Report46: リクセン・エバーローズ
「チィ! ラッシュ、メガミに状況報告」
「あ、ああ……了解!」
リクセンの手には拳銃が握られていた。その銃弾がゾフィの頬を掠った。メガミ達との通信用に装着していたケーブルが千切れ、吹き飛ぶ。
ラッシュもグロック17で応戦するのだが、当たらない。諦めて身を伏せ、メガミへと連絡を行った。
『もしもし、俺です! 現在交戦中、敵はリクセン一人だけです』
『私だ。二人とも無事か? 今そっちに向かっている。どうなっている?』
『無事です。が、前方を塞ぐようにリクセンの車が停まっていて……。今、全員車外に出ていて、車を盾にしながら撃ち合ってます。膠着状態です』
『了解。そこは……一通だったか。それならば、先回りして挟み込む。持ち堪えろ!』
そう告げると、メガミは通話を切ったようだった。激しい撃ち合いが続く。だが、互いに攻め切れず、埒が明かない状態だった。
痺れを切らしたのか、リクセンが車の陰から出てくる。拳銃と、もう片方の手にはあの、幅広の曲刀が見えた。
ここぞとばかりに弾丸を浴びせるゾフィ。しかし、リクセンは鮮やかな足捌きで跳んでかわすと、電柱に足をかけて、家屋の屋根へと飛び移った。
「サルかよ、やりづれぇ!」
「ゾフィ、どうする!?」
「落ち着け、ラッシュ、車を頼む!」
そう言い残すと、ゾフィは車から身体を乗り出して、リクセンを追いかけた。車のボンネットに乗ると、負けじと屋根へと飛び乗って、逃亡するリクセンを仕留めようとする。
ラッシュはメガミに連絡しつつ、車に乗り込む。一通を抜け、大通りを目指す。ラッシュは車窓から、民家の上で激突する二人を手に汗を握って見ていた。互いに弾切れのようで、銃声は聞こえなくなった。しかし、そうすると不利なのはゾフィであった。ナイフを懐に忍ばせていたゾフィであったが、扱いには慣れていなかった。曲刀を振り回すリクセンと、それをかわし、時には銃身で受け止めるゾフィ。
ゾフィがやられるのも時間の問題か、と思われた矢先、メガミ・ロジー・ペイズリーチームが到着した。自動車を横付けし、メガミが屋根のリクセン目掛けて銃を構える。
リクセンはそれを横目で見やると、持っていた拳銃をゾフィへと向ける。妙だ、弾丸は空っぽの筈、と不審な顔をするゾフィだったが、瞬時に相手の腹案を悟ると、アサルトライフルを投げつけてリクセンの死角に入ろうとする。
「ゾフィ!!」
タァン! という銃声が空に響く。放たれた銃弾はゾフィの左肩を貫通していた。
「気付くのが遅かったな。相手の裏をかくのは基本だぞ。軍人被れ」
「クソ、一発だけ残していやがったか……」
ゾフィは肩を押さえて歯噛みした。そこに、ようやくメガミ達からの援護射撃が入る。リクセンは舌打ちすると、ゾフィから距離を取って離れてゆく。
車両を大通りに停め、既に屋根へと上っていたラッシュがそこへ駆けつける。痛みと悔しさに顔を歪ませていたが、ゾフィが無事と分かると、ラッシュは胸を撫で下ろすのだった。
「俺は大丈夫だ、ラッシュ、先に行ってくれ……。ヤツも追い詰められている。チャンスだ」
「……分かった。無理はするなよ」
ラッシュは了承すると、ゾフィを置いて駆け出す。リクセンはメガミ達とは反対側へと逃亡していた。彼は屋根伝いに逃走し、飛び降りていく。途中、民家の壁を蹴って落下の速度を殺し、地面へと着地した。
しかし、ここに来て《ブラックドッグ》の遊撃部隊がリクセンを待ち構えていた。しかし、彼らが銃を構えるよりも早く、リクセンは曲刀を放り投げる。手から放たれた凶器は円を描くように飛び、隊員の首を刎ねた。そして、相手が怯んだ隙に、自分が乗ってきた車へとリクセンは乗り込んだ。
そうして車のエンジンをかけようとするのだが、一通を逆走してくる自動車にリクセンは気付いた。メガミの運転する車である。リクセンは悪態をつきながら車をバックさせる。しかし、そこにメガミが迫る。大きな破砕音を立て、車両は衝突した。
メガミは衝撃に踏鞴を踏みつつ、乗っていた車のドアを乱暴に開けた。そしてM16を構え、今追突したリクセンの下へと歩み寄る。
が、AK47の銃口が車内から覗いているのが分かると、地面を蹴って後退した。直後、ダダダダ、という連射がメガミを襲う。リクセンはまだ複数の武器を隠し持っているようだった。
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