Report25: 奮闘
◇◇◇
床へと崩れ落ちるラッシュの姿を、ゾフィは視認していた。銃声が聞こえ、彼が振り返ると拳銃を持った男。すぐに理解し、繋いだままの回線へゾフィは吼えた。
『メガミ!』
『分かってる! ……ロジー!』
メガミはロジーに合図を送った。負傷したラッシュの代わりに、ロジーが打って出るようだ。
喧々囂々とする四階、出発ロビー。メガミは社長の妻と息子をすぐにコンコースへ移動させるよう、出国審査を急がせた。
その頃、既に銃撃戦が始まっており、ゾフィはリュックからM16を素早く取り出し、眼前のフード男を仕留める。
その様子を見ていた別のテロリストがゾフィに接近し、銃で反撃する。それをカウンターの内側に飛び込んで、ゾフィはやり過ごした。
ゾフィは手に持っていたリュックに、適当に物を詰め込んで重さを付けると、それをカウンターの隙間からテロリストに向かって投げつける。
リュックは緩い放物線を描き、敵へと飛んでいった。それを警戒し、怯むテロリスト。隙が出来た所を、すかさずゾフィが狙い撃った。
だがそこに、エレベーターを経由して敵の増援がやって来る。
ゾフィは地面に倒れた仲間が気掛かりなのか、ラッシュを一瞥すると舌打ちした。
「テメェら、《ルンギンナーム》か! 狙いは社長婦人なんだろう!? 何が目的だァ!!」
カウンターに身を潜めながら、ゾフィが啖呵を切った。自身に敵の注意を引き付けるつもりなのだろう。エレベーターから現れたテロリストは続々と、ゾフィへ肉薄していく。
「ハッ! 貴様らには分からんだろうな……俺たちの崇高な理念がッ!」
テロリストの一人が答える。否定しない所をみると、ゾフィの目測は当たりという事なのだろう。即ち、民間軍事会社の《ブラックドッグ》の襲撃及び、現在のテロ行為は、タイの民間軍事会社である《ルンギンナーム》による仕業という事を、暗に示していた。
「親玉はどこだァ!」
そう言って、アサルトライフルで波状攻撃を仕掛けるゾフィ。敵もこれを無視する訳にはいかず、二の足を踏んでいるようだった。支社長家族の下へ辿り着けないテロリスト達は、苛立った様子でゾフィに攻撃を続ける。
しかし、人数と火力の差によってゾフィはかなり劣勢に見える。敵が使用しているAKライフルの貫通力が純粋に高く、ゾフィ自身も防戦一方なのだ。
(チィッ! だが、メガミ達は無事、抜けたようだな……)
その間に、メガミ達は出国手続きを済ませていった。ゲートを抜け、支社長婦人とその息子はコンコースへとひた走る。メガミはそれを見守った。
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