ん? もしかして杏樹……

「気を取り直して、おめでとう! 紗月!」


「おめでとー! つっくん!」


「おめでとう、りゅーくん」


「おめー! 紗月!」


 こうやって家族以外で誕生日を祝ってもらえるのは嬉しいな。


「みんな、ありがとう! 最高の誕生日になりそうだ!」





「もーう、紗月くぅーん。 飲めよぉ。」


「いや、まだ未成年ですって……」


 誕生会が始まって一時間がたった。

 この時点で佐藤さんは自前で持ってきたお酒でベロベロに酔っぱらっている。

 それでも未成年にお酒を勧めちゃダメでしょ……


「そうですよ、もし飲ませたら通報しますからねぇ!」


 まともな杏樹がいてくれてよかった。

 そう思ったのだが、なんかおかしくなかったか?


「だいたい、佐藤さんは飲みすぎなんですぅ! 今日はりゅーくんの誕生日なのにぃー!」


 ん? もしかして杏樹も酔っぱらっているのか……?

 未来が持ってきた梅ジュースはもしかして……


「未来、この梅ジュースってもしかして梅酒か?」


「えーとね、たぶんそう……」



 やってくれたな、佐藤さんは成人で家も隣だからいいけど杏樹はな……

 かといって時間も遅いし蘭ちゃんに来てもらうのも無理か。

 しょうがない。


「ぐうぅぅぅ、がぁぁぁ」


 六実はもう寝てるし……

 とりあえず杏樹のことを連絡しておこう。


「杏樹、スマホ持ってるか?」


「んー? 持ってるわよー」


「ちょっと貸してくれ、それで今日は泊っていけ」


 幸い今日は金曜日だ。

 明日に六実達と買い物に行くけどそれまでに杏樹を帰らせればいいだろう。


「はいー、これー」


 杏樹はすぐにスマホを渡してくれた。

 ロックはかけてないのかすぐに蘭ちゃんの電話番号を探すことができた。


 プルルルルルル


「あ、なに? お姉ちゃん」


「すまん、お姉ちゃんじゃないんだ」


「さ、紗月にい!? この番号ってお姉ちゃんのスマホじゃ……」


 まあ、そりゃ驚くよな。


「杏樹なんだが、間違えてお酒を飲んじゃって今日はそっちに帰れそうにないんだ。 悪いんだけどうちに泊めていくから御両親に言っておいてくれないか?」


「う、うん! お姉ちゃんは大丈夫そう?」


「ちょっと待ってな」


 四人がいるリビングを覗いてみる。

 杏樹はお冷を飲んで落ち着いたのか寝てしまっている。


「今は寝てるぞ、多分明日の朝には帰れるだろ」


「わかった! お母さんとお父さんには友達の家に泊まってるって言っておくね!」


「ああ、そう言ってくれるとありがたい」


「じゃあ、お姉ちゃんをよろしくね!」


「おう! じゃあおやすみ!」


「うんっ! おやすみなさい!」


 やっぱり蘭ちゃんはいい子だな。

 とても反抗期真っただ中の年齢とは思えない。

 さて、散らかったリビングと酔っぱらった二人、それに寝てる六実か。

 どうやって片付けをしようかな……



 って俺は何で誕生日に片付けをしなくちゃいけないんだ!?

 

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