9.18.ギリギリ
ワープゲートを潜って本拠地に戻ってきた。
そんなに長い間離れていたわけではなかったのだが……いったいどうしたっていうんだ。
先にゲートを潜った三匹を見てみると、全員が顔をしかめていた。
なんでだろうと思って聞こうとした瞬間、その理由が俺にも解った。
『くっさ! なんだこれ!』
『オール様……風魔法で、これを散らしてく、ださい。毒です』
『なにぃ!?』
いや、でもこれ本拠地の洞窟から……臭ってくるぞ!?
いったい何が……!
ええい、取り敢えず全部吹っ飛ばしてやる!
『風魔法!』
とにかくこの毒を全力で散らす。
そうしなければ俺たちが近づけないからな……!
この間にメイラムに聞いておこう!
『メイラム、これはなんの毒だ?』
『……俺も……初めて嗅ぐ臭いです……。生命能力……肉体……魔力総量に影響がある、毒だと……思われます』
『なんでこんなもんが……』
不幸中の幸いというべきか、ここに子供たちが居なくて良かった。
だが残っている仲間たちが心配だ。
『これは即効性の毒か?』
『いえ……蓄積系の毒か、と思われます。吸えば吸うほど……毒の回りが……速くなるかと……』
『うかうかしていられないな!』
ルースがどのタイミングで俺たちに連絡をして来たかによるか……。
解毒は後回しだ。
今はここから救出させることを目的にしよう。
『ヴェイルガ! レーダーで仲間の位置を正確に出せ! そこに俺がワープゲートを作る! ベンツ、メイラムは仲間を引っ張ってワープゲートに入れてくれ!』
『わっかりましたー!』
『『了解』』
恐らくこれが一番速い救出方法だろう。
とにかくまずは助け出す!
考えるのは後回しだ!
ヴェイルガがレーダーで仲間の位置を探る。
近場なので魔力消費はほとんどなく、言われた通り正確な位置を割り出してくれた。
『洞窟とその正面の水辺、あとはベリルを助けたときにオール様が作った小屋の隣です!』
『でかした!』
『小屋にいるのは一匹なので僕がいきます!』
『頼む!』
指定された場所にワープゲートを繋げる。
それに続いて風魔法の出力を上げ、毒を吹き飛ばしていく。
臭いも薄まったところで三匹が同時にワープゲートを潜って救出に向かった。
一番早く戻ってきたのはベンツだ。
水辺で倒れていたバッシュとヒラを連れてきてくれた。
『おいしっかりしろ二匹とも! 兄ちゃん、回復魔法をお願い! 息が浅い!』
『分かった!』
完全な治療はメイラムが帰ってきてからだ。
俺はそれまでこいつらの命を回復魔法で繋ぐ!
『お、オール様! ルースを連れて参りました!』
『息は!?』
『あります! 意識も残っているようです!』
『ぅ……うぅ……っ』
『ベンツ、メイラムの手伝いに行ってくれ。危ないだろうが頼む』
『うん、息止めていくよ』
メイラムが行った場所は一番毒の臭いが濃かったからな……。
毒に耐性のないベンツに行かせるのは少し不安だが、ヴェイルガはもっと無理だろう。
それにあいつ……帰ってこない。
毒に耐性があるから問題はないと思ったのだが……。
とりあえずルースも回復してやろう。
これで少しは良くなってくれ……。
『これでとりあえずは大丈夫か……?』
『オール様! バッシュが目を覚ましました!』
『バッシュ! 大丈夫か!?』
『……ェホッ……はぁ……はぁ……』
喋るのは難しそうだな。
早く解毒しないと……。
メイラム、ベンツ、早く帰ってきてくれ……。
あの二匹はワープゲートに入ったっきり帰ってこない。
任せたいところだが、これは向こうで何か起こっているのではないだろうか?
これだけ帰ってこないとマジで心配になる。
『お、遅いですね……』
『ヴェイルガ、二匹は今何をしている?』
『……大丈夫です、動いてはいます。ですが何やら様子が変ですね……』
『どういう風に?』
『説明が難しいですが……これは……。っ! メイラム殿が毒の発生源を潰しているようです!』
『だから時間が掛かってんのか! ベンツは大丈夫なのか!?』
『はい、ベンツ殿はリッツとバルガン殿の近くにいます。ですが帰ってくる気配がありませんね……』
ヴェイルガが状況を説明してくれたおかげで安心した。
倒れたりはしていないらしい。
だが二匹が倒れているのにベンツがこっちに運んでこないというのはどういうことなのだろうか。
生きているのであれば問題はないのだが……できれば少しでも回復させてやりたい。
『……俺も行くか』
『!? 駄目ですオール様! 向こうにはメイラム殿がおりますので毒治療も同時に進行してくださっているはずです! オール様はこの三匹を回復していただかなければ!』
『ぐっ、待つしかないか……!』
『今この三匹の命を繋ぎとめられるのはオール様だけです。メイラム殿とベンツ殿を信じましょう』
そう、だな。
ヴェイルガの言う通りだ。
だができるだけ、できるだけ早く戻って来てくれよ!
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