そんなに困ってない


 創作するにせよ、妄想するにせよ、中々厄介なのは「そんなに困ってない」状態である。


 相当に困っているなら、その際の激しい想いを創作に表したり、要らぬ妄想を膨らますエネルギーにはなる。または、そんな余裕はないと筆を折ることも出来る。

 現実に全く困ってない(満ち足りている)なら、実際のところ創作も妄想も必要はないし、意識もいかないだろう。無理にやるくらいなら、別の経験をした方が参考になるとも思うし。


 問題なのは、その中間……「小腹が空いたなあ」くらいの困り方をしている時である。やらなくても大きな支障はないが、やると一応は満たされる。でも深く踏み込みたい(優先度が高い)とは思わない、という宙ぶらりんな状態。

 失っても大きなリスクはなく、得ても大きな喜びはない。とりあえず絶えず口に食べ物を運んでいたい……といった状態。



「習慣的なマンネリ」と形容するのが良いだろうか。作品がマンネリする以前に、作者がマンネリしている。

 最初はそれなりに困っていて、欲求を満たすべく熱心に創作(妄想)に向かう。飢餓状態の脳がマッチ売りの少女よろしく空想を広げる。楽しい時間を過ごす。

 いつまでも浮かべられると思い込む。だってそうだろう? 現実と違って実際にはないもので、いくら摂ったとしても味もないし腹も膨れないんだから。


 しかし、仮に空想が現実になかったとしても、それを浮かべる体は現実にあり、その影響を受けている。

 自分の作品がサイト内で評価を受ける。

 あるいは、作品とは関係のない場所で、例えばパートナーが出来たり、学校や会社で表彰されたりする。

 他の趣味が出来たとかでもいいし、ペットを飼ってみたでもいい。



 そうなった時、今までの通りに行えるか、といえば難しいと思われる。そんなものは「既に腹一杯なのに、自分が食べるための料理をしている」ようなものだ。

 相手に食べさせるために料理していると答えれば良いのか……というと、やはりおかしい。空想から主体性を取り除いたら、もはや何のための空想なのかがわからなくなる。


 ここでいっそ断ち切ればよいのだが、惰性であったり、義理であったり、呵責であったりが介入してくる。そしてマンネリへと突入する。

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