彼方へ
あらむ
*
かわききった道で、その子はころんだ。ひょうしに、さげていたバケツをひっくりかえした。まっかなアメリカザリガニかなんかが、こぼれだした。
ひまわりが、太陽にむかって咲いている。ぺんきでぬったみたいな、青い空。ごそごそするザリガニ。灼熱の陽光。
どこかから、メロディがきこえる。ビートルズのノルウェーの森かなんか。
積乱雲がむくむくわいてる。
ころんだ子は、うずくまって、空をみあげる。瞳が空色に染まる。
誰かが、ヴァイオリンかなんかで演奏してるのだろうか?手回し式蓄音機みたいので、レコードをかけてるのだろうか?
青空の彼方には、人工衛星やスペースステーションが浮かんでいるのだろうか。その子は、かんがえをめぐらす。むぎわらぼうしの下の頭は、熱ですっかりやられている。
宇宙に進出するために犠牲になった、かわいそうな犬やチンパンジーやらのことを、この子はまだ知らない。
宇宙人や宇宙旅行について、こどもは、かすみのかかった頭で、考える。
ザリガニがひからびかけていることに、こどもは、いずれ気がつく。
彼方へ あらむ @solarissiralos
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