あらあら、ごめんねー
「ごめんねー、待ったー?」
約束の時間から五分後、六実とおばさんが一緒にマンションの下に来た。
家が隣なのにマンションの下で集合なのは不思議だがまあ、いいだろう。
「たった五分だろ? 待ったうちに入んねーよ」
「うわ、かっこいい」
だろ? 一回は言ってみたかったんだよな。
まあ、俺の小説のキャラのセリフなんだけどな……
「それより早く行こう、時間は限られてるんだし」
「ええそうねー、今日の夜には出発する予定だから」
思ったより早いんだな、と思ったけど元はと言えば俺が記憶喪失になったからなんだよな。
そういえばそのことを知っているはずなのにうちの親は電話の一本すらないな。 まあ、いつものことか。
「ええ、そうなの!?」
おい六実、知らなかったんかい。
「あれ? 言ってなかったっけ? 毎日毎日お父さんから寂しいって電話がかかってきててね、そろそろうざいから帰ろうかなって」
夫に向かってうざいって……
六実の母親らしいな。
「そういうことなので今日はこっちのお土産をしこたま買いまくるぞー!」
「お土産といっても特にご当地に物とかはないんですが……」
まず娯楽施設がここしかないからな。
他はぼろいスーパーかコンビニくらいだろう。 もう娯楽施設じゃないじゃん。
「いいのよ、こっちのってだけで珍しいんだから!」
「あ、はい。 そうなんですね」
やっぱり地域によって価値観が違うのかな。
こっちからしたら沖縄のものがいいお土産だもんな。
「あれがモール?」
「あ、そうです」
行き慣れたモールに到着した。
おばさんは写真を撮りまくっている。
沖縄にもショッピングモールくらいあるだろ……
「ねえ、時間があんまりないんだし早く中に入ろうよー」
ナイスだ六実、このままだと今日中に帰れる気がしないからな。
「はいはいー、今行きますよー」
「もうー、帰りの飛行機の時間も気にしててよ?」
「はーい、心配しすぎよー?」
六実がこんなに姉キャラなの珍しいな……
どれだけおばさんはおっとりなんだ……
「あ、あの……」
「あ、うん! 行こっか!」
「あらあらごめんねー」
これは長くなりそうだな……
「ねえ紗月、最初はどこ行くの?」
「うーん、どこからでもいいと思うんだけど…… 服、とか?」
六実も見れるしいいんじゃないか?
「いいね! 私もちょうど冬に向けて服が欲しかったし!」
「私も見たいわねー、沖縄は秋物で事足りるけどね」
なんか申し訳ないな。
「じゃ、じゃあ案内しますね」
「紗月が敬語ってなんか面白いね」
殴るぞ。
おばさんの場合、年上なのに未来みたいで調子が狂うんだよな……
「あー! この服いいなー!」
ほらな。
でも、もうマイペースには慣れた。 基本好きにさせるのが一番だ。
それって放置じゃないかって? その通りさ!
ということで一段落するまで俺はおとなしくベンチで待っていようかな。
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