9.12.その準備
夜。
洞窟にある俺の指定席に久しぶりに座った。
やっていた掃除方法を真似て、仲間たちが常に綺麗にしていてくれたらしい。
ありがたいですね!
まぁ皆集まっている事なので、ちゃちゃっとシャロの提案を皆に共有した。
案の定バルガンは渋い顔をしていたけど、お母さん狼は全員が賛成してくれて、子供たちに至っては既にはしゃぎまくっている。
向こうの領地については話を聞いていただろうからな。
ずっとこの付近でしか遊べないことに不満を持っていた子供たちもいたらしい。
昔のセレナみたいだ。
あ、もちろん親同伴で行くことになる。
とはいえ、ここを完全に開けるわけにもいかないので、第二拠点にいる三匹に戻ってきてもらうことで話がまとまった。
バルガンは行く気がないらしいので、ここで待機するのだとか。
まぁ当たり前かー。
えっと、この拠点に残るのは……。
バッシュ、ヒラ、リッツ。
バルガンに……ルースだな。
『ルースはそれでいいか?』
『問題ありませんわ。防衛魔法に長けているので、適任でしょう』
ルースはスルースナーの群れの中にいた一匹だな。
土魔法が得意で、植物も動かしたりすることができ、監視や索敵もお手の物だ。
こいつに任せていれば、奇襲は防ぐことができるだろう。
接近戦ではバルガンがいるし、回復薬のヒラ、盾役のバッシュに中距離魔法が得意なリッツもいる。
しばらく留守は任せても大丈夫そうだ。
『……オール……私めは心配で仕方ありませんぞ』
『じゃあ子供たちが無事に帰ってきたら、安全だって言う証明になるか?』
『……んー……。私めは、やはり昔のことは忘れられないようですな……』
『それでいいさ。強制はしない。何かあっても俺が守るしな』
『……』
バルガンはまだ何か言いたそうにしていたが、これ以上のことを小さな子供たちの前で話すのは良くないと感じたのか、目を閉じてしまった。
こいつは群れの中で唯一、父さんと一緒に戦ったんだ。
当時の悔しさは……俺がどうこうできるようなものではない。
だが……。
『悪い流れには、ならないよ』
『……ひとまずは……信じましょう』
渋々って感じだなぁ~。
はは、まぁそういうやつが一匹くらいいてくれないとこの関係で満足してしまいそうだしね。
こいつが『大丈夫だ』って言えるくらいになるまでは、しっかりと関係を築いていきますか。
『ねぇ! いつ出発!? いついつ!?』
『まだよー。リーダーも準備があるから、それ次第ね』
『リーダー!』
『『リーダーはやくー!』』
『はいはい。もう少し大人しくしててなー』
可愛いなぁ~。
……はっ、今の俺孫の機嫌を取るお爺ちゃん……!?
『オール兄ちゃん、バッシュたち呼んでこようか?』
『ん、ああ、そうだな。頼めるか?』
『それは僕が行くよ。シャロより僕の方が速いしね』
『それは確かにそうだね。でもライン、君の子供たちは行かせてくれるのか?』
『……』
『『『『むむむむぅ……』』』』
『こら……お父さん困ってるでしょ?』
ラインとレイアの子供が全力でラインの毛を咥えて押さえ込んでいる。
体も大きくなっているので、さすがにお父さんといえども四匹で押さえ込まれたら動くことはできないらしい。
ここはちょっと助太刀しておくかな。
『第二拠点にいる仲間に連絡が遅れると、出発も遅れるぞ』
『『『『!!?』』』』
『いや、そりゃそうでしょ……』
そんな馬鹿な、みたいな表情でこっち向かないで。
今回は俺たちが留守の間、本拠点を守ってくれる仲間たちがいないといけないんだから。
話を理解した四匹は、渋々といった様子で引き下がった。
こいつらも外の世界には興味あるんだもんな。
でもこれは俺がラインを引き離し過ぎたのが原因か……。
悪いことしてるなぁ、俺……。
『オール兄様……向こうには……どう、連絡を?』
『それはデルタに任せる』
『あ、僕?』
『お前闇魔法でワープ使えたよな。それで頼むわ』
『うん、大丈夫……だよ。一回行ったこともあるから、繋げられる』
『向こうに行ったらベンツに話を通してくれ。そうしたら向こうのことはやってくれるはずだ』
ベンツはヴァロッドと簡易血印魔法を結んでいるからな。
それに話を聞けば、人間たちも歓迎してくれるはずだ。
あとはどうやって子供たち全員を連れていくかだが……。
それは俺がワープゲートを開いて丁寧に移動させる。
何かあったら怖いからな。
『じゃ、出発は三日後。それまでにこちらの留守を任せる仲間に来てもらって、向こうには準備を調えてもらおう』
全員がそれに頷き、今日は休む流れとなった。
久しぶりの定位置は、なんだか少し硬い。
いっつも地面の上で寝てたからなぁ。
これ石だし……。
ま、話も上手くいったし、これで人間たちとの関係がもっと深まればいいな。
そんじゃ、今日は寝ましょうかねぇ~……。
あー寝慣れた寝床は……気持ちがいいねぇー……。
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