リタる
第一として、元々のテンション・ノリ・方向性を忘れてしまう点がある。細かく設定や背景、理屈を練っていれば何とか復旧出来るかもしれないが、その場の感性・勢いで文章を紡ぐ人もいる(他ならぬ自分が該当する)。このタイプの場合、なかなか難儀する。
過去の話を自分で読んでみて「ああ、こんな風なのね」と思うのだが、実際にその続きを書こうとすると、まったく「こんな風」に近づけない。自分の感性は早々変わらないものだと思い込んでいたのだが、想像よりずっと流動的なものであった。作品をひとつ読んだだけで根本から変わってしまうくらいにはアテに出来ない。
この「妄作論」は作者の妄言という体裁だから「何をどう書いてもいい」(各話の文字数をサイコロの目で決めるくらい適当だ)としていた。これに助けられた節もある。別の作品だったらこう上手くはいかなかっただろう。
第二として、帰還時のプレッシャーがある。別に誰も知ったこっちゃないのだが、久方ぶりに投稿する際には「以前と比べて劣化した」「長いブランクを空けた割には……」と思われるかが気になるわけである。何もわざわざ蒸し返さなくてもいいんじゃ……? と思う。
遠慮する必要がないことくらいは分かっている(そんなことを気にするほど皆様は暇じゃない)のだが、「エタる」という行為そのものが悪いことであり、それを実行してしまった作者は罪悪感を抱き、その作品に触れることを忌避したがるのだ。
最後に、対抗馬の存在。ここでの「対抗馬」とは他の方の作品もあるが、主に自分の他作品のことを指している。尻切れトンボに終わった未成熟の作品を無理に回復させるよりも、勢いがある今の作品(アイデア)を掘り進めた方が実りが得られるだろう……という考えである。
概ねは正しい。「更新待ってます」といった連絡があれば別だが、基本的にはフェードアウトしたとしても、他のコンテンツに移るだけなのだ。先述した通り、皆様は作者だけを見てくれるほど暇じゃない。次のお得意様に向かうだけである。
難しさをざっと列挙しただけで目眩がしてくる。
ではどうして、この作品に関しては帰還をしたのかというと、早い話「損得とかは抜きに、10万文字以上の作品を完結させてみたかったから」である。
この3つの問題点はすべて共通した要素がある。「自分が得をしない、ひょっとしたら損するかもしれない」という点である。余程の思い入れがあれば別だが、基本的に「エタり」から帰還するという行為はデメリットの方が大きい。
そもそもエタった経緯が「執筆を(無期限に)中断すること」のメリットとデメリットを比較し、前者の方が勝ったからなのだから、損得という概念で勝負すること自体がお門違いである。
表現しにくいが、差し引きで損となってでも、経験を積んでおく必要があった。
今まで通りに無益な文章を垂れ流すだけの段階から、先の段階へ進んでみたいと思ったわけだ。
損得の領域から降りることで、ようやく重い腰を上げるに至ったのである。
そして次回で、長かった妄言も終わりにする。
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