彼方へ

あらむ

かわききった道で、その子はころんだ。ひょうしに、さげていたバケツをひっくりかえした。まっかなアメリカザリガニかなんかが、こぼれだした。

ひまわりが、太陽にむかって咲いている。ぺんきでぬったみたいな、青い空。ごそごそするザリガニ。灼熱の陽光。

どこかから、メロディがきこえる。ビートルズのノルウェーの森かなんか。

積乱雲がむくむくわいてる。

ころんだ子は、うずくまって、空をみあげる。瞳が空色に染まる。

誰かが、ヴァイオリンかなんかで演奏してるのだろうか?手回し式蓄音機みたいので、レコードをかけてるのだろうか?

青空の彼方には、人工衛星やスペースステーションが浮かんでいるのだろうか。その子は、かんがえをめぐらす。むぎわらぼうしの下の頭は、熱ですっかりやられている。

宇宙に進出するために犠牲になった、かわいそうな犬やチンパンジーやらのことを、この子はまだ知らない。

宇宙人や宇宙旅行について、こどもは、かすみのかかった頭で、考える。

ザリガニがひからびかけていることに、こどもは、いずれ気がつく。

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彼方へ あらむ @solarissiralos

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