Report59: 過激派
「出品している個人がファンクラブの人間かは分からねぇ。それにカメコウがファンクラブの人間かも分からねぇ。だがな、重要な事実として、カメコウは狙われた」
「ゾフィの言う通りだ。後は本人に聞けば分かる、という事だ」
ハンドルを握りながら、メガミは頷いた。
購入したばかりだというメガミの車に四人で乗り込み、ファンクラブの拠点に向かっていた。車種はフォードのレンジャー・ラプターである。
女性が運転するには少々
後部座席でゾフィは車外を眺めている。俺はというと、その横ですっかり消沈していた。
俺がカメコウと共同でフィギュアを制作していた。それを皆にも伝えると、何故早く言わなかったのか、とゾフィに怒られた。
一つだけ癪なのは、ゾフィが話をきちんと理解していた事だった。確証もなく、断片的な情報から状況を把握し、割り出した。
彼はてっきりパワーキャラだと思っていたが……白ブチ眼鏡は飾りじゃないという事か。
「フン、それにファンクラブが本丸かも分からない。しかし、あそこには何かあると見て間違いない……」
「まっ、少なくともフィギュアは大量にあるって事だな」
助手席のロジ-が呟く。それに対して、ゾフィが車窓を眺めながら答えた。
今回、分からない不確定要素が複数あった。カメコウは逃げたのか、攫われたのか。拉致したのはファンクラブの人間なのか、それ以外か。それから謎の仮面の男。
だが、それらの要因は放置しておいて良かったのだ。カメコウが狙われたという可能性に辿り着いたのなら。
俺はずっと仮面の男について憶測を及ばせてしまっていた。だが、今回の件を推理ゲームに例えるなら仮面の男はデコイだ。
それ自体には何の意味も無い、プレイヤーの目を欺く為の駒。不要な情報だったのだ。
もしかしたら、仮面の男はファンクラブとは無関係なのかもしれない。
だって、拉致したのが仮面の男なら、何だって部屋の中に一人で居たんだ?
それに、仮にフィギュア目的ならば。フィギュアを持っていなかったのなら、フィギュアは既に部屋には無かったという事になる。
という事は……仮面の男よりも先に、誰かが(恐らくファンクラブが)カメコウを攫っていたんじゃないか。
先を越されたのかもしれないな。そうすると、合点が行く。
だけど、そうすると仮面の男は一体何者なんだ……? 益々分からない。
まぁいい。今は忘れる事にしよう。
道中で聞いた所、ファンクラブは一枚岩ではないようだった。陰ながら応援しているだけの者も居れば、ショッピングモールで接触を図ってくるような者も居る。
それ故、もしこれから行く場所でカメコウの拉致、監禁事件が起きているのならば、それは一部の過激派という事になるのだろう。
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