モンスターから人間へ
五分でも、三分でもいい。
トピックなんて決まってなくてもいい。
手をつけてみることから、創作は始まる。
今回はモンスターについて。
引っ掛かる物語のパターンとして、登場した際はモンスター(人外)なのに、最終的には人間になるものがある。単刀直入に言うなら最初からモンスターである意味が薄いのではないかと突っ込みが入る。すぐに人間になってしまうパターンは特に指摘を受けやすい。
人外から人間になる有名どころと言えば、「美女と野獣」とか「鶴の恩返し」とかが挙げられる。
前者は「見た目だけで判断しないこと」を教訓にするため、後者は「恩返しの為に人間になる必要があった」から人外設定になっている。よくよく考えてみると、後者の必要性はさほど高くないのかもしれない。人間の状態で言葉が喋れるのなら、鶴のままでも別に問題はなかろう。というか、別に笠地蔵のように家の外に置いても問題はなかったし、気付かれる心配もなくなっていたはずだ。
無理矢理話をつけるなら、「約束はちゃんと守ろうね」ということなのか。まあ、あの話の盛り上がりは、人間が鶴に戻ってお別れするところなのだから、少し無理があったとしても、悪くはないのかもしれない。
さて、本題。
問題は人外の存在が、必要性もなく人間となった上で、特に戻る気配もないという場合になる。
気持ちは分からなくもない。言葉を介さずに感情や気持ちを伝えることは難しい。人間ですら言葉なしでは難儀する。比較的分かりやすいイヌでも「文章で表せ」と言われて出来る自信はない。
ともすれば、見たことすらない生き物をどうやって表現できるのか。知性を持たせて、喋らせるのが手っ取り早い。問題は続く。では、その生物としての仕草はどう表現するか。ドラゴンを例にとるとして、ドラゴンらしい振る舞いとはなんなのか。口から炎を吐く、強靭な爪を振り回す、長い胴体で締め付ける、立派な翼で空を飛ぶ。
この通り、やれることがないとは思わない。しかし、人間の取る仕草の数に比べれば、あまりに少なすぎるのだ。致命的であるのは表情の欠乏である。ドラゴンが悲しんだり、喜んだりするのを、文章で示すのは骨が折れる。まさか表情筋があるわけでもなし。服装という概念もない。それは人間の生態であって、ドラゴンの生態ではないからだ。
モンスターの中でも選択肢の多い方であるドラゴンですらこのザマだ。果たして他のモンスターに関して、どうやって表現するのか。簡単だ。姿形も、人間にしてしまえばいい。
……けれども、そうなったら人間と何が違うというのか。
モンスターをモンスターのまま描画するのなら、やはり相容れない「化け物」として書くのが良いのだろう。可愛がりたいのなら、「野性動物」とか「ペット」として。そこに妙なキャラクター性を出そうとすると、あっという間に擬人化への道を進んでしまう。
擬人化とはある意味、矛盾が起こった際に「そういうことにしておく」という妥協案のひとつである。辻褄が合わないとき、とりあえず辻褄が合ったことにする……要するに応急措置でしかない。人間にしたからといって、元の人外としての特色、必要性がなければ、まるで無意味な処置となる。
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