第7話 私に勇気をくれたWeb作家


「そうだ。私……のせいで君は変わったんだ。なのに私が望んだ君がいないってだけで別れを持ちだした私は……」


 元々本を読むことが好きだった私。

 病院生活という限られた空間では他にやる事もなく。

 スマートフォンを使いよくネット小説を読んでいた。


 そんな時、ある作品が目に入った。

 試しに作品紹介に目を通して見ると、私と同じような人が評価をし感謝のコメントを書いている作品だった。


「『僕の隣には君がいない、だけど君の隣には君の大切な人がいる』……まぁちょっとだけ読んでみようかな」

 そして私は試しにと思い何ページが読んでみる。

 すると私は本の中に吸い込まれたかのように何百ページもある作品を夢中になって読んでいた。


「この作者の人信じられない……。病気の事だけじゃない、なった人の感情や考え、更にはそれに立ち向かった少女の人生の心情の変化までしっかりと書いてる。それだけじゃない、弱気だった私の心を優しく包み込んで勇気を与えてくれた……」


 一つの作品が人の心をここまで大きく揺れ動かすことなんてない。

 そう思っていた私は涙せず最後まで読める作品ではなかった。

 気づけば泣きながら微笑んで読んでいた。


『私は好きです。貴方が書いた作品が好きです。評価じゃなくて誰かを思って作られた作品が好きです。何より私の心に希望を与え、未来をくれた作品が好きです』

 とコメントを送った。


『中学生3年生の私ですが、手術を受ける事にします。勇気をくれてありがとうございます。主人公の少女の中学生時代の過去の経験が何処か私と似ていた事もあり私もこの少女のようにこれからも生きたいと思いました』


 私はこの日手術を受ける決意をした。

 手術を受けても心臓の病気とは闘っていかないといけない。

 だけど、それでも少しでも長く生きたいと思った。

 だから私は作者の人に2つのコメントを送った。


 すると作者からコメントが返って来た。

「手術頑張って下さい。応援しています」


 返って来たのは短い文章だった。


 私は作者に興味をもった。

 一体どんな凄い作家さんがこの物語を書いたのかが気になった。

 そこで小説サイトと連携させているSNSサイトを見て驚愕した。


 SNSの情報を見る限り、どう見ても同じ学校の子だった。

 友達がいないのか何処か寂しいツイートの数々。


 そしてついにわかった。


 私の学校で同じ学年の子にいつも昼休み本を読んでいる人は一人しかいなかったから。


「最低だな私。君を変えたのは私だったんだ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る