覚醒

リーグ戦8試合、チャンピオンズリーグのグループステージ3試合が終了した。

レッズはここまで全勝という偉業を達成した。凄まじい記録である。グループステージで同じグループとなった強豪にナポリがいたが、3-0と完勝。圧倒的な強さを見せつけた。


その攻撃の核となっているのが、他ならぬ秀徹である。彼はCF、RWG、LWGを全てこなせるので、サリーやマニャやフェルノーネを休ませる中でもいずれかのポジションとして出場。11試合中10試合でピッチに立った。

リーグ戦では7試合で9ゴール1アシストを記録。アシスト数は普段よりも減ったが、その分ゴールを量産。ドリブラーから、よりフィニッシャーに近いプレイヤーとなった。

チャンピオンズリーグでは3試合で3ゴール1アシストを記録。合計で10試合12ゴール2アシストとなり、秀徹史上最高のゴール率だ。

プレミア・リーグではぶっちぎりで得点ランキングのトップをひた走り、チャンピオンズリーグでも1位タイとなっている。このままコンスタントにゴールを決め続ければ、ゴールデンシュー (欧州得点王)も射程圏内に入るほどの記録だ。



さて、次戦の相手はロンドンブルーズだ。今季はナポリの監督であったサッキ監督を引き抜いて、監督に据えた。

サッキは以前も紹介したサッキズムを機能させるために、ナポリでDMFとしてサッキズムを支えていたジョルジェーニョを獲得。CMFにはドリブラーのコブチッチを補強した。


ロンドンブルーズは元々カウンターが持ち味のチームである。そこへポゼッションを前提とするサッキを監督に招聘するというのはかなり大胆だ。はっきり言って、失敗する公算が高い。

今のところ、ブルーズはリーグ3位につけており、ヨーロッパマスターズリーグも着々と勝ち進んでいるので悪くない出だしだが、今はまだ個の力で勝っている感じであり、ここからサッキズムが浸透するかどうかが勝負になる。

秀徹とともに、クラブマドリードが狙っていたドリブラーのハザードは今季は残留することになった。故に去年以上に手強いメンツが揃っている。


対するレッズは、トリプルSの面々をFWに配置し、万全の体勢でこのブルーズ戦に臨む。

キックオフ後、レッズはアン・スタジアムの声援を味方に、まずは中央突破を仕掛けた。

コンパクトにまとまってハイスピードで攻撃できるのは、この三人だけだ。フェルノーネや他のバックアッパーも上手い選手たちだが、やはり彼ら三人は格が違う。フィジカル、テクニック、得点力、スピードの全てがバランス良く整っている。だからこそ、もし一人でも欠ければこのスピード感は出せないだろう。


また、今季はサイドバックのロバート、アレキサンダーからのアシストが熱い。FWの三人衆が中央にまとまったことで、サイドから中央へのクロスや、前線へのロングフィードがより効果的となった。

サリーやマニャらが中央に寄せたことで空いたサイドにはCMFの選手が走り込むようになったので、サイドの攻撃力も大きく落ちてはいない。偏(ひとえ)にこれは中央で安定感あるディフェンスのできるファベーニョが加入したおかげである。


とはいえ、強大なトリプルSの攻撃力にも、ロンドンブルーズは一切怯まずに向かっていった。中央の守りはかなり堅い。

さらに、最強の中盤・カンチが自身のゾーンに入った相手を一網打尽にする。彼は底なしのスタミナと強靭なフィジカルを持ち、秀徹より小柄にも関わらず、190cmの選手にも競り勝ってしまう。厄介この上ない選手だ。

彼は特定の選手をマークせず、自身のエリアを決めておき、そこに入った敵を全てなぎ倒していく。ボール奪取能力が高く、秀徹もマニャもサリーも彼の手にかかればボール奪取も可能だった。


レッズは中央突破を、ブルーズは美しいポゼッションサッカーをそれぞれしようと試みたが、両者ともに失敗。前線は膠着し、前半は両者ノーゴールのまま折り返すこととなった。



後半戦、秀徹は中央突破とともに右サイドからの攻撃の可能性を模索した。レッズ側から見た左サイドにはアスペロクエタというディフェンス能力の高いサイドバックがいる。そちらは崩しにくい。

しかし、右サイドはディフェンスがあまり堅固ではなく、崩せる可能性もありそうだった。中央から右へとパスを出すようにして、右に展開するCMFのケイトやアレキサンダーからのクロスでの得点を狙った。


