第139話 最初の記憶...
「あっはっは!しかしよく飲むなぁこの隠密は!」
「いやいや、異世界人殿こそなかなかお強い」
あの後、カッカッカと高笑いしたリューバさんはハッと何かに気づいた様に固まるとギギィっと首をこちらに向けて。
「今、拙者何を言ったでござるか?」
と聞いてきた。
「あー、なんだろう?急に耳が遠くなった気がするなー」
と、気を遣って答えた俺に青い顔で。
「何卒!何卒忘れてくだされ!迂闊に秘密を漏らしたとなれば拙者ショーグン様に合わせる顔が無いでござる!」
「そういう事ならこっちも異世界人って事は隠していくつもりだったんですよ!」
二人でそう言いあった俺たちは顔を見合わせて。
「飲もう!飲んで忘れよう!」
「それが良いでござる!」
そう言って冒頭の会話になったわけだ。
「美味い肴に美味い酒!これはいい具合に記憶を飛ばせそうでござるなぁ!」
「ああ、俺もヒノモトでの料理を楽しみにしつつ想像すると酒が進むなぁ」
正直割と限界近くまで飲んでいる。
横を見るとリューバさんも同じなのかかなりベロベロな様子が見て取れ、ユラユラ揺れている。
お!?リューバさんが三人に!?
流石隠密!分身の術か!?
そのまま俺たちは浴びる様に酒を飲んで...いつ気を失ったかも覚えていなかった...。
...
翌朝。
あったま痛ぁ!
目が覚めた俺は頭を押さえて蹲った。
どうやら飲みすぎた様でベッドにも行かず魔法屋のリビングの床で大の字で寝ていた。
横を見るとガーガーといびきをかきながらリューバさんも床で寝ていたが俺がゴソゴソしているとその物音で起きたようだ。
「おはようでござる...洋一殿。
拙者昨日は飲みすぎてしまった様でござるな」
「おはようございますリューバさん、俺も飲みすぎたみたいで昨日何があったかあやふやなんですよ」
何か大変な事があった気がするし何故か一滴でも多く酒を飲まなければいけないような使命感があった気がするが頭が痛くて考えがまとまらない。
そんな感じで二人で(色々な意味で)頭を抱えていると。
『あ、お兄ちゃんにリューバさん。
おはようございます』
ぐぬ、新発見!
カリンが通訳ではなく自分で話している時は頭の中に可愛い声が響くのだが二日酔いだとなかなかキツイものがある。
『頭痛いの?昨日二人ともいっぱいお酒飲んでたもんね。
もー、しょうがないなー』
カリンはそう言うと肉声でゴニョゴニョと唱えたあと。
『リカバリィ』
と、俺とリューバさんに向かって魔法を解き放った。
その瞬間スッと頭が軽くなる。
『どう?お兄ちゃん楽になった?』
と言うカリンに。
「ありがとう、助かったよ」
と笑顔で返すと。
『良かったぁ、この前アイさんに教えてもらった状態異常回復魔法だよ!
二日酔いに効くかわからなかったけどちゃんと効いたね』
そっか、泥酔からの二日酔いってある意味毒状態みたいなもんだからな。
昨日何があったかは思い出せないが何か飲んで忘れなければいけなかった気もするしカリンのおかげで体調も戻った。
これで良かったんだ...と背伸びをしたところにトテトテとした足音が。
『お、起きたようじゃな、異世界人のヨーイチとオンミツのリューバよ』
...
「折角忘れてたのに!!」
俺とリューバさんの声がハモった。
そんな俺たちにアイさんは。
『お主ら阿呆か。
二人で酒の力で忘れても横におった儂らは覚えておるに決まっておろう』
と言われてハッとなる。
そんなこんなで仲良くなったヒノモトの現地駐在員は将軍様配下の隠密でした、ちくしょう酒勿体なかった。
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