルほど無茶な攻撃や守備をしない。つまり少し良い意味でも悪い意味でもおとなしいマルセルのような選手。
5 DMF 能力値88
ピャナック:パス精度が高く、フリーキックやコーナーキックのキッカーとして世界的にも有数の実力を誇る。守備能力は高くないが、ゲームメーカーとして活躍する。
14 DMF 能力値85
マトウディ:ディフェンス能力が高いMFで、攻撃参加も出来る。昨季は守備はあまりしないローガンのスペースをもカバーする守備力とスタミナを見せ、再び評価を上げた。LSBまで出来るユーティリティープレーヤー。
8 CMF 能力値85
ラルジー:アーセナムの攻撃を支え続けたCMF。パス、ドリブル、シュートの全てを高水準でこなし、攻撃のクオリティを高める。現在大怪我のため離脱している。
25 CMF 能力値83
ラベオ:パリシティでは厄介な母親のために虐げられていたが、ユーヴェで復活を目指す。守備能力が高く、パスも上手い。大柄でフィジカルも強いため、ポルバなようなゲームの携わり方を期待されている。
6 CMF 能力値83
ケデル:攻撃も守備も何でもござれなCMFの選手。MFとしては抜け出すのも上手いし、守備もかなり上手い。ただ、鈍足でテクニックなどはあまりないのがネック。サイドバックも出来る。顔がナスっぽい。
30 CMF 能力値82
ベントンクール:ウルグアイ代表で、攻守ともに高性能。昨季は急激な成長を見せ、ユーヴェの新たなCMFとして定着。老化が進むユーヴェの中で、秀徹やリヒトととに若手のホープとなれるか。
10 OMF 能力値88
ディブラ:ドリブルやパスも巧みで、決定力もある、メーシュの後継者と目されているアルゼンチンの宝石。昨季はローガンとの共存が難しく、結果が出せなかったが今年は共存を目指す。めっちゃイケメン。
9 LWG 能力値93
高橋秀徹:今年は背番号9を与えられ、ユーヴェのチャンピオンズリーグ優勝を導く切り札として期待されている。すでにワールドクラスのアタッカーとして評価されており、スピード・テクニック・決定力を全て兼ね備える選手。
11 LWG 能力値86
ドクラス・コスト:俊敏なサイドアタッカー。左利きで決定力は低いものの、セリエA屈指の突破力を誇り、クロス精度も高い。
33 RWG 能力値84
ベルナルド:スピードはそれほどないものの、巧みなテクニックでサイドをえぐるサイドアタッカー。OMFなどもこなすことができ、クロスを含めたパス精度も高い。この人もイケメン。
7 CF 能力値93
クリストファー・ローガン:34歳という年齢を感じさせないプレーで昨季はアスレチックマドリードにハットトリックを決めた。セリエAではMVPに輝いており、今季こそはチャンピオンズリーグのタイトルを狙う。クラブマドリードにおける伝説的なFW。
21 CF 能力値85
イグアレン:セリエAの歴代最多得点の36ゴールの記録を保持するCF。最近は衰えが見られるものの、今季はその36ゴールを記録した際に指導していた恩師のサッキの元で再起を図る。この人も坊主。
〜〜〜〜〜
リヒトやデメルル、ラベオ、ラルジーらとともに開かれた入団セレモニーは過去最大の規模とファンの動員数を叩き出した。特に新人選手たちを交えて行われた20分ハーフの紅白戦は非常に盛り上がった。
セレモニーの後日、初の練習が行われ、食堂でローガンとともに食事を摂る。
「いやあ、君が来てくれて嬉しいよ。君は間違いなく今後のサッカー界を引っ張る存在になる。期待しているよ。」
改めてローガンにそう言われて秀徹は少し照れながら、
「いや、そんな…。ありがとうございます!僕も歴代最高の選手とともにプレー出来て嬉しいです。」
と言い、手に持っていたコーラを飲み干す。すると、それを見たローガンは、
「なあ、お前は最高の選手を目指してるか?」
と訊いてくる。
「はい、もちろんです。なれるかはわかりませんけど、それに近づけるように努力はしているつもりです。」
秀徹はそう答えた。実際、ローガンも努力の化身みたいな選手だが、秀徹も引けを取らない。休日があっても練習は怠らず、通常の練習も当然のように居残って練習している。だが、二人の努力には決定的な違いがあった。