新たに加入したケイトは、足元の技術が高く、スピードのある選手で、あまりレッズにはいないタイプのCMFだ。アレキサンダーとの連携は早くもばっちりである。

後半3分、秀徹からケイトへパスが流れ、ケイトが足を出した相手を軽くかわして時間を作り、右サイドに走るアレキサンダーへとボールが渡った。


今季はすでに5アシストを記録するアレキサンダーは、得意のクロスでニアに待ち構えるマニャの頭を狙う。クロスはピンポイントに狙いが定められており、マニャはそのままヘディング。

が、残念ながら上手く決まらず、頭をかすってボールはファーの方へ飛んでいった。かなり決定的な場面だったので、ブルーズのディフェンス陣もシュートが外れたのには一安心した。


のも束の間、ファーサイドに控えていた秀徹が、胸でそれをトラップしてから強烈な縦回転を入れたシュートをぶっ放し、ゴールを狙った。ペナルティエリア内は選手が密集していたものの、その間をぬうようなシュートであり、GKのキパも反応できない。

左から打たれたそのシュートは、右のサイドネットに突き刺さり、待望の先制点をもぎ取れた。



ただ、ブルーズも黙っちゃいない。得点が取られたにも関わらず、リスタート後には攻めの姿勢を見せた。ベルギー代表として、日本を苦しめたハザードも左サイドから攻撃を組み立てる。

彼はリーグ8試合で、6ゴール4アシストと圧倒的な記録を残している。恐らく、来季に移籍することになるだろうから、ブルーズへの置き土産のつもりなのだろう。CMFで、ドリブラーのコブチッチとの連携もかなり素晴らしい。


相手はCFにジレーを配置している。このジレーは、長身でヘディングシュートによる得点力が凄まじい典型的なCFで、右サイドのウィリアムやハザードからのクロスで得点を狙っている。こちらにも守備職人のデークはいるが、その辺りは注意せねばならない。

このようなプレースタイルは本来のサッキズムとはまるで違うのだが、未だサッキズムは確立できていない。こういうサッカーをするしかないのだろう。



それでも、この攻撃をするためにカンチやジョルジェーニョも前線へと顔を出している。カンチは今季、DMFから少し高い位置のCMFにポジションチェンジさせられたのだが、意外にも攻撃性能は高くチームにとって欠かせない存在となっている。

裏を返せば、ディフェンスのみに集中することができなくなったということなのだが。


デークは仕掛けてきたコブチッチからボールを奪い取ると、アレキサンダーへとパスを渡し、アレキサンダーは前線の秀徹へと一直線にグラウンダーのパスを出す。サリーとマニャは、相手のサイドバックの監視のために少々下がっているので、速攻をかけるなら秀徹が単独で行うことになる。もたもたしてたらカンチが帰ってきてしまう。やるしかないだろう。


秀徹の現在地はハーフラインの左側。最初に対面するのは、戦術のように守備力の高いアスペロクエタだ。トントンとリズムを刻んで、秀徹はドリブル突破を仕掛ける。

守備力の高いアスペロクエタは、なるべく時間稼ぎをしようと、後ろに少しずつ下がりながら足を出さずにボールを待った。

彼が横歩きするように後ろに下がるのを見て、秀徹は彼が後ろに下がるタイミングで接近すれば、バランスも崩れるだろうし足も出されにくいと考え、それを実行した。


アスペロクエタが下がる度に秀徹はアスペロクエタが取れそうな位置にボールを置き、安定すると引っ込める。それを3度繰り返した後、アスペロクエタはついに足を出す。かなり甘い位置にボールがあったからだ。

しかし、ドリブルする側も取られる位置にあえてボールを置いている場合はすぐに動ける。

クイッと足首を動かしてボールの位置を左へとずらし、左足で蹴り出して、アスペロクエタを抜き去った。


相手のCBの一人はそれを見て秀徹へと間髪入れずにプレッシングしたが、秀徹は難なくかわし、最後のCBと対面する。位置はキーパーの正面で、ペナルティエリアの線上ぐらい。このような場合ならば、相手のCBはずらせさえすればシュートを打てる。


左足で一度シザースしてから右へとボールを動かし、ゴール右側へとシュートを打ち込んだ。縦回転を帯び、低空飛行を続けたこのシュートは、ゴールライン前でバウンドし、キパの手はそれに追いつけず、ネットを揺らすことになった。



最終的に、この試合は2-0で終了。今季の秀徹のゴール数は14ゴールにも及んでいる。それなりのストライカーが1シーズンにあげる得点をシーズンの4分の1が終わった時点で決めてしまった。それも19歳にして。はっきり言ってバケモノじみている。

だが、まだまだこの勢いが止まることはなかった。



高橋秀徹


所属 リヴァプール・レッズ

市場価値:2億3000万€

今シーズンの成績:11試合、14ゴール、2アシスト

総合成績:117試合、94ゴール、45アシスト

代表成績:12試合、10ゴール、3アシスト

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