新ダンジョン
「我々の調査によりこの度、新たなダンジョンが見つかってな」
新たなダンジョンという言葉にギルドにいた冒険者たちがざわめきだつ。
それもそうだろう。新ダンジョンは冒険者にとって夢のような場所ではある。まだ見ぬ危険ももちろんあるが、逆にまだ見ぬ新たな物質、素材、装備など、一つで人生を変えられる夢のような空間。それが新ダンジョンや未開拓領域に対する、冒険者の一般的なイメージだった。
「その調査として、そこに現れる新種族や、一定以上の力を持った魔物を一種以上、テイムしてこい」
「なるほど……」
新種はテイムの腕じゃなくそもそも発見できるかの運の要素が強い。
まぁ後半のほうが楽か。
「一定の力ってのはどういう基準だ?」
「我々の定める基準で危険度A。Aランクになるというのであれば、そのくらい示してもらおうか」
「はあ……」
色々条件はおかしいがまあいいか。
すでにAランクの冒険者に勝ったらAランクにしてあげます、というのは理屈としてどうかと思う。Aランクの下位と上位ではまるでレベルも違うのだからこの時点でおかしな話だ。
そして俺に課された課題。こちらに関してはさらにおかしな話になる。新種の発見などランクに関係ない運の課題。それ以外の条件は危険度Aの魔物のテイム。討伐であればともかく、テイムは本来一つ上のランクでは足りないとすら言われる技術だ。普通の冒険者であればこんなもの、ふざけるなとつっぱねるだろう。
「いいよ」
だが、俺たちは事情が異なる。
「そのくらいの条件なら問題ないでしょう」
「は……?」
逆に向こうが困っている。
ヴィレントが笑いを堪えるのに苦労していた。
「して、これを達成した場合はそれ相応の報酬は出せるのであろうな?」
「新種族、あるいはAランクのテイムされた魔物か……とても男爵程度の貴族にはまかないきれるものと思えんが」
ほんとにベルはよくこちらの常識を勉強してくれていた。
「そのような心配より、自分たちの身を考えろ」
「ここまで言ったのだ。Sランクといえど容赦なく処分を下すぞ!」
「ああ、それはいいですね」
「は……?」
リリィの言葉に目を丸くする。
「我々にそのように対応するということであれば、そちらもそれ相応の覚悟を持ってもらいましょう」
「何を……」
リリィが悪い顔をしている。
「国王には貸しがありますしね」
「は……? 国王……?」
「馬鹿なことを言うな! 陛下を愚弄する気か!?」
慌てふためく役員たち。国王の言葉は脅しとして有効らしい。
「リントくん、見せてあげたら?」
ビレナの言わんとすることはわかる。国王と結んだあの契約書類だけで頭を下げそうな相手だ。
だが、だからこそ――
「せっかくなら後で出したほうが、楽しそうじゃないですか?」
俺も今回は、リリィの意見に賛成だった。
やることは決まった。新ダンジョンとやらを攻略して新種族なり強そうなのをテイム。そして戻り次第、向こうの用意するという冒険者を倒す。
「じゃ、いこっか」
待ち切れないと言わんばかりのビレナが飛び出していった。
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