第141話 長ズボン穿きなさい

 あれから数日、ついにサンブックからの特別便がソマリンについた。

「ちょっとリューバ?いったいどういう事なのよー」

 船長さんはリューバさんに文句を言う。

 ちなみにこの船長さん、名前はキョースイでリューバさんに教えてもらった隠密の月光さんらしい。

「ちょっと緊急でヒノモトに戻らねばならなくなったのだ、すまんが数日我慢してくれぬか」

 現地駐在員というのは仮の姿で実際は隠密もしくはそれに準ずる者が駐在しないといけないらしい、それというのも...。

「ヒノモトには報告してあるしショーグン様の許可も得ている」

 その許可なのだが魔法とは違う妖術で手紙を鳥にして送れるらしいのだ。

「定期便で人員を送ってもらう手筈にはなっておるのだが月光お主はもう出港済みだったので連絡が取れなかったのでござる」

 そういうリューバさんに。

「カツミちゃんが許可してるならしょーがないわねぇ、我慢して、あ・げ・る」

 ちなみにこんな喋り方だが目の前にいるのは格闘家の様に筋骨隆々のおっさんである。

「キョースイ!ショーグン様のことをカツミちゃんと呼ぶのはやめるでござるよ!

 いくら拙者達が幼馴染でもカツミ殿は今立派なショーグン様なのでござる」

 会話を聞いているうちに背景が見えてきた。

 おそらく彼らの親も先代の将軍の隠密かそれに近い物だったのだろう。

 子供の頃から未来の主君と馴染むために一緒に育てられたってとこかな?

 そんなこんなで俺たちは米をおろした後の船に乗せてもらうことになった。

 なお船長がいなくなってしまうがこの場合の船長というのはあくまで責任者であって航行や進路などは元々副船長を中心としたクルーで賄っているためリューバさんに代わっても問題ない様だ。

 そこで俺は問題にぶち当たった。

 船は貿易用の大型船なのだが...ジムニーどうやって載せよう?

 船自体は問題なく載せて航行する能力は有るようだが当然ながらこの世界の港にクレーンなどは無く港の高さ的にスロープを作って載せるのも難しそうだ。

「どうしたのヨッチ?うんうん唸って?」

 悩んでる俺にマイさんが尋ねてくる。

「いや、ほら。

 この港と船の造りだとどうやってジムニーを載せようかなって」

 俺がそう言うとマイさんはキョトンとした顔で。

「ヨッチって頭いいのに時々馬鹿みたいに悩む時あるよね?」

 むう、何故いきなり褒めて落とされた?

「そんなのあーしが居れば簡単でしょ?

 マイさんがポーチに手をかけてそう言うと俺の愛車ジムニーはシュポっとポーチに入ってしまった。

「これで甲板に出してもいいし海が荒れるなら入れっぱなしでも良いとあーし思うんだけど?」

 マイさんはそう言って幌荷馬車もシュポっと収納してしまう。

 ああー!そうだった!

 そのポーチ生き物以外何でも入れれるんだっけ?

 今まで入れた最大の物が塩が入った麻袋だったからすっかり忘れてたよ。

 しかもこれ、北の不毛の大地などで段差が酷くてジムニーでも登れないようなところでも収納して岩登りみたいな使い方も出来るって訳か。

 流石勇者だぜ!マイさん!


 なお流石にポーチにジムニーが吸い込まれる状況は質の悪い特撮みたいで気持ち悪かったとだけ言っておこう。

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