8.16.会議
しばらく待っていると、ヴァロッドとハバルが降りてきた。
彼らは深刻そうな表情をしている。
まぁ敵が攻めてくるの、最短で二ヵ月だもんな。
でも距離を考えるともう少しかかりそうだけどね。
ここからテクシオ王国までが一ヵ月くらいだったから、往復でも二ヵ月……。
うん、やっぱり三ヵ月くらいはかかりそうだね。
でも三ヵ月って長いようで短いよなぁ。
「さて、どこから話そうか」
『ハバル。リーダーには俺が聞いたことは大体話した。人間たちがどう動くかでこちらの動きが決まる』
「分かった。ヴァロッド様、フェンリルたちはこちらの動きに合わせて動いてくれるようです」
「そうか。とは言ってもな……まだ決めきれないこともあるからな……」
ヴァロッドは指先で頭を軽く叩く。
情報を整理している様だ。
「とりあえず二ヵ月の間に戦争の準備を調える予定だ。だが俺たちの兵力だけだと、三ヵ国なんて相手にする事なんてできない」
『そりゃそうだろうな……』
「俺たちが相手をすることができるのは、サニア王国だけだな……。アストロア王国の兵士は無理だ。数で既に負けているし、装備の面でも負けている。攻城兵器も持ち込まれるだろうし……攻められれば勝ちはない」
まぁ国の大きさがまったく違うからな。
兵力差も比にならないだろうし、人材も豊富だろうからね。
となると、俺たちがアストロア王国の相手をするのがいいか……。
あとは敵の連絡網を何とか遮断したいところだな。
同時に攻めてくるのであれば、お互いの位置などを把握して進軍しなければならないだろうし、何処かに穴があるかもしれない。
界にそういう魔法がないか、あとで聞いてみてもいいかもしれないな。
索敵の魔法ね。
まぁ俺の鼻があれば、何とかなるとは思うけども。
他の子たちが使えたら、それはそれで活躍できるだろうからね。
『では俺たちがアストロア王国を相手しよう』
「すまない……。だがサニア王国の後方からはテクシオ王国も来ている。できればこちらにも少しエンリルを貸してくれないだろうか?」
『それもそうか。構わないぞ。だが向かわせる奴は俺たちに決めさせてくれ』
「ああ。助かる」
ふむ、まぁ俺たちであれば何とかなるだろ。
ぶっちゃけガンマだけでもアストロア王国を潰せるだけの力を持っているだろうしね。
過剰戦力になりかねないけども、まぁ戦争だから何でもありだよね!
人間の常識とか知らんっ!
『で、そっちはどう動くんだ? 誰が残って、誰が出陣するとか決めるんだろう?』
「ああ。とりあえず俺は前線に出ることが決定している。それ以外はまだ未定だ。攻め込まれる可能性もあるから、ある程度は残しておきたい。かと言って守りに入ってしまえば三ヵ国からの一斉攻撃を受ける。各個撃破するためには、出陣しなければならない……」
『難しいところだな』
「まったくだ。この辺に関しては少し時間が欲しい。待ってもらってもいいだろうか」
『構わない。どの道、俺たちも色々決めないといけないからな。じゃ、そっちはそっちで考えておいてくれ。俺たちも作戦を練ってくる』
まぁまだ時間はあるからな。
そんなすぐ決めても、向こうの状況が変わって変更せざるを得ないことになるかもしれないし、今は予定として考えておいた方がいい。
俺はベンツとガルザを連れて、昼寝をしていた場所に戻る。
戻ってみれば、皆はまだ気持ちよさそうに寝ていた。
だがガンマとメイラムは起きて子供たちを見ているようだった。
『兄さんどうだった?』
『ようやく敵が動き出したらしい。だがまだ攻めてくるのは先の話だ』
『ふぅーん』
詰まらなさそう……っていうか、この感じは余裕の表情かな。
ガンマは敵が攻めてくるということにそこまで危機感を感じていないらしい。
まぁ元が強すぎるからなぁ。
『あ、界。お前の魔法の中で、索敵に使えるものってあるのか?』
『索敵ですか? ありませんよ』
『え、ないの?』
『ないですね。僕たち魔物は基本的に鼻がいいですから、わざわざ魔法で索敵しようなんて考えは持ち合わせていませんし』
『む、そう言われればそうだな……』
完全に失念していましたね。
確かに索敵に使える能力を持っているんだから、それ以外の方法で索敵しようだなんて考える事はないか。
今までも鼻を頼りにして索敵とかしてきたもんな。
『似たような魔法もない?』
『オール様の土狼がそれに入るのではないでしょうか? あれは視界共有ができるんですよね?』
『なるほど。監視カメラみたいな感じでおいておくのはアリか……』
『かんし……?』
この辺はこいつらには分らないよな。
ふむ、だったら土狼を何匹か作り出しておいて、敵が来るであろう場所に設置しておくのがよさそうだ。
この話をあいつらにもしておいた方がよさそうだね。
『兄ちゃん、僕たちはどうすればいいのかな?』
『それを今から決めるんだ。ま、今日は暖かいし、皆が起きてからこの話はしよう』
『それもそうだな』
ガンマは俺の言葉を聞いて、顎を自分の腕に置いて目を瞑る。
眠かったんだなこいつ……。
話し合いは夜になりそうだね。
んじゃ、俺も今回は寝ようかな~……。
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