1.3.新居


 寒さに耐える事数分。

 やっと目的地に到着したようで、冷たい風から解放された。


 連れてこられた場所は、洞窟のようで先ほどの場所より暖かそうな場所だ。

 ここなら雨風を凌ぐことが出来る。


 母親狼が俺をそっと置いたあと、黒い狼がまた兄弟を風のような物で浮かび上がらせて、俺の近くにそっと置く。

 あれは一体なんだろうと考えていると、また母親狼が俺たちを囲うように寄り添ってくれる。


 風も来ないし、やはり兄弟と母親狼は暖かい。

 冷え切ってしまったので、また体を温めなおす。


 な……なんで俺だけ……寒い思いをしたんだろう……。

 ていうか……あれなに? 魔法……?

 てか寒くてそれどころじゃないぃ! おかあさーん! きょうだーい! あっためてー!


 しかし、母親狼は俺を温めてくれるけど、兄弟は俺が冷たいとわかるや否やちょっと離れた。

 君たち……。


『ここは大丈夫なのですか?』

『ああ。こいつらが大きくなるまでは守るさ』


 そういいながら、黒い狼は母親狼に寄り添って、一緒に俺たちを温め始めた。

 オスの狼ってこういうことするんだろうか。


 ていうか貴方たち夫婦ですよね?

 貴方お父さんですよね絶対。

 てかお父さん冷たっ! 毛先冷たっ!!


 何て冷たいんですか!

 やめてっ! お母さん助けて! お父さんがいじめてくる!


 とりあえず母親狼の腕の中に避難する。

 ちょっと冷たいけど、腕が枕になっているのでなんとなくちょうどいい。


 そういえば……子供だっていうのに俺たち結構大きいな。

 すでに母親の頭くらいの大きさがある。

 兄弟ももう目は開いてるけど、俺と違ってまだ完全に見えるようにはなっていない様だ。

 かくいう俺も、まだ片目が開いていない。


 また手を目に当てたら開くかな。

 ……まぁ無理だよね。


 暫くしてようやく温まってきた体に、兄弟がすり寄ってきた。

 やはり兄弟と一緒に居たほうが暖かい気がするので、俺も兄弟たちと一緒に団子になる。


 ん~……もう一回整理しましょうね。

 まず俺は狼に転生しました。はい。間違いない。

 で、一緒に団子になってるのが兄弟で、俺たちは三兄弟。

 長男とかはわかりません。


 そして、この白い狼が母親で、隣でくっついて寝てる黒くて大きな狼が、多分父親。

 で、父親は魔法みたいなのを使う。

 ………………ん? ここ異世界?


 いやでもそうだよなー!

 あんなの見たことないもん!

 絶対ここ異世界ですよ知ってるー!


 いや、転生した時点でそうじゃないかとは思ってましたけども……。

 確証がなかったからなぁ……さっき出たけど。


 ……てことは俺、魔物っていう扱いになるのでは?

 俺、飼い犬になりたいんだけど……。

 これ無理なんじゃね?


 多分この世界にも人はいるでしょう。

 だから何とか友好関係を結べたら……ワンチャンあるぞ!

 まぁ……お父さんとお母さんが許してくれるわけないだろうけどな。


 えっと……で、俺は少し成長が速い。

 これは多分。

 目が開いたばかりでここまではっきりとは見えないだろうからな。

 耳も聞こえるし。


 だけどなんだろう。

 イヌ科の動物って総じて鼻が利くよな?

 でも俺あんまり匂いとかよくわかんないんだけど……。


 匂いを感じ取ってみようとはしてみるのだが、あまりよくわからない。

 だが甘いような香りは母親からして、どこか暖かい日差しの香りは父親からしている。

 しかしこれだけだった。


 これは俺が元人間だったからわからないだけかもしれない。

 まぁ、これは後々わかるようになってくるだろう。


 あ、また眠たくなってきた。

 そう思った次の瞬間には、また俺は眠ってしまっていた。


 あいらいくとぅすりーぷぅ……。

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