7.20.シグマとラムダ
貿易商が来て二日。
どうやら暫く滞在して、ライドル領に必要そうな物を手配してくれることになったらしい。
それに伴い冒険者も滞在することになったので、あいつらが帰るまでは警戒を怠らないようにしておかなければならないな。
だがここで……少し面白い事が起きた。
ガンマが自分の子供をここに連れてきたのだ。
一体どういう風の吹き回しかと思って聞いてみたのだが……。
『俺の子供が人間に後れをとることはないからな』
んー、可愛い子供には旅をさせろってか?
滝壺に落としてないかそれ、大丈夫?
ということで、ようやく子供がライドル領にやってきました。
しかしガンマの子供だけあって、セレナより一回り大きくなっている。
体の大きさは父親に似たようだ。
『『やーっふー!! お外だー!!』』
ラムダは少し大人しめの性格だったと思うのだが、自分が楽しい時はテンションが上がってシグマに似たような性格になる。
楽しんでくれているのは何よりだが、そんなにはしゃぎまわるとぶつかるぞ?
だが二匹よりも喜んでいたのは、人間の子供たちだった。
中型犬くらいの大きさになった二匹は遊び相手としては申し分なく、人間たちの子供と一緒に走り回っている。
あいつらも親に似て力が強い。
並大抵のことでは止めることができないだろう。
『おとうさーん! これなに!? 狩っていいの?』
『追いかけてくるぅー!』
『あーそいつは味方だから食べちゃ駄目だ。変な匂いもしないだろう?』
『『しなーい!』』
うーん、確かに後れを取ることはなさそうですね……。
そういえばこの二匹……魔法を習得したらしい。
それを節目としていたんだろうな。
こっちに来たばかりの時に使える魔法を見せてもらったのだが、なかなか凄かった。
シグマは身体能力強化の魔法と炎魔法。
ガンマと全く同じだが、炎魔法の火力が昔のシャロよりも高かった。
これは将来有望ですよ。
ラムダは身体能力強化の魔法に加えて、なんと氷魔法を取得していた。
なのでこいつは三つの魔法に適性があるということになる。
氷魔法を使用するには炎魔法と水魔法の適性が必要だからな。
シグマとは全く反対の能力を持っているので少し面白かった。
双子ってお揃いの物を身に着けるのを嫌がったりするしね。
だけどレイよりは氷魔法の威力は弱かった。
まだ子供だし長い目で見て行けばレイと同じくらいにはなるだろうが、攻撃範囲が狭い。
多分これが普通なんだろうけどね。
レイが少し異常なのだ。
常に冷気を纏っていないとまともに生活できていない。
なのでそれが日頃の鍛錬となっているのだ。
ラムダはそれが必要ないので、魔法の成長速度は圧倒的に劣ってしまうだろうな。
それにしても子供は炎魔法使いこなしてるっていうのに、ガンマは一切使おうとしないなぁ。
これは昔からのあれだけど、なーんとも勿体ない。
絶対強くなると思うのに。
『そこんところどうなんだ?』
『俺は使えねーの』
『ほんとに昔から変わらないな。まぁそのおかげで力が増したのかもしれないけど』
『ふん、兄さんもいつまでも引っ張らないでくれよな』
『はいはい』
ま、無理にとは言わないけどね。
でもやっぱり勿体ない。
さてと……。
あいつらどうしようかな?
『ガンマ』
『おう。臭いのが二匹いるな』
『やっぱ気が付いてたか』
『当たり前だ。ていうか兄さんこそよく気が付いたな』
『ずーっとこっち見てるからな。何考えているかくらいは分かるさ』
俺は横目で、その人間二人を見る。
どうやら貿易所の護衛としてやってきた冒険者のようで、何やらコソコソと話をしていた。
それが聞こえないわけないんだよなぁー?
見える範囲であれば普通に耳に届いてしまうのだから。
まぁそんなことをこいつらが知っているはずもないか。
『どうする? ガンマに任せるけど』
『まー狙いはこいつらだろうしな。でも泳がせる』
『あれ、いいのか?』
『フフフフ……子供がやったってんなら何も言えねぇだろうからな……! いい鍛錬にもなるし』
『マジでお前、子供突き落としてんな……』
『多少危険な目に合ったほうが成長するってもんだろ?』
『間違ってはないけどね……』
どうやらガンマはわざとあの人間二人に子供たちを好きにさせるようだ。
信じているのか……はたまた恨みからなのか……。
まぁ先に手を出したほうが悪いんだし、何も言えないよな!
よし、俺もなーんもみてなーい。
ま、マジで攫われそうになったら俺が突っ込んでいくけどな。
ガンマもそれでいいと了承してくれたし、問題はないだろう。
しっかし悪いこと考える人間はやっぱりいるんだな。
ライドル領の人間じゃなくてよかったぜ。
じゃ、どう調理するかは子供たちに任せておいて、俺たちはこっそり覗いておくことにしようか。
どうなるか……予想はつくけどなぁ……。
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