墓を出た先で-4

「……結局、何も分からず仕舞いだったか……」


 大分日が傾いてきた頃、アリスとザキーヤが待つ「王家の墓」の入口に男性陣が戻ってきた。その誰もが、何の成果も持たぬまま。


「なんだか不気味だな……。嫌な予感が杞憂で終わればいいんだが……」


 腕を組んでアッタールが唸る。それは他もそうで、全員何となく嫌な予感が頭から離れなかった。勿論、アリスも。


「……とりあえず、俺達の隠れ家に移動してみるか?もしかすると、そこに誰かいるかもしれない」

「そうだな。ここにいても何も変わらない。お嬢さんや猫のあんちゃんもそれでいいか?」

「構わないが……、猫のあんちゃんって俺のことか?」

「そうだが?」


 ルイスはキョトンとするカーリムに溜息を吐きつつ、アリスに確認を取ってくる。彼女もここにいても何もはじまらないと思い、先程のやり取りに苦笑しながらも頷いた。周囲もそんな感じでカーリムを見ている辺り、彼が他人に渾名の様なものをすぐにつけるのはよくあることらしい。


「じゃあ、移動しよう。ちょっと歩くが、そこは我慢してくれ」


                  ☆


 青年達の案内で砂漠の中を歩き始めて暫くした頃、何処かで感じたことのある地響きがアリス達を襲ってきた。


「……??これは……」

「…………まさか、」


 揺れに対して不思議そうな声をアリスがあげると、彼女を背負っていたルイスが舌打ちをする。どうやら、この地響きの正体について心当たりがあるらしい。


「ルイス?この地響きが何なのか分かるんですか?」

「分かるというか、さっきとは別の嫌な予感がするというか……」


 ルイスの煮え切らない言葉に、青年達も首を傾げ始める。そんな彼らの様子を見て、ルイスは苦虫を噛み潰したような声で話し始めた。


「……俺達と墓で出会った時、アリスが投げつけてきたモノを覚えているか?」

「投げつけてきたモノ?確か……」

「小さな『砂漠の主』、いや、途中で大きくなったので小さいは余計か……。とにかく、『砂漠の主』だったような……まさか」


 青年が首を傾げる少し後ろで、ザキーヤが一つの答えに思い至ったのか、顔を真っ青にする。その様子を見た隣のアッタールが、どうした、真っ青だぞ、と心配そうに声をかけていた。


「まさか、この地響きの主がそうだというのですか?!」

「ザキーヤ?一体何を……」

「……うそ。まさか、そんな事が……」


 未だに首を傾げる青年をよそに、アリスも顔を真っ青にする。


「まさかでもトサカでもねェ。この気配、この地響きの感じ、どう考えても『主』以外考えられねェ……!というか、『主』以外でこんな地響きを起こすことができる奴なんて、この砂漠にいるのか?!」

「まさか!そんなの、地震などの自然災害ぐらいしかありえませんよ……!!」


 ルイスの疑問に、悲鳴のような声でザキーヤが答える。この時点でようやく青年を含めた他の三人も事態を把握し始めたのか、段々と顔を青ざめさせ始める。それほどまでに、「砂漠の国」の者達にとって、「砂漠の主」とは脅威だったのだ。


「とにかく、急いでここを離れましょう!まだ『砂漠の主』だと決まったわけではありませんが、早急に隠れ家へ移動すべきです!!できれば、日が完全に暮れる前に!!視界が奪われたらこちらに不利です!!」

「よし!!皆、それぞれに身体強化の術を掛けてくれ。――走るぞ!!」


 青年がそう言った瞬間だった。

 アリス達の背後から砂埃をまき散らし、巨体を揺らしながら「砂漠の主」が現れたのは。

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