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 妖精たちは翁の家から盗み出した木馬を月の宮殿の中庭の茂みの中に隠すと、顔を見合わせてくすくすと笑いだした。


「えれのあ、よろこぶかなぁ」


「よろこぶかなー」


「わらってくれるかなー」


「わらってくれるよねー」


 妖精たちが木馬を盗み出してきたのには理由がある。


「えれのあ、もうすぐ三かげつだもんね」


「ここにきて、三かげつたつもんね」


「おいわいになきゃね」


「おいわいには、ぷれぜんとがいるもんね」


「よろこんでもらうのー」


「にこーって、わらってくれるね」


 そう。エレノアが月の宮に来て明後日で三か月。


 その事実に気がついた妖精たちは、どうやってエレノアを喜ばそうかと考えていた。


 そして、祝うにはプレゼントが必要だと考え、面白そうなものをたくさん持っている翁ならば、きっとエレノアが喜ぶものを持っているのではないかと考えたのである。


 すると、まるで申し合わせたかのように木馬がおいてあったので、いただいて帰ったという次第だ。なぜなら――


「えれのあ、いいなーっていってたもんね」


「ぼくたちが空とべて、いいなーって」


「きっとえれのあも、お空とびたいんだよね」


「これがあれば、とべるもんね」


「えれのあ、うれしいね」


「ねー?」


 妖精たちは、数日前にエレノアがふとこぼしたつぶやきを忘れていなかった。


 ぱたぱたと飛び回る妖精たちに、エレノアが「妖精さんたちは、空が飛べていいな」とつぶやいたのを。


 もちろんエレノアは何げなくつぶやいたのだが、そんなことは妖精には関係ない。


 エレノアが「いいな」と言ったのだ。もちろん叶えてあげたい。都合のいいことに、翁が新しく開発した空飛ぶ木馬も手に入れた。あとは、これをエレノアにプレゼントして喜んでもらうだけだ。


「わたすのは、あさってだね」


「わたすだけじゃ、つまらないねー」


「ぱーてぃーしようよ、おめでとうぱーてぃー」


「三かげつおめでとうぱーてぃー!」


「いいね! りんりんにもそうだんしてみよう」


「たくさんごちそうつくってもらうの」


「おー!」


 くすくすくすくす―――


 月の宮殿の中庭の一角で、妖精たちの忍び笑いが、柔らかい風にさらわれた。

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