5.27.殲滅戦




 ガンマが合流し、俺たちは三匹で並んで魔物の進軍を遠目に見ている。

 目の良いガンマは、その魔物たちの容姿をしっかりと捉えることが出来たらしい。


『何がいる?』

『一番前にいるのは、前に来てた奴と同じ。小さい魔物。……ていうか奥も前とほとんど同じ。変わってるのはデカいのが増えてることくらいかな』


 前と同じか。

 てことは、前回と同じ奴が送って来ている奴かもしれない。

 しかしよく短期間でここまでの数を揃えることが出来たな……。

 魔物だからだろうか。


 だがこれで二回目だ。

 誰かがこの魔物を使役して進軍させているのは間違いないだろう。


 いつかこの原因を調べた方が良いかもしれないな。

 何回もこんな感じで来られると本当に困る。

 まぁ大した脅威ではないだろうけどな!


『よし、じゃあ作戦を考えるかー』

『俺がドーンでよくね?』

『山が崩れたら危ねぇだろ……』


 自然破壊はできる限り止めましょう。

 縄張りになるだろう場所を壊すだなんてとんでもない。

 壊れたとしても土魔法で直せるだろうけど、ガンマが暴れるとどれだけ時間がかかるのか分からない。

 無駄な仕事が増えるのは御免です……。


『じゃあどうすんだよ』

『ガンマはデカい敵だけを狙ってくれ。邪魔な敵がいたら吹き飛ばしてもらっていい。お前には何体かの水狼を付けるつもりだ。出来るだけ荒らさないようにな』

『難しいなぁ……』


 だよねー。

 まぁこれも手加減の練習って事で宜しくお願いします。

 ベンツはいつも通りの戦い方で殲滅してくれたらいい。

 今回は俺がメインアタッカーになるとして、数には数で押す戦い方をしようと思う。


 今回は俺がほとんどを倒す感じになるぞっ。

 よーしやるぞやるぞーっ!


『じゃ、俺がほとんどの敵をやろう』

『大丈夫なの!?』

『俺も自分のできる事をそろそろ把握しておきたいからな』


 自己満足ですけど許してください。

 そろそろやれることを全部確認しておきたいからな!


『じゃ、今回は俺たちが支援な』

『……まぁいいか。兄ちゃんにもしっかり戦えるようになってもらわないと困るしね』

『お? なんか棘のある言い方だったけどまぁいいか』


 ぶっちゃけ戦闘に関しては殆どを皆に任せていたからな。

 仕方がない仕方がない。


 じゃあ二匹には後方から援護してもらうとして、俺は早速殲滅作戦を開始しましょう。

 作戦と言った作戦はあまりない。

 俺が一匹でやればいい話だからなっ!

 まずは……。


『水狼の王』


 俺と同じサイズの大きな水狼を出現させる。

 水狼の王は数十体の水狼を勝手に作り出し、ひとりでに走って行く。

 ぶっちゃけあれだけに任せても良いのだが、流石にそれは難しそうだ。

 なんせ数が多いからな。


 土狼を使おうとも思ったが、木々が倒れてしまいそうなので却下。

 今回は地道に削っていきましょう。


 水狼の王は数多くの水狼を連れて、敵の先鋒に突撃する。

 敵方もそれに気が付いて数発の魔法を放つが、全て当たらない。

 オートで動いている水狼たちに死角はないのだっ!

 数的には圧倒的に不利だが、その勢いは数を感じさせない程に強い物だった。


「──」

「ギャワアアア!」

「ジャアアア!」


 魔物の断末魔や叫び声などが聞こえている。

 周囲にいる魔物や、奥に待機している魔物もその声に気が付いたようで、警戒を強めた。

 だがその間にも、水狼は敵を蹂躙していく。


 体の中に敵を取り込んだり、水弾を使用して敵を牽制。

 更には自爆して大きな被害を敵にどんどん与えていく。

 だが、それもごく一部の被害にしか過ぎない。

 そろそろ俺も動く。


『っしゃ、行ってくるぜ』

『うん。僕は左に行くよ』

『俺はついて行くぜ。デカいのが出たら吹き飛ばしてやる』

『おうよ』


 行動が決まったベンツは一瞬で居なくなる。

 すると、すぐに左側の魔物たちがいる場所から叫び声が上がり始めた。

 どうやら既に戦闘をしているらしい。

 これはもたもたしていると全部持っていかれそうだ。


 俺とガンマも動く。

 ガンマは足が遅いので、跳躍で一気に飛び上がる。

 俺はいつもの速度で水狼がいる場所とは違う方角に進む。


 敵陣にはすぐに辿り着くことが出来た。

 音のしている方角を気にしているようで、まだ俺の姿には気が付いていない。

 であれば、先制攻撃を仕掛けよう。


『っしゃ行くぞ! まずは雷弾!!』


 数十個の雷弾を魔物たちのいる場所に撃ち込む。

 ばらばらに撃ち込まれた雷弾は不規則に広がり、触れた魔物を焦がしていく。

 だがそれも一時的な物なので、十分に広がったと思ったら一気にそれを弾けさせる。


 バヂヂヂヂヂヂッ!

 雷弾と雷弾に雷の糸が繋がり、その直線状にいた魔物たちが全て焦がされた。

 声も出す間もなかったようで、数百体の小さな魔物が地面に倒れる。

 後方でその様子を見ていた魔物たちは、何が起きたのか一瞬分からなかったようだが、そこでようやく俺の存在に気が付いたらしい。


『このやり方だとちょっと長期戦になるかもだが、まぁそれもいいだろう!』


 ここからが本番だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る