僕と俺のねじれトライアングル~お互いの攻略可能ヒロインが、それぞれ逆グループに所属しているせいで、中々女の子からの好意に気づけないまま、どんどんと拗れていく青春ラブコメ~
第4章 完成してしまったねじれトライアングル×2④
第4章 完成してしまったねじれトライアングル×2④
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や、やややらかしたぁあああああああああああ!?
ふと、正気に戻った時、目の前にいたのは、そりゃもう不服といわんばかりに眉を吊り上げた、お冠状態の蓮条さんだった。
オタク嫌いで有名な蓮条さんの目の前で、これでもかとクレハの魅力を語ったんだ。そりゃあこうなちゃうよね。とほほ、衝動に身を任せて何やってんだよ僕……。
後悔時既に遅し。僕はどうやってこのピンチを乗り切れば……。
ハンカチを返して欲しくて、昨日からずっと蓮条さんと話す機会を窺っていた僕。ただ、蓮条さんは基本的に複数人のグループの輪の中にいるため、中々に話しかけづらかった。それも、クラスで一番のリア充グループだから、日陰者の僕としては尚更。
いくらそのグループ内に親友の龍君がいるとはいえ、流石にあのリア充グループに僕単機でつっこむのは躊躇いがある。被害妄想かもしれないけど、陽キャの人達が僕に向けてくる、場違い感を訴えているような、物珍しげな視線が苦手といいますか。
そうこう尻込みしていた時、珍しく一人でいた蓮条さんと奇跡的に目があった気がして、ここを逃したらチャンスはないと勇気を出して話しかけに行ったとこまでは、たぶん間違ってなかったと思う。
それが気がつけば、こんな四面楚歌な展開になっていて……。
こうなったら頼みの綱の龍君は、何故だか今、教室にいない。ふと、以前蓮条さんとのいざこざから救って貰った時の言葉「次もし同じことがあっても、俺がいるとは限らない」が頭の中でリフレインする。どうやら罰があたったみたい。
けど何で蓮条さん、ハンカチを返すの渋っていたのかな? 今回に関しては僕、彼女を不快にさせる要素は何もなかったはず……。
――んん! もしかして、そういことなの!?
今になって気付いてしまった。
いくら緊急事態だったとはいえ、毛嫌いしているオタクグッズを身につけてランド内を歩いてた事実が学校のみんなに露見しそうな展開は、クラスのリーダーたる蓮条さんからすれば極力避けたいこと、だよね。うわぁ、やらかしてる。完全に配慮が足りなかった……。きっとこういう不甲斐なさが、モテない理由に繋がってくるんだろうなぁ、とほほ。
だとしても、せめて蓮条さんがハンカチを奪ったって誤解だけは払拭しないと。このままじゃ、一生返ってこない流れになりそうだし。それだけは嫌だから。
何か打開策はないのかと辺りをキョロキョロと見回す。
そりゃあ確かに、あの時躊躇っていた蓮条さんの意志を押さえつけるよう、半ば強引にハンカチを撒いた僕が悪いってしまえばそれまでなのかもしれない。いわゆる余計なお世話ってやつ。思い返せば、あの時の蓮条さん、珍しく狼狽えてたし、きっと彼女の中では怪我と面子どちらを優先するかで葛藤があったんだと思う。
でも――ごめんさない。あのハンカチは僕にとって大切な宝物なんです。嫁なんです!
胸中でそう思いを滾らせながら、必死にどうするか考えていたそんな時、
「――!」
「あっ」
不安そうな表情で僕達を見ていた高宮さんとふと目があった。
「あ、あの……」
僕は半ば反射的に話しかける。
高宮さんなら、以前の蓮条さんとのいざこざの時そうしてくれたように、また手を貸してくれるかもしれない。
そんなわらに縋る思いで期待を込めた僕の視線は、はたして、一瞬の内に逸らされてしまって、
「わ、わたし、ちょっとお手洗いに行ってきます!」
居心地の悪そうに声を張り上げ、そそくさと教室から出て行ってしまった高宮さん。
「へ……?」
僕は魂が身体から抜け出ていきそうなくらい呆然となった。
「やばっ、あの凛々乃が見放すとか、これ、かなりガチじゃん」
瀬尾香里奈さんが、驚きを隠せないと口に手を当てる。
「あの誰にでも優しい高宮さんすら、目をそらすってヤバくない」
「いやマジで終わっただろあいつ」
「播磨君の幼馴染みだからって調子にのってた罰だよねー」
それに続くよう、静観していた周囲からも、ひそひそ話の声が聞こえてきて――
ど、どうして。あの高宮さん、僕、何か粗相でもしましたか……? それこそ本当に検討が……。
――ああっ、こっちもがっつりしてましたぁああああああ!!
思い返した途端、心辺りが滝のように溢れ出してきて背筋が凍りつく。
冷静に考えて、高宮さんに「恋愛はいいものですよ~」とか言って焚きつけたくせに、いざ高宮さんが好きな人にアプローチをし始めた途端、僕は応援するどころか、逆に協力なライバルを後押しするは、おまけに知らなかったとはいえ、もう一人のライバルまで呼んで修羅場まで作っちゃうは――もう強烈な手のひら返しもいいところといいますか、笑えないレベルにやらかしてる。
……僕、本当に終わったかも。
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