地下水道の調査依頼②
「お、あれもキュルケの仲間か」
「きゅー!」
「怒るなって。もうスライム扱いはいやか」
「きゅきゅっ!」
下水道といえばスライム。そう言っても過言ではない。
半透明の魔物なので食べているもので色が変わり、森で出会うものが緑なのに対してこちらはほとんど灰色や茶色の汚らしい色をしているのも特徴だ。
だからだろう。仲間扱いはキュルケの癪に障ったようだ。
「あいつらがいるってことはある程度きれいにしてくれてるってことだよな」
下水道の環境はほとんどスライムによって整えられていると言える。人間にとって不要なものはこいつらが処理してくれるのだ。
むしろ俺たちはこの調査のとき、スライムを狙った魔物の駆除も求められている。
その一つがフクロネズミだが、それ以外にも何種類かいる。
さて、噂をすればなんとやらだな。
「早速お出ましだ! いけるか? キュルケ」
「きゅっ!」
当然だと言わんばかりに小さな翼を広げて飛び出していくキュルケ。
「ヂュ!?」
キュルケの向かう先にいるのは大型のネズミの魔物、グレイラット。目当てのフクロネズミより三回りほど大きかった。
魔物であるスライムを食い荒らしたことで自身が魔力を帯び、各種属性の魔法を扱うようになったものだ。魔力を手にした副産物として、フクロネズミをはじめとした通常のネズミとは比較にならないほど巨大な生き物になっている。
繁殖力も強い。こいつらは放置すれば他の魔物の餌にもなってしまい、たちまち下水道内が魔物の巣窟となってしまう。
見つければ即、駆除対象の生き物だった。
「きゅきゅー!」
キュルケの攻撃方法は基本的に体当たり。当たる瞬間に魔力は感じるので何かしらやっているのかもしれないが、よくわからないのでとりあえず敵にはまっすぐ飛び込ませていた。
勢いよく飛び込んだキュルケはしっかりグレイラットをとらえたようで、ぶつかられた方は気を失って倒れていた。
魔力を帯びたグレイラットの身体は大きい。一匹が赤ん坊くらいのサイズがあるため、しっかり解体すれば得られる素材もそれなりのものになる。
キュルケが倒したグレイラットにトドメを刺し、皮を剥いで袋に入れる。
肉はキュルケにあげた。
「きゅっきゅっ!」
キュルケがグレイラットの解体された肉に覆いかぶさると、吸い込まれるように肉がキュルケの身体に消えていく。ひと飲みで跡形もなくなっていた。
「きゅー!」
いつも思うんだけど、どうやって食ってるんだろうな?
何回見てもこの辺り、よくわからなかった。
「ま、美味しそうならいいか」
「きゅっきゅっ!」
満足そうなキュルケを撫でる。
自分の身体より大きいんじゃないかという肉を飲み込んだばかりというのに元気そうだった。
俺なら食べてすぐはそんな元気に動き回れないが、この辺りはさすが魔物といった感じだろうか。
「よし、そしたら俺もやるか」
ちょうどよくこちらへ駆けてくるフクロネズミを見つけたので今度は自分で狩ることにする。
「消耗品だけどたまには使わないと、いざというとき困るからな」
鞄から取り出したのはスクロール。
俺のように魔法を使えない人間でも、限られた回数、スクロールに記された一種類の魔法だけを使えるようにしてくれるマジックアイテムの一つだった。
多少距離のあるフクロネズミだが、魔法なら届く。スクロールを起動して火の魔法を発動させた。
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