第78話 プレゼントで頬を叩くイメージ
プレゼントそのものもだが、それに付随する様々な事象が、
まず、ドライツィヒとツヴァンツィヒの見た目がそっくりであったこと。双子ではなく、こういう一族であると説明したのだが、どこまで理解したものか。
まあ、実態は双子のようなものなのだが。
そして、ツヴァンツィヒ1人で荷物の積み下ろしを終えてしまったこと。彼女が馬車から下ろした荷物を持ち上げようとして、メイドが危うく腰をやりかけたのだ。
最終的に、人夫を呼ぼうとするティアリアーダを止め、ツヴァンツィヒが指定の場所へ持っていった。
ちなみに、ツヴァンツィヒは
更に、用意した
つまり、似たようなものは知っているということ。
驚かれたのは、一部の金属製品だ。サンプルとして用意した刀剣類、貴金属細工は熱心に、というより信じられないものを見るような態度で確認していた。
ただ、形や細工の細かさというより、その素材に興味を示していたように見受けられた。これは想定できなかった態度であり、今後<リンゴ>による解析が行われる予定だ。
サンプルは、保存水に関して非常に食いつきが良かった。水を保管しておくという事に興味があるようである。
その他、缶詰の保存食は興味を示していたが、鉄製というところがあまり良くないとのこと。瓶詰めは問題ないようだ。
セルロース製の糸、布、そして紙。これらは非常に喜ばれた。特に、布については絶賛と言っても過言ではない。
肌触りもよく、織り目も細やかかつ均一。また、織り方により伸縮性のあるものも作れるのだが、このサンプルは非常に喜ばれた。
安定供給できるのであれば、すぐにでもとその場で言われたほどである。
アグリテンドが驚いていたため、通常ありえない食いつきっぷりだったのだろう。
宝石の類はそこまで興味はないようだったが、正確にカットされた各種宝石の造形技術については感心していたようだ。
最後に、酒類。主に、麦に似た穀類から作り出した酒を原料とした蒸留酒だ。酒そのものは<ザ・ツリー>ではまだ生産軌道に乗せていないが、テレク港街で入手できた酒を蒸留したものである。
酒そのものというより、蒸留技術の見本として持ってきたものである。
いくつか度数を分けているが、最高度数は96%。タバコの火でも容易に引火するレベルである。
反応からすると、どうやら蒸留酒自体は既存のもののようだ。ただ、その度数には流石に驚いていたようだった。
「ていうか、
そんな映像解説を見終わった後、
「この国にエルフという固有名詞は存在しませんが、その概念に近い人種であると想定されます」
「耳尖ってるし、顔はいいし、背も高いし。何か応接室に弓とか飾ってあるし。見てよ、気付いた? 金属製品を全然身に着けてないわよ、このオジサン」
興奮気味に話す彼女に、<リンゴ>は頷く。
「
缶詰に興味がなかったのは、これが理由だろう。金属が嫌いなのか苦手なのかは分からないが、瓶詰めがOKで缶詰がNGなのはそれ以外考えにくい。
ただ、確認する際に普通に素手で持っていたため、触れないというほど酷くは無さそうだが。
その後、一行はテラスで歓待を受けた。立食パーティーといった風情だ。
ほぼ世間話のようなもので、あまり有益な情報はないとのことでほとんど映像としては見せられなかったが、内容は<リンゴ>により要約されている。
まず、
ただ、少なくともこの大地には定住しておらず、海を渡った別の大地に国を作っているらしい、とのこと。
ティアリアーダ、というか
装飾品として長時間肌に触れていると、炎症になるようだ。
種族的に、金属アレルギーが顕著に出やすいようだ。
もちろん中には全く炎症の出ない特異体質も居るとのことだが、そういった体質は非常に珍しく重宝されるらしい。
また、ティアリアーダの妻、エレーカ・エレメスを紹介された。非常に美しく整った姿形は、まさにエルフのお姫様といった出で立ちであった。
高身長のイケオジとスレンダー美女である。
その他何人かを紹介されたが、あまり重要ではないと<リンゴ>が判断したためカットされた。
まあ、
出てきた軽食は、サンドイッチや菓子類、そしてよく冷えた緑茶のようなもの。
お茶について確認すると、交易品の一つで、
野菜類は、
まあ、とはいえテレク港街側のアグリテンドも書記官2人もおいしそうに食べていたため、特殊な味がするということも無さそうだが。
後は、このアフラーシア連合王国の現状などの話である。
こちらが政治中枢から隔離された南の果ての街から来た人員だということもあるだろう、ほぼ抗議というか、愚痴のような内容。
どうも、アフラーシア連合王国の王都周辺は、かなり状況が悪いようだ。その所為で、ろくな貿易ができなくなっているとのこと。
主な取引品は燃石なのだが、その供給量は日に日に落ち込んでいるらしい。この情勢では、さもありなん。
後は、小麦と馬についてはそこそこの量が確保できているようだ。これは、主な産地である
とはいえ、フラタラ都市に対する圧力があったように、徐々に状況は悪化しているようである。
他国の人間にそう言われるのだから、よっぽどである。
もう、アフラーシア連合王国は国としての体すら保てていないと判断していいのだろう。各地は分断され、好き勝手に独立を宣言し、小さな開拓村は次々に全滅している。
そして一番の問題が、それらの主な原因が内乱ということだ。周辺国からすればいい迷惑だ。野盗化した脱走兵や難民が国境に押し寄せてくる可能性もある。
「再確認だけど、詰んでるわね、この国」
「
有望な鉱脈を見つけたら、強襲開発してもいいんじゃないか。彼女はそう思った。
何十万もの歩兵を相手にするのはゴメンだ、とそう考えていたが、情報を集めれば集めるほど全面戦争の可能性が低くなっていく。
各地の断絶が激しく、ロクな情報が仕入れられないのだが、それはどこの町も同じ。
<ザ・ツリー>が少しくらい進出しても、その情報が回りきる頃には、一大戦力を揃えられている気がするのだ。
「とはいえ」
この先、フラタラ都市の北側には、独立勢力としてはかなりの勢いを持つ
<ザ・ツリー>の戦力は未だに乏しく、全面戦争になった場合に不安が大きいのは確かだ。しばらくは貿易か懐柔か、平和的な接触を続けるべきだろう。
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