5.45.悪魔


 知らない奴に回復魔法を使うのはあれだし、とりあえず自然に起きるのを待っておくか。

 全く、こんな所で俺を遠目から見てたらこういう事になるかもしれないというくらいの警戒はしておけよなぁ。

 完全にこれこいつのせいですわ。

 俺悪くない。


 暫くすると、こっちにニアが走って来た。

 しまった……完全に忘れていた。


『ちょっとーオール兄ちゃん。どうしたのー?』

『ああ、すまん。ちょっとこいつがこっち見てたから気になってな』

『……何これ……』

『これって……』


 あんまり興味ないかな?

 まぁ俺も実際興味ないけど、人間じゃないし大丈夫だろう。

 めっちゃ普通にぶん殴っちゃったけど。


 起きた時反撃されないかな……。

 闇の糸で縛っておこう……。


『なぁ狐共。こいつのこと知ってるか?』

『『『そんな悪魔知りません!』』』

『やっぱり悪魔なんだな……』


 まぁ見ただけで悪魔ってわかる見た目してるもんなぁ。

 でもなんでこいつこんなところで俺を見ていたのだろうか。

 それが全く分からない。


 だが悪魔がいるってことは、やっぱり魔王とかいるのだろうか?

 確信がないからあれなんだけど、今までの魔物の軍を考えると、無関係ではなさそうなんだよなぁ。


 だってあそこまで綺麗な陣形の魔物の群れなんて俺知らねぇよ。

 他種族が協力して一つの方向に進んでいくなんて普通有り得ない事だ。

 そして悪魔の偵察っぽい奴。

 さて……どうしてやろう……。


『これどうするのー?』

『んー……。どうしようか。俺的にはさっさと殺してもいいとは思うんだけど……』

『お肉少ないよ』

『そこかよ……』


 まぁ確かに少ないよなぁ……。

 いやそれだけで殺すか殺さないか判断するって相当だと思うけどさ。

 んー、俺としては話聞きたいからとりあえずこのまま置いておこう。

 話を聞いてからどうするかは考えればいいだろ。


 よし、じゃあ木に縛り付けておこう。

 だけどこいつ俺の腕上げたからな。

 岩とかも一緒に結んで絶対に逃げないようにしておこうか。

 ふふふふ……これ結構面白いな。


 よし、とりあえず木の根っことかにもしっかり結んでおこう。

 いやここまでするか!?

 ってくらいに縛り付けておこう。

 こいつがどういう魔法持っているか分からないからな。


『オール兄ちゃん……?』

『俺はこいつを事情聴取するので逃げないように縛っているだけ』

『いや、うん。でもちょっとやりすぎじゃない?』

『実はこいつ俺の腕持ち上げたんだよ。念には念をな』


 そして気が付けば、闇の糸でグルグル巻きになった悪魔が空中にぶら下がっていた。

 俺もどうしてこうなったのかよく分からない。

 なんか頑張ったらなってた……。


 だがこれで目覚めてたとしても絶対に解くことはできないだろう!

 うん完璧だ!


 んー、でもやっぱり起きそうにないな。

 待つのも面倒くさいし、また明日見に来ればいいか~。

 帰ろう。


『よし、みんな帰るぞー』

『え? あ、うん』

『『『この悪魔はどうされるのですか?』』』

『明日まで放置』

『『『惨いのです』』』


 これも全て勘違いさせるような事をしたこいつが悪い。

 俺は、悪く、ない。


 あ、そうだ。

 とりあえず三狐は悪魔のこと知ってるんだよな。

 ちょっと聞いておくか。


『なぁ、お前ら悪魔って何かわかるか?』

『『『悪魔は悪魔なのです! 性格の悪い奴らですよ全く!』』』

『何されたん?』

『『『随分前に憑りついていたのが悪魔だったのですが、それがなかなかに鬼畜野郎だったのです! 神霊は神と同格って知らないのですか!』』』


 何がどう鬼畜だったのかは分からないが、評価は最低だったという事は分かった。

 だが神霊は神と同格というけど、俺はお前らが神霊とは思えないのでそれには一切触れないことにする。


 でもあれだな。

 これだけの説明だとただ性格の悪い奴だって事しかわからない。

 んー、スルースナーとかなら知ってるかもしれないな。

 帰った時に聞いておこう。


 ま、とりあえず腹も減って来たしそろそろ帰るか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る