中学2年生の転生者
〜異世界人事部 事務所〜
「リゼさんっていつから異世界人事部に所属しているんですか?」
「う〜ん、大体4年前くらいかしらね。」
「4年前ですか。その頃って今とは違うところとかあったんですか?」
「今とは違うところね〜、やっぱり1番大きいのは転生者の数がかなり増えたところね。」
「前は今より少なかったんですか?」
「そうね。今は1日に何人も転生者がいるけれど、昔は1週間に1人くらいだったわね。」
「え、そんなに少なかったんですか!?」
「ええ。そもそも異世界転生って昔は転生先の世界で人々が苦しんでいて、人々を助けるために別の世界から転生者を選んで助けに行かせるっていうものだったのだけれど、最近では別に人々が苦しめられていない世界にも転生できるようになったから、その影響で転生者もかなり増えたのよね〜。」
「確かにそうですね。というかなんで助けを求めてもいない世界に転生できるようになったんですかね〜?」
「さあ、そこら辺は私も知らないのよね〜。」
「不思議ですね〜。」
「そうね。って、そろそろ仕事をしなきゃ。
あ、あなたの担当者来たみたいよ。」
「本当だ!それでは、行ってきます!」
「行ってらっしゃい!」
〜転生の間〜
あれが今日の転生者か〜。意外と小さいかも。
え〜と、どれどれ〜、時詠聖夜、14才、趣味:世界を救うこと?、これまでの人生:周りの人とは違う人生を歩んできた、か。
え?何これ?ツッコミどころが多いような〜?
とりあえず話してみよう。
「こんにちは、時詠聖夜さん。私はサナ、あなたの異世界転生を担当する女神です。
あなたにはこれから異世界転生をするための診断をしてもらいます。」
「異世界転生...女神...フフ...」
「聖夜さん?どうかしましたか?」
「フフ、フハハハハハハ!ついに!この時が来たか!!」
「お、落ち着いてください!え〜と...」
「神に選ばれし我の出番がようやく訪れた!!待ちわびていたぞ!!」
あ、この子ヤバイ子だ。
「えっと、それでは診断を始めますね。この診断ではあなたの行きたい異世界のイメージをお聞きして、今までのあなたの人生と合わせて転生先を決定します。」
「よかろう!!普段なら選ばれし我と話すにはそれなりの対価が必要だが、今回は許そう!!」
「ありがとうございます、アハハ。(はあ。)
では早速、あなたが行きたい異世界のイメージをお聞かせください。」
「ふむ、そうだな...まあ正直なところどこでも良いのだが、我の力が存分に使えるところがいいな!うん!」
「と申されますと...少々お待ちください、ただいま検索してみます。」
検索キーワード:時詠聖夜、力が存分に発揮できる世界、これで検索っと。
数秒後
ピピッ、異世界ちゃんが鳴った。
「該当異世界1件、異世界名『バトルワールド』、この異世界でよろしいですか?」
あ、確かにそれっぽいかも。
「聖夜さん、ありましたよ。異世界名『バトルワールド』です。」
「おお、よいな。」
「バトルワールド、強者たちが住んでいる世界、この世界に住んでいる人々は全員主人公クラスの実力を持っており、力に自信のある人におすすめの世界、らしいです。聖夜さんにぴったりですね!」
「あ、いや、ちょっと...」
「しかも可愛い女の子もたくさんいるらしいですよ!いいんじゃないですか!」
「あの、えっと...チェンジで。」
「え、」
「え。」
「どうしてですか?結構良い世界だと思うのですが。」
「えっと〜その〜実は〜、人と話すのが苦手で...」
「え。」
10秒間の沈黙
「....すいません、イキってました。本当は誰とも話せないただの陰キャです!!女の子とか無理です!!
特別な力もありません!!そんな強そうな世界に転生させられても戦えません!!!!!!!」
またしても沈黙
「...なんかすみません。」
「謝らないでください!だって...だって仕方がないじゃないですか!誰とも話せないから学校でも自分の席で本を読んでいたらクラスの明るい人に気を使われて話しかけられて!でも話せないから気まずい雰囲気になって!だからイタい奴になれば誰にも話しかけられずにすむと思ったから中二病とか訳分からないキャラ作って!そしたら意外と楽しくて中二病のキャラが抜けなくなっちゃっただけなんです!!本当はただの陰キャなんです!!ごめんなさい!!!」
「そうだったんですね〜。(あ、触れちゃいけないやつだ。)
えっと、それじゃあどんな異世界に転生したいですか?」
「....僕みたいな人が多い異世界ってありますでしょうか?」
「聖夜さんみたいな人ですか?」
「はい。シンプルに言えば陰キャが多い世界ですね。....そんな世界なら僕もうまくやっていけそうです。」
「わ、分かりました。探してみますね。」
「よろしくお願いします。」
検索キーワード:時詠聖夜、陰キャが多い世界、検索。
数秒後
ピピッ、異世界ちゃんが鳴った。
「該当異世界1件、異世界名『まったり陰陰ワールド』、この異世界でよろしいですか?」
あるんだ。異世界って幅広いな。
「聖夜さん、ありましたよ。」
「本当ですか!」
「異世界名『まったり陰陰ワールド』です。」
「まったり陰陰ワールドですか?」
「えっと説明が、『まったり陰陰ワールド心穏やかな陰キャたちがまったり暮らす世界。そもそもこの世界には陰キャしかいないので実質陰キャは存在しない。まったりした陰キャライフを送りたい人におすすめの世界』だそうです。どうでしょうか?」
「....完璧だ。僕にぴったりですね!その世界でお願いします。」
「分かりました。それでは時詠聖夜さん、楽しい異世界ライフを送れることを願っています。」
「女神様、ありがとうございました!
...フフ、フハハハハハハ!我を導きし女神よ!さらばだ!!」
こうして時詠聖夜の異世界転生が完了した。
〜数時間後〜
「あ、異世界ウォッチング部からの評価だ。」
「異世界名:『まったり陰陰ワールド』、転生者:時詠聖夜、担当女神:サナ、
評価:B
評価理由:まったりと幸せな異世界ライフを歩めているが、まだ転生者の心のどこかに刺激的な冒険をしてみたいと思っている部分があるため、今回の評価はBとなりました。」
「評価Bか。初めての時よりは上がったけど、まだ最適な転生をさせることはできなかったな...
うん、これを活かして次はもっと良い転生をさせられるように頑張ろう!」
異世界人事部の女神ちゃん! 蛭子 @hiruko456
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