6.49.第三拠点
近くの森に第三拠点を作る為、俺は丁度良さそうな場所を探していた。
この辺りは綺麗な水が流れている。
これがこの領地の畑を潤しているのは間違いない。
周囲を見渡してみても、危ない物などはなさそうだ。
木々が少しある程度で、基本的には開けている。
まぁこの辺は俺が土魔法で何とでもできるので大した問題ではない。
できれば水場がある場所の方がいいし、この辺に作ることにしよう。
『よいしょ』
土魔法で土を盛り上げ、岩を作り上げていく。
俺の背を越える小山を作ったら、それを奥の方へと伸ばしていってから中に穴を掘る。
とても簡単な作業だ。
特に問題が発生することもなく第三拠点を作ることができた。
俺の体がでかすぎるので結構大きく作らなければならないのがネックだが、まぁこれだけ大きく作っておけば、そう簡単に壊れたりはしないだろう。
結界魔法は界が使えるので、後であいつに任せるとするか。
洞窟の中は勿論綺麗にしておく。
地面をぺたーっと平らにして風魔法と水魔法で掃除。
汚れた水を外に出して、炎魔法と風魔法で地面を乾かせば完了である。
あとは周囲の木々が少し寂しいので、気持ち程度にこの場所を隠すため木を生やしておく。
ちょっと籠める魔力が多かったようで大木が何本もできてしまったが……まぁいいか。
『とりあえずこんなもんだな』
『皆にこの事を話すのは僕がしようか? オール兄ちゃんはここにいないといけないだろうし、ベンツ兄ちゃんはそれどころじゃないと思うし』
『ああ、じゃあ任せてもいいか?』
『うん。それじゃあ行ってくるね』
トタッと外に出たラインは、すぐに纏雷を使用して本拠点へと戻っていった。
どれだけの仲間が来るかは分からないが、来たら来たでこの洞窟をもう少し広くしないとな。
さて、それはそれとして……。
ベンツの所に向かうとするか。
あいつセレナの事を見るって言ってあの場所動いてないんだよな。
いや心配なのはわかるけどさ……。
何もしてなければいいけど。
俺が拠点を置いて戻ってみると、ベンツは座ったままセレナとベリルを凝視していた。
しかしその事に慣れてしまったのか、セレナとベリルは楽しくおしゃべりをしている。
さっきセレナの父親はベンツであると教えていたし、それならいてもおかしくないかなと考えているのかもしれないな。
堂々としているし……。
何を話しているのかと聞き耳を立ててみれば、セレナは自分たちの兄弟の事を。
ベリルは家族の事と冒険者活動の事についてを教えているようだった。
まだ小さい子供であるセレナの言葉をよく理解して話をしている。
合わせているのかもしれないな。
『大丈夫かベンツ』
『……今のところは』
それはどっちの事なのだろうかと思ったが、まぁ両方だろうと思っておく。
セレナの事と自分の事。
今は自分の気持ちに整理をつけるので体一杯だろうけどな。
『どうだ、人間は』
『僕はまだ許せてはいないよ。許すつもりもないけど……。でもどうして同じ種族なのにここまで対応が違うの? そこが分からない』
『そうだなぁ……。難しい質問だ』
相手の考えている事が分からないのは、俺たちと同じであるが……。
ざっくり言うと善か悪と言ったところだろうか。
その中で、ここにいる者は善の意識が強い者たち。
この説明も何か違う気がするが、俺も正確に説明できるわけではないのだ。
只直感で、こいつらは俺たちに害を成す人間ではないという事は分かる。
それを受け入れるのに時間はかかるだろうが、この事を仲間にも理解してもらいたい。
ま、俺も無理にとは言えないけどな。
でもベンツはまだ迷っているようだ。
『じゃあベンツ。あの少年、ベリルはセレナに何かをすると思うか?』
『……分からない』
『じゃあまずは、それの答えを見つけてくれ』
それだけ言い残して、俺はこの里の復興を手伝うことにした。
やってやる義理はないが、少しでも俺たちの存在を知っておいてもらいたい。
それによって今も尚怖がっている人間の考えも変わるかもしれないからな。
まずは死体の回収か。
随分な被害が出ているし、周囲の状況を見ながら運んでみるとするか。
ていうかこの里の道狭いな!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます