第70話 ハイオク満タン
『ふむ...なるほどな』
アイさんは俺の話を聞くと考え込んだ。
そりゃそうだろう、召喚されても神さまに呼ばれてもない。
ただ居るだけの異世界人なんてただの人間でしかないんだから。
『よし、納得したぞい』
アイさんはそういうとツカツカと俺の前に来る。
『お主ら仕入れが終わったら村に帰るのじゃな?』
「その前にセイゴの街に寄るけどな」
マリアのことも有るしそもそも塩を売らなきゃだし、まぁ街に着けばアミダラさんに任せそうだけど。
『ふむふむ、ならば魔法屋は休業じゃな』
え?何が?
『ワシも連れて行け、面白そうじゃ』
は!?
何言ってんのこのちみっこロリババアは!?
「いやそうは言ってもここまで来るのにジムニー...俺たちの乗り物の燃料も少なくなってるし何より道中スライムだらけで危なかったんだから」
俺がそう言うとアイさんはポカーンとした顔で。
『なんじゃお主ら知らんのか?スライムは塩をかけると溶けるぞ?』
え?マジで!?
「大量の水かけないと倒せないと思ってました」
俺がそう言うと。
『なるほど、雨に助けられたのじゃな?あれは全体が溶けとるわけではない、大量の水でスライムの体を包む膜が溶けておるのじゃ、塩をかけると水とは逆に水分を吸い取って膜を破れると言うわけよ』
なるほど、浸透圧か、ってことは...。
「塩を溶かした水でも効果あるって事ですか?」
俺がそう言うとアイさんは驚いた顔で。
『話が早いな、それが異世界の知識と言うものかの?確かにそれも正解じゃ、そこの海の水と同じかそれより濃ければ効果はあるぞい』
マジかよ塩水でいいのかよ、聖水とかじゃなくてまさかの物理か。
待てよ?別の聖水ならば塩分濃度は...そこまで考えて下品なので思考停止する。
「良い情報をもらいました、でも人が増えると積める塩が減るし燃料の問題が解決しないと連れて行けませんからね」
そう言ってお茶を濁す、これ以上人が増えるのもなんだからどうにかして断ろう。
『言うたな?男に二言はなかろう?程よく断ろうとする雰囲気がヒシヒシとしてくるがワシの人脈で代わりの燃料を見つけて絶対ついて行ってやるぞい?』
なんでこの人こんなにやる気なんだよ!?
『それに良いのか?ワシがいればそのクォーターエルフ...カリンの呪いも研究してやれるぞい?』
くっ!痛いところを突いてくる!
でもまぁそうそうガソリンの代替なんて見つからないだろうと俺は楽観視していた、自分が既に負けていることにも気づかずに...。
車に戻った俺は大きく胸いっぱい肺の奥まで息を吸い込んで叫んだ!
「いやなんで満タンになってるんだよ!?」
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