9.17.制圧しちゃった


 ハバルの言葉に耳を疑った。


 サニア王国が落ちた?

 たったこれだけの期間に一体何があったというのだ。

 というかそれに居合わせていたのか?


 いや待てよ……?

 テクシオ王国兵か?

 あいつらなのか!?


「交渉には俺とテクシオ王国兵二百名が参加した。あー、まず結論から言うと、サニア王国はまだ負けていないと主張して戦争を続ける気満々だった。その報告を聞いた瞬間、テクシオ王国兵の隊長が暴れ始めてな。二百名で城攻めを行ったんだ……」

『なんじゃそりゃ……』


 一国を? 二百人で? 制圧?

 何がどうなったらそんなことが可能なんだよ。

 いくら二年間魔物と戦い続けて強くなっているとはいっても、そこまでできるもんかね?

 いやできるんだろーなー!!

 落としちゃってるもんな!!


『ていうか城の中に二百人も入れないだろ? 主要人物だけしか入れないはずだが、その辺はどうやったんだ?』

「なんでも『兵士一人が二階へと跳躍できる脚力を持っているのであれば、壁を乗り越えるなど容易い』とのことだったが……」

『基準どうなってんだ』


 いやまぁめちゃくちゃ心強い話だけども!

 でもまぁ、確かに壁を飛び越えることができれば、防衛施設なんてあってないようなものだしな……。

 人間の身でそこまでできるとは。

 これはマジでテクシオ王国兵強いんじゃないか?


『というかどうしてそうなった』

「テクシオ王国はフェンリル、エンリルに手を出す者は敵と見なすと言っていたぞ? 同じ過ちを繰り返さないために、そういう奴らは摘み取るそうだ」

『とんでもない奴味方に付けちまったっぽいな……』


 これは俺が言ってもなびきそうにないなぁ。

 まぁ危険が去るのであれば俺はそれで問題ないけど。

 しっかしよく落とせたものだ……。

 人間が少ない兵力で城を落とすのは並大抵のことじゃできないだろうからな。


 えーと、つまりどうなるんだこれから。

 サニア王国はテクシオ王国の手によって落ちたから、あとはそっちが何とかしてくれるのかな。

 それならそれでヴァロッドの仕事が減っていいんだろうけど、これもしかしなくても独断で動いてるよね。

 ヴァロッドが知ったら怒るぞ……。


『兄さん。父さんたち、寝床に持っていくぞ』

『ああ、頼む』

『……? ……ッ! ッ!!』

『どうしたガンマ』

『重すぎる!! どうなってんだこれ!!』


 え?

 ガンマが持ち上げられない!?

 そんな馬鹿な話あるか!?

 てかガンマが持ち上げられないんだったら馬車壊れててもおかしくねぇぞ!!


『ガルザ! これどうやって運んだ!?』

『は、ハバルに持ってもらって……ですが……』

「な、なんだ? 何を話している?」


 おー?

 ハバルは毛皮を運ぶことができたのか。


 いや待て俺は持ててるぞ!?

 え、これ何がどうなってんの!?


『兄ちゃんの闇の糸では持てるのか……』

『闇魔法か……。なにかかかっているかもしれないな。防犯対策みたいな感じで。ほんじゃま光魔法、浄化』


 浄化魔法を使ってみると、何かが蒸発するように消えていった。

 やっぱりなにか闇魔法による防犯対策が取られていたらしい。

 それをすべての毛皮に施してやると、一気に軽くなった感じがした。


(オール)

『ん?』

(気を付けろ。森の屍が動き出す)


 すっごいノイズがかかってる声が聞こえてきた。

 どっかで聞いたことのある声だったな……。


『今のなんだ?』

『え? なにが?』

『何か聞こえなかったか?』

『ぜんぜん?』


 俺だけしか聞こえてなかったのか。

 幻聴?

 にしてはやけにはっきり頭に残ってるな……これなんじゃろか。


(仲間が危ない!)

『!? なに!?』


 仲間が危ない?

 それは……え?

 ていうかお前誰だよ!!


 その時、俺とハバルの間に木の根っこが地面から突き出てきた。


『うおおおおお!?』

『『なに!?』』

「びっくりした!!」


 根っこぉ!?

 いやなんで根っこがこんな所から生えてくるんだよ!


 ……ちょっと待てよ?

 木を操るのは今ここに居る奴だと俺しかできない。

 レイアは植物を操るのに長けているだけで木を操るのは不得手だ。

 ……俺以外にこれが使える奴……って……。


『ルース?』

『お──ル──。オールさ──』

『ルースか!? どうした!?』

『────』


 距離があるからあいつの木霊が使えないのか?

 いや待てそんなこと考えるよりほかにやることがあるだろう!!


『ガンマ! 父さんたち頼んだ! ヴェイルガ! メイラム!! 至急集まれ! ベンツも来い! 本拠地に戻るぞ!!!!』


 ルースが何かを伝えようとしたってことは、向こうで何かがあったに違いない!

 良くここまで魔力を通して根を伸ばしてきたものだ!

 それだけの余裕があるならまだ間に合うかもしれない!


『お呼びですがオール様ぁー!!』

『来まし……た』

『よし! お前らは入れ!』


 ワープゲートを作り出し、それを本拠地と繋げる。

 大きめに作ったので四匹が同時に入ることができた。


『ガルザ! お前は子供たちを守ってくれ! ハバルには人間たちに警戒するようにと伝えておけ!』

『分かりました!』


 伝えることは伝えた!

 待ってろ皆!

 今行くからな!!

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