「だったら、食事や睡眠などの日常的な生活にも気を付けろ。例えば、お前の飲んだ今のコーラ一本には俺が一日で摂取する糖分が含まれているし、俺の普段の一週間分の食事の添加物が含まれてる。
俺たちはスポーツ選手だ。普通に過ごすならコーラだって好きに飲めばいいが、体が資本の俺たちは飲むべきじゃない。スポーツドリンクにしておいた方がいいよ。」
ローガンは若き日にマンチェスターユニオンで恩師となったファギーという監督に、健康管理法を徹底的に叩き込まれた。それが功を奏して34歳の今でも、普通の20代の選手と変わらない運動量とスピードが出せるのだ。
「わ、わかりました。今度、健康管理法を教えてもらってもいいですか?」
秀徹が神妙な顔でローガンに訊くと、ローガンもにこにこしながらそれを了承した。
例えばブラジルには元祖とも言われるローガンという選手がいた。2000年代に活躍した選手だ。彼はバルサシティやクラブミラノでフェノメノと呼ばれるほどの活躍を見せた。が、健康管理が悪かったのが祟って徐々に肥満化していき、その後も活躍はしたものの、一般に全盛期とされているのは20〜23歳までの間。
そうやって選手生命を自ら短くするような選手も少なくない。クリストファー・ローガンは秀徹をそうさせたくはなかった。
さて、ユーヴェのチームとしてはサッキの難解なサッキズムへの適応に追われていた。サッキは何があろうとも、自身のプレースタイルを変えようとはしない。その代わり、どんなチームでも結果を残してきた。
去年指揮したロンドン・ブルーズでも、1位と2位のレッズとブルーズが化け物じみていただけで、決して悪くない3位でのフィニッシュをしているし、ヨーロッパマスターズカップでも優勝している。
ただ、ユーヴェというのは非常に独特なシステムを持ったチームだ。基本的には最終ラインが高くてアグレッシブなプレスをかけるポゼッションを好むチームだ。
しかし、今それを上手くやれる選手が揃っているかというと微妙だ。簡単に言えば、サッキズムはそれにパスの中継地点を明確に定めて、より円滑にパス交換させる戦術である。
基本的に中継地点はDMFの選手とCFの選手になるのだが、ユーヴェにはそれを行えるような選手がいない。ピャナックはパスも上手いしDMFではあるが、ディフェンス能力に不安が残る。
サッキは今のところ従来の4-3-3と4-3-1-2の形を使い分けようとしているが、どちらにせよ中継地点になる選手に守備の負担が重くのしかかるのは事実だ。そうなった時にピャナックが機能するのかについては疑問が残る。
また、CFの偽9番をさせる選手の人選も難しい。秀徹はその役割を果たせるのだが、それを専門にやらせると秀徹の持ち味であるドリブルやシュートでチームに貢献しにくくなる。
(どうしたものだろうか…。)
サッキは頭を悩ませている。彼に白羽の矢が立ったのも、ユーヴェが弱いからだ。
リーグで9連覇しているユーヴェが弱いわけ無いだろうと思う方も多いだろうが、ユーヴェは1試合ずつを見ていくと実は弱いのだ。
去年はユーヴェは2位に勝ち点差10点以上をつけて優勝した。圧倒的と言っても過言ではない。しかし、一つ一つの試合は危ういものが多い。特に、攻撃の形を個の力に頼りがちなのが危うさに拍車をかけている。去年は圧倒的な勝ち点を獲得して優勝したのに、クラブの得点ランキングでは3位に落ちることからもそれは見て取れる。
去年のユーヴェは3点差をつける試合はほぼなく、あって2点差だった。また、半分ぐらいの試合では1点差での勝利であり、こういう綱渡りのような試合を続けるのにも限界があった。
アッリグレは勝ち方にこだわらない監督だったため、守備を堅固にして競り勝つサッカーを途中からは意図的に行っていたが、ユーヴェファン及び、クラブの上層部は満足しない。サッキズムはハマれば点も取れるし、美しいサッカーが展開できる。故の招聘だった。
しかし、適応にはまだまだ時間がかかりそうだし、誰を使うかもサッキは明確にしていない。そんな中で、セリエAの第1節を迎えることになった。
高橋秀徹
所属 ユヴェ・トリノ
市場価値:2億7000万€
今シーズンの成績:0試合、0ゴール、0アシスト
総合成績:154試合、139ゴール、55アシスト
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