連鎖
Report32: 犯人
一時間後、各々がまたこのヤワラートの事務所に集結していた。
そして、いつものメンバーに加え、
「憶測ではラチが明かん。私が呼んでおいた。詳しくは彼から聞こう」
全員が集まったのを確認すると、メガミはそう告げて、続きをペイズリーに託した。
「ブラックドッグのペイズリーだ、よろしく」
俺とゾフィは彼に一度出会っているが、ロジーやカメコウ達は初対面のようだ。
会社の方は……大丈夫なのだろうか。聞いてみる雰囲気でもないので、黙っておくが。
「ブラックドッグが襲撃を受けたあの日、オレは外回りだった。偶然助かったみたいなものだけど、他の皆はズタボロさ!
で、こっちで入手した情報なんだけど、目星は粗方付いている。まず、高齢者連続殺人、犯人は恐らくコイツだ」
ペイズリーは写真を何枚か取り出すと、皆へ配った。
《ブラックドッグ》が襲撃された時、殺害された者の中には、刃物による傷もあった。そして今回、高齢者連続殺人でも凶器は刃物。恐らく、《ブラックドッグ》の方でもピンと来たのではなかろうか。もしかしたら同一犯なのでは、と独自に調べていたのだろう。
「サーマート、《ルンギンナーム》所属、か……」
「成程な。で、こいつが他の事件に関与している可能性ってのは?」
ロジーがぼそりと呟き、ゾフィが続いた。
見せられた写真によれば、高齢者の連続殺人犯はサーマートという名の男のようだ。坊主頭で、頬にキズがあった。
どうやら、高齢者連続殺人事件に関しては、《ルンギンナーム》に所属している人間の仕業のようだ。
「その事なんだけど、ウチの会社に突撃かました連中の中に、よく似た顔のヤツが居た」
ペイズリーは眉を顰めていた。表情にはあまり出ていないが、憤っているのだろう。以前あった時は爽やかな風貌であったが、今はその眉目秀麗な顔に憂色を浮かべている。
仲間が大勢やられたのだから、当然だ。
「偶然にしちゃあ、出来すぎてるよな……」
足を投げ出して、ソファに座るゾフィ。どうやら、高齢者連続殺人の犯人サーマートは、《ブラックドッグ》襲撃にも一枚噛んでいるようだった。
だとしたら、スパホテルの女社長の殺害も、コイツが犯人だろうか。
カウィンを唆したのも、航空機爆破のシナリオを描いたのも……コイツ……?
確か、スワンナプーム空港でやり合った連中は《ルンギンナーム》の関係者だった。サーマートも同じ《ルンギンナーム》の人間だから筋は通る、か。
「いいか、今回は《ブラックドッグ》と協力してコイツを叩く!」
メガミが一喝した。そして、俺達はペイズリーより作戦の概要を知らされる。
サーマートが潜伏している可能性のあるポイントを四つまで絞ったようである。《リセッターズ》はその内の二つを担当しており、ツーマンセルで行動。残りの二箇所は《ブラックドッグ》の残存兵が仕掛けるようだ。
「作戦開始は十九時。いいか、殺すなよ? 生け捕りにして、情報を聞き出すぞ」
「「「「了解」」」」
かくして、サーマート捕縛作戦が、密かに狼煙を上げたのだった。
